こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント)のブログ別館。1,000字程度の読書記録などの集まり。

『続ける力(DHBR2017年2月号)』―人脈の作り方について


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 02 月号 [雑誌] (続ける力)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 02 月号 [雑誌] (続ける力)

ダイヤモンド社 2017-01-10

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 特集の「続ける力」についてはブログ本館で書くとして、ブログ別館では特集以外の論文から、人脈の作り方について書いてみたいと思う。ティツィアーナ・カッシアロ、フランチェスカ・ジーノ、マリアム・クーシャキの「考え方を変える4つの戦略 人脈づくりが好きになる方法」という論文では、①学習に焦点を絞る、②共通の関心を見つける、③自分が提供できるものを広い視野で考える(金銭、情報、コネ、技術的支援といった、有形物や職務に関連するものだけでなく、相手に対する感謝の気持ちや評価などのように、目に見えないリソースを提供する)、④より重要な目的を見出す(個人的利益のためではなく、自分が帰属する集団の利益を重視する)という4つのポイントが紹介されている。

 実を言うと私は極度の人見知りで、知らない人が大勢集まるような会合が非常に苦手である。中小企業診断士の資格を取得すると、支部や研究会の関係で、飲み会に参加する機会が格段に増える(診断士というのは、飲み会が異常に好きという特殊な人種なのかもしれない)。最近でこそ、私と同年代の30代の診断士が増えてきたものの、私が診断士の資格を取得した10年前は私も20代半ばであり、飲み会に参加すると周りは50代、60代の先生ばかりであった。そうすると、一体何を話していいのか解らずに困ったものである。

 そういうこともあって、しばらくは診断士の飲み会から遠ざかっていた。ところが、2012年に1か月半ほど入院して全ての仕事を失ってしまったので(経緯などについてはブログ本館の記事「【シリーズ】中小企業診断士を取った理由、診断士として独立した理由」を参照)、診断士の人脈作りをして、何とか仕事を紹介してもらえないかと画策した。だが、私は相変わらず人見知りのままである。そこで私が取った作戦は、懇親会に参加するたびに、懇親会の参加メンバーを見て(診断士はちょー助などを使って出欠管理をすることが多いため、事前に参加者が解る)、支部や研究会などで要職を務めている先生にあたりをつけ、その先生に質問すること、依頼することを1つだけ決める、というものであった。

 例えばある時は、「独立診断士として食べていくためにはどうすればいいですか?」とストレートに聞いてみたり(今振り返ると、結構失礼な質問をしたものだ)、ある時は「○○部(支部の中の組織)の活動に興味があるので入部させていただけませんか?」とお願いしてみたりした。ありがたいことに、年配の診断士の先生には面倒見のいい方が多かったため、私がそのようなことを尋ねると、「そういうことに興味があるなら、○○先生を紹介してあげるよ」と言ってくれた。こうして、飲み会に参加するたびに、1人、また1人と、重要な先生との人脈がつながっていった。その時の人脈が現在の仕事の重要な基盤となっている。

 最近では私の人見知りも多少は改善されてきたから、診断士の飲み会で初対面の人と名刺交換しても、「お仕事は何をされているのですか?」、「診断士を取ろうと思ったのはなぜですか?」という質問から入って話を広げていき、人脈を作る術が身についたと思う(それでもまだ初歩レベルだと思うが)。

 問題なのは、診断士以外の飲み会、懇親会に参加した場合である。診断士の飲み会の場合は、「診断士」という共通項があるから、会話の突破口も開きやすい。ところが、例えば外部のセミナーに参加した後の参加者同士の懇親会のように、事前に参加者の属性が解らず、単に「同じセミナーに参加した」ということ以外に共通項がないケースでは、未だにどうやって人脈を広げていけばいいのか解らない。いい加減、私も大人にならなければ。

風間喜代三、松村一登、町田健、上野善道『言語学』―文法的分析よりも歴史的・文化的背景に興味あり


言語学 第2版言語学 第2版
風間 喜代三 松村 一登 町田 健 上野 善道

東京大学出版会 2004-09

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 ブログ本館で「山本七平『比較文化論の試み』―「言語→歴史→宗教→道徳→政治→社会→経済」という構図について」という記事を書いたことがある。「はじめにロゴス(言語)ありき」という言葉を出発点として、言語によって歴史が表現され、歴史的背景から宗教が生まれ、宗教が人々の従うべき道徳を規定し、道徳に基づいて政治が行われ、政治によって社会が形成され、最後に社会を潤す経済が発展するという記事であった。

 もちろん、こんなに単線的にそれぞれの要素がつながっているとは思えないし、要素の順番が入れ替わることがあることぐらいは愚劣な私でも解っている。そもそも、「はじめにロゴスありき」が本当ならば、世界は単一言語であるはずだ。しかし、実際にはそうではないという事実は、言語が社会的生成物であることを示している。つまり、社会が言語に先行している。

 以前の記事「黒田龍之助『はじめての言語学』」で、言語学と言うと世界各国や諸民族の言語の文法的な分析、構造的特徴の成立過程、言葉の語源などを研究する学問だという印象があるが、実際には「音」を重視する学問であると書いた。そのことを念頭に置いて本書を読むと、本書の大半が言語の構造的分析に費やされており、音に関する解説は最後の1章があてられているだけで、黒田龍之助氏の助言がなければ言語学のことを誤解したままになりそうであった。

 言語学、特にチョムスキーの生成文法の流れをくむ研究は、様々な言語の構造を明らかにする。簡単に言ってしまえば、世界中の言語を形態素という最小単位に分解し、形態素の並び順、組合せの特徴を描き出す。例えば、世界の言語は大まかに「孤立語」、「膠着語」、「屈折語」に分けられるという。
 a.孤立語(中国語など)
 文:名詞句<主体>+動詞群(+名詞句)(+名詞群1・・・+名詞群n)

 b.膠着語(日本語など)
 文:名詞群(主体)(+名詞群2・・・+名詞群n)+動詞群

 c.屈折語(ラテン語など)
 名詞群1(+名詞群2・・・+名詞群n)+動詞群
 名詞句、名詞群、動詞群が何を指すのかを説明するのがこの記事の目的ではないため、この点については省略する。私にとって関心があるのは、どの言語が「孤立語」、「膠着語」、「屈折語」に該当するのかという分類学的な話よりも、なぜある地域では「孤立語」が、別の地域では「膠着語」や「屈折語」が生成・定着したのかという歴史的・文化的・社会的な背景の方である。

 また、言語学では、形態素の組合せの妥当性についても検証する。論理的には無限の組合せの可能性があるわけだが、その中には、組合せとして不適切だと社会が判断するものがある。例えば、日本語の「形容詞+名詞」で言うと、
 大きい人
 大きい車
 大きい紐(*)
 大きい影響
 大きい悩み
 大きい癖(*)
 のうち、(*)は日本語として不自然だとされる。こういう不自然な組合せを探し出すのも言語学の主要な目的の1つのようだ。しかしここでも、私の関心事は、何が不自然な組合せなのかということよりも、なぜある組合せは適切で、それ以外の組合せは不適切だと社会が考えるように至ったのかという経緯である。

 個人的には、以下のような話の方が面白いと感じる。
 エストニア語の複合動詞が、エストニア語とドイツ語の言語接触の結果、ドイツ語の分離動詞の影響で生まれた文法現象であると考える根拠としては、まず、歴史的な背景として、エストニアを含むバルト海の北東部の海岸地域は、北ドイツからの植民者が多く住み、ドイツ語(低地ドイツ語)が商業、宗教、教育などの言語として広く使われていたことなどにみられるように、ドイツ語を支配的な言語とする言語接触が、20世紀の初頭まで数世紀にわたって続いてきたことがあげられる。

加藤尚武『現代倫理学入門』


現代倫理学入門 (講談社学術文庫)現代倫理学入門 (講談社学術文庫)
加藤 尚武

講談社 1997-02-07

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 《参考記事》
 (メモ書き)人間の根源的な価値観に関する整理―『異文化トレーニング』(1)(2)(旧ブログ)
 人間の根源的な価値観とマネジメントの関係をまとめてみた―『異文化トレーニング』(旧ブログ)
 年明けということで、改めて自分の価値観を棚卸ししてみた(旧ブログ)
 私の仕事を支える10の価値観(これだけは譲れないというルール)(1)(2)(3)(ブログ本館)
 エリン・メイヤー『異文化理解力―相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養』

 私は上記の記事でしばしば「価値観」について取り上げてきた。価値観とは、重要な意思決定の場面において判断の基準となる規範であり、「これだけはどうしても譲れないというルール」である。このルールが個人だけでなく、集団や社会全体に共有されると、それは「倫理」となるだろう。倫理学は、倫理とは何なのかを問うと同時に、なぜそれが倫理と言えるのかを突き詰める学問でもある。

 私が上記の記事で挙げたいくつかの価値観は、私の経験から導かれたものである。つまり、「ア・ポステオリ(認識論上、経験的事実に基づいて定められる概念または原則。後天的)」な原則である。ア・ポステオリな原則は、あくまでもその人本人(もしくはその組織の一部の人間)の固有の経験に基づくものであるため、他の人や組織の他のメンバーとすぐさま共有できるとは限らない。他者をその原則に従わせるためには、あの手この手で説明を加える必要がある。逆に、お互いが一歩も譲らずに価値観が対立することもある。

 倫理学では、「ア・プリオリ(経験によって得られたのでなく、かえって経験が成り立つ基礎になるような概念または原理。先天的)」な原則が成立するのかが問題となる。ア・プリオリな原則は、万人に適用される普遍的なものである。ア・プリオリな原則を数学のように厳格に定義しようとする立場を「厳密主義」と呼ぶ。
 近代の思想家には、「精神世界のニュートン力学」を築き上げたいという夢があった。そして善とか悪とか正義とかの問題に対しても、ユークリッドの幾何学のような厳密な証明をしてみたいと思っていた。この立場は「厳密主義」と呼ばれる。「倫理的な命題もまた厳密に証明できる」という立場である。
 厳密主義の代表としてカントを挙げることができる。カントは「定言命法」という形式を用いて、倫理をア・プリオリに証明しようとした。
 カントによれば、個々の格律について、この定言命法の形にはまるかどうかテストすれば、それが本当の道徳法則かどうかが分かるはずである。たとえば、「私が嘘をつかない」という格律を立てるとする。「あなたも嘘をつかない」、「誰も嘘をつかない」というようにして、「嘘をつかない」を普遍的な法則にしても矛盾が出ない。だから「嘘をつかない」は道徳法則である。(中略)カントは、普遍化できる=矛盾を含まない→道徳法則であるという筋道を考えていた。
 しかし、そのようなア・プリオリな原則が果たして本当に存在するのであろうか?ムーアは、「善は定義できない」とあっさり述べている。
 「善とは何か(What is good?)と訊かれたら、私の答えは善は善だ、それでおしまいだ(My answer is that good is good, and that is the end of the matter.)というものである。善は、どのように定義されるかと訊かれたならば、私の答えは、善は定義できない、これが善について私が言うべきすべてなのである」
 人間は自然状態のままでは自由や財産を守ることができないため、一定のルールを作って国家を建設することにした。ここで言う一定のルールが倫理に該当する。カントは、そのルールがア・プリオリかつ普遍的に定まると主張した。だから、「世界共和国」なる発想が出てくる。しかし、現実の世界では、世界共和国に向けて収斂するどころか、ますます国家の数(特に小国)が増えている。

 これらの新しい国家のルールは、そこに住む人々の伝統や歴史的背景に根差したア・ポステオリなものであろう。国家の数が増えているのは、「自分は他者と違っていたい」という欲求と、「自分は他者と違っていたいという欲求を誰かと共有したい」という矛盾する欲求を我々が持っていることに起因する。この2つの欲求を両立させようとすると、国家は細分化していく。だから、我々が倫理を語る時には、普遍化を目指すのではなく、相互主義の立場に立つべきだと思う。
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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、1,000字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
所属組織など
◆個人事務所
 「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ

(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

Experian海外企業信用調査 海外企業信用調査(Experian)
(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

資格スクエア資格スクエア
(2016年7月から「ITパスポート」、8月から「情報セキュリティマネジメント」、11月から「経営学検定(初級)」の講師を務めています。谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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