こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント・トレーナー)のブログ別館。1,500字程度の読書記録の集まり。

DHBR2018年6月号『職場の孤独』―終了時刻を設定しない会議を夜に行う企業はだいたい問題あり


DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2018年06月号 [雑誌]DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2018年06月号 [雑誌]
ダイヤモンド社 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

ダイヤモンド社 2018-05-10

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 本号の特集とは関係がないが、知識労働者にとって最大の敵の1つである「会議」に関する論文が掲載されていた(レスリー・A・パーロウ、コンスタンス・ヌーナン・ハドリー、ユーニス・ウン「頻度、タイミング、拙い進行を改める 会議の三重苦を解決する5つのステップ」)。

 まず、①会議の頻度は少ないが、議事進行が拙いというケースがある。その結果、個々の社員には単独作業と熟慮にあてる時間が十分にある半面、会議が非効率なため、グループ全体の生産性と協力度が低下する。論文の著者の調査によると、企業幹部の約16%が、自分の職場がこれに該当すると回答した。次に、②会議の質は比較的高く、表面上はグループの時間が上手く活用されているものの、会議の頻度が多すぎて単独作業にあてる時間が削られ、まずいスケジューリングによって熟慮が妨げられるというケースがある。著者の調査では、幹部の約13%が、自分の職場がこれに該当すると回答した。

 そして、③これが最も厄介なのだが、会議が頻繁すぎて、タイミングが悪く、進行が拙いため、グループと個人の両方にとって生産性、協力体制、福利の損失につながっているというケースがある。著者の調査では、幹部の過半数を超える約54%が、自分の職場がこれに該当すると回答した。

 「会議に出席するとその企業の文化がよく解る」と言ったのはエドガー・シャインである。シャインほどではないが、私も企業などの会議に出席するだけで、その組織の文化をある程度推し量ることができる。まず、会議が予定通りに始まらない場合、遅刻者が出席者を待たせていることになる。こういう企業では、普段の業務でもチームワークが上手く機能しておらず、メンバーの中に手待ち状態になっている人がいる可能性が高い。そして、手待ち状態にさせていることに対して、チームワークを阻害している当の本人が無自覚になっている。

 会議が予定の時間通りに終わらない場合、知的作業の時間の見積もりが甘く、生産性に問題がある企業だと推測できる。会議はいつ結論が出るか解らないから終了時刻を設定するのは無理だと嘆く人もいるが、私に言わせれば、限られた時間の中で結論を出すように会議をマネジメントするのが会議主催者の責任である。それに、慣れてくれば、会議のアジェンダの性質や難易度、出席者の人数やタイプによって、議論にどれくらいの時間がかかるか、いや、どのくらいの時間で結論を出さなければならないかが解るようになるものである。

 会議に出席する人数が多い場合、日常業務におけるコミュニケーションが希薄になっていると予想できる。日常的なコミュニケーションが不活発であるために、会議で強制的にコミュニケーションを取らせようとしていると考えられるからだ。また、会議で一言も発言しない人が何人もいる場合には、組織階層の上下の権力格差が大きく、悪い情報が上層部に上がってこない組織だと推定できる。

 議事録の作成を重視する企業も要注意である。議事録は、意思決定のプロセスを事後的に検証するために作成されているのであれば問題ない。しかし、会議に出席していない人が会議の内容を知るために作成されているとすれば考え直した方がよい。会議の内容を知る必要があるということは、会議のアジェンダについて利害関係を有しているということである。そういう人は会議に出席しなければならない。怠慢な人のために議事録を作成するのは全くの無駄である。

 また、会議に出席していないが会議の内容を知る必要がある利害関係者が大勢いる場合には、仕事の単位、会議で取り上げたアジェンダの単位が大きすぎると考えられる。仕事やアジェンダの単位をむやみに細分化すると今月号の特集である「職場の孤独」を生み出してしまう恐れがあるが、本来、組織とは分業のための道具である。それぞれの社員が、自分が知らなくてもよいことは知らないままであったとしても、自分の持ち場に専念さえしていれば、組織全体としては回っていくというのが理想である。だから、会議で扱うアジェンダも、利害関係者が必要最小限の人数になるように設計しなければならない。

 私が最も忌み嫌うのは、終了時間を設定しない会議を夜にセッティングされることである。これは、私の前職のベンチャー企業(企業研修&組織・人事コンサルティングサービス)での経験が影響している。前職の企業では、金曜日の夜に経営会議が開催され、マネジャー以上の社員が全員参加していた(マネジャーでなかった私は参加せず)。19時から始まる会議は、いつも22時を過ぎても終わらなかった(私も残業していたわけだが)。私には密室の中身が解らなかったが、翌週以降に会社に大して変化がなかったことを踏まえると、会議では何も決まっていなかったのだと思う。夜は1日の中でエネルギーを使い果たした時間帯である。それが金曜日の夜ともなれば、1週間の中で最もエネルギー水準が低い。その時間に企業の命運を左右するような重要な意思決定を行うことは無理である。

 金曜日の夜に経営会議を開いていたのは、その時間にしかマネジャーが集まることができないからだったと聞いている。特に、営業マネジャー(ベンチャー企業なのでプレイングマネジャーになっていた)は日中に商談を抱えているため、夜でないと無理だと言ったらしい。だが、私の観察によると、営業マネジャーは日中も普通に社内にいることが多かった。理想は、1週間のうちで最もエネルギー水準が高い月曜日の朝に会議をすることであった。営業マネジャーは、商談の時間が削られると反発したに違いないが、多くの普通の企業は月曜日の朝に会議をやっているから、商談の予定を入れることなどできなかったはずである。

清家彰敏『顧客組織化のビジネスモデル―小規模事業集団の経営』―「『顧客を組織化する』とはこういうことではないか?」という4形態


顧客組織化のビジネスモデル―小規模事業集団の経営
顧客組織化のビジネスモデル―小規模事業集団の経営
清家 彰敏

中央経済社 2003-04

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 タイトルからして、バラバラの顧客を組織化して顧客同士の絆を強めるビジネスモデルのことであり、また、「小集団事業集団の経営」というサブタイトルから、中小企業中心、ないしは大企業が小規模のグループを多数作り、組織化された顧客との距離を縮め、顧客のロイヤリティを高めることによって持続的に収益を上げるビジネスモデルについての本かと思ったが、全く違った。

 まず、20世紀のモノ中心の市場経済では収穫逓減の法則が働くが、21世紀の知識中心の市場経済では収穫逓増の法則が成り立つと著者は説明する。その上で、「戦略的―戦術的」、「オープン―クローズ」という2軸を使ってマトリクスを作り、収穫逓増のモデルを「選別型(A型:戦術的&クローズ)」、「素材型(B型:戦略的&オープン)」、「組立型(C型:戦略的&クローズ)」、「誘発型(D型:戦術的&オープン)」という4つに分ける(モデルの名称と具体的なモデルの中身の説明が感覚的に一致しないのも、この本を解りにくくしている)。その上で、それぞれのモデルについて顧客組織化の方法が論じられるのかと思いきや、事例の解説に入ると、これとは別のマトリクスが登場する。

 新たに登場するマトリクスも1つならまだ我慢して理解しようとするのだが、事例紹介のたびに別のマトリクスが登場するから非常に解りにくい。「プロダクト―サービス」と「オープン―クローズ」という2軸によってマトリクスを作り、「サービス&オープン」型をWorld Wide型(脱日本型)として最も先進的なモデルとしているのに、別の箇所では「プロダクトがオープンかクローズか?」、「サービスがオープンかクローズか?」という2軸によるマトリクスで、「プロダクト=オープン、サービス=クローズ」というGEが先進事例として紹介されており、サービスをオープン化するのが先進的ではなかったのかと頭が混乱する。

 (※)GEは、製品レベルでは他社の製品も取り扱っており、そのために短期的には利益率が下がるが、保守・修理・メンテナンスなどの粗利が高いサービスをGEが一貫して行うことで、トータルでは高い収益率を実現している。

 著者は「オープン―クローズ」という切り口に強くこだわっているようだが、組織がクローズの場合とオープンの場合で、顧客の組織化の方法がどのように異なるのかについては論じられていない。やっと組織化された顧客のことが登場したかと思うと、それはNPO/NGOのことであった。しかも、企業に対して協力的な存在ではなく、企業に対して敵対的な存在として描かれている。例えば、自動車業界では渋滞や環境など社会的な問題がまだ山積している。これらの課題について、顧客はNPO/NGOという組織を通じて自動車メーカーに圧力をかけなければならないというわけだ。ここまでくると本当に訳が解らない。

顧客組織化の4類型

 私が考える「顧客組織化」はもっとシンプルである。「顧客との関係が強いか弱いか?」、「短期的なコスト減になるか、中長期的な収益増(短期的にはコスト増)となるか?」という2軸でマトリクスを作ってみた。

 左上の<象限①>では、企業がデータベースを用いて顧客のデータを組織化する。企業はあくまでもデータを通じて顧客とつながっているにすぎないため、顧客との関係は弱い。企業は顧客DBに蓄積された様々なデータを解析し、ある顧客と類似の属性を持つ顧客の購買行動に着目して、類似の顧客が購入した製品をその顧客にも提案する。Amazonのレコメンデーション機能が一番解りやすい。IoTにおいても、顧客がどのようなメーカーの製品を組み合わせて工場で使用しているかをモニタリングし、類似の製品構成からなる工場の修理・メンテナンスの実績データを活用して、顧客に対して最適なタイミングで保守や買い替えの提案を行う。システム投資が必要であるため、短期的にはコストがかかるが、中長期的に見ると顧客の囲い込みにつながり、収益増がもたらされる。

 左下の<象限②>は、顧客同士による問題解決である。企業は顧客同士が緩やかにつながるネットワークを形成する。顧客は何か困りごとがあると、ネットワークに対して質問を投げかける。それに対して、別の顧客が回答を寄せる。これはYahoo!知恵袋のようなものである。ITベンダーが導入しているユーザ会が解りやすい例だろう。本来、顧客が何か問題を抱えた場合には企業がそれを解決するはずである。ところが、企業に代わって別の顧客がその問題を解決してくれるので、企業にとっては短期的にコストダウンが達成できる。

 右上の<象限③>は、顧客をコミュニティ化することである。企業と顧客は強い関係で結ばれている。また、顧客同士も強い絆で結ばれている。旧ブログの「ビジネスモデル変革のパターン」シリーズの「【第2回】高級志向の顧客を狙う」」で紹介したハーレー・ダビッドソンが好例である。バイクのユーザは元々コミュニティ志向が強く、同社は顧客のコミュニティ化を支援している。会員制クラブのイベントは臨時社員ではなく正社員が運営しており、同社が顧客とのつながりを重視していることが解る。また、経営陣も頻繁にコミュニティに顔を出し、真の顧客志向を体現している。こうした活動はすぐには売上増につながらないが、長く続けることで顧客のロイヤリティが高まり、中長期的には収益増が実現される。

 右下の<象限④>は、顧客参加型の製品・サービス開発である。企業に対して強い愛着を持っているコアユーザを新製品・サービスの開発の段階から巻き込む。コアユーザに対して、紋切り型のヒアリングをして情報を収集するだけでなく、本当の意味で彼らを製品・サービス開発に参画させる。具体的には、新製品・サービスのコンセプト構想会議に出席し議論に入ってもらう、プロトタイプを一緒に作成してもらう、テストマーケティングにおいて単に新製品・サービスを使ってもらうだけでなく、潜在顧客にそれを勧めてもらう、などといった具合である。企業としては、新製品・サービスの開発コストを削減する効果が期待できる。

ロバート鈴木『大不況時代の新消費者ビジネス』―商店街の個店が生業的経営から脱皮する方法はないか?


大不況時代の新消費者ビジネス大不況時代の新消費者ビジネス
ロバート 鈴木

日本経済新聞出版社 2009-08-20

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 中小企業庁の「新たな商店街政策の在り方検討会」の資料「中間取りまとめ(案)」(2017年6月7日)では、次の内容が報告されている。商店街における問題について複数回答で尋ねたところ、「経営者の高齢化による後継者問題(64.6%)」が最も多く、次いで、「集客力が高い・話題性のある店舗・業種が少ない、またはない(40.7%)」、「店舗の老朽化(31.6%)」、「商圏人口の減少(30.6%)」の順で多くなった。中小企業の経営者の年齢は、1995年時点では最頻値が47歳であったが、2015年では66歳と高齢化している。一方で、商店街における問題について「経営者の高齢化による後継者問題」と回答した商店街の90%は、後継者問題に対して何も対策を講じていない。

 中小企業診断士である私が時に商店街に対して辛口になることをご容赦いただきたいのだが、商店街の多くの個店は、後継者不足を問題視しながら、内心実は後継者に継がせることを本気で検討しておらず、自分の代で店舗をたたんでしまおうと思っているのではないかと推測する。そしてその原因は、彼らが持続的な成長で社会に貢献することを目的とする企業的経営ではなく、自分の家族が食べていければ十分という生業的経営を行っている点にあると考える。

 時々私は、個店の店主がビジネスをしていて本当に楽しいのだろうかと疑問に思うことがある。例えば飲食店を開いたとする。飲食店のキャパシティは決まっているから、どうしても売上高には限界がある。当然、店主の収入も一定額に収まる。それが5年程度なら我慢できるかもしれないが、20年、30年もの間収入が変わらないとすれば、さすがにうんざりするのではないだろうか?自分と同じ思いを子どもにさせるわけにはいかない。まして、第三者を巻き込むことなどできない。だから、せいぜい自分と配偶者が食べていければ十分であると保守的になる。こうした心理的躊躇が、後継者難という問題を引き起こしているように思える。

 私が考える理想の企業とは、長く勤めることができて、年々ちゃんと給与が上がっていく企業である。そのためには、従来の生業的経営から発想を転換しなければならない。ただし、単なるチェーン店化はこの問題の解決にならない。チェーン店化しても、社長と店員の間に店長とせいぜいエリア長というポストができるぐらいであり、長いキャリアパスを設定することができず、ゆえに長期にわたる段階的な給与アップも見込めない。それに、チェーン店化すればするほど、どの商店街にも同じ店舗があって代わり映えしなくなるという別の問題を引き起こす。

 こうした問題を解決する1つのヒントを本書の中に見つけることができた。アメリカでは数多くのチェーン店が発達しているが、チェーン店の数が一定数に達すると成長が鈍化し、身動きが取れなくなるというジレンマがある。そこで、1業態多店舗ではなく、マルチフォーマット化を目指す企業が現れている。例えば、シカゴを基盤とする外食企業レタス・エンターテイン・ユー社は、1業態を50店舗チェーン化するのではなく、50業態を1店舗ずつオープンさせようという目標を掲げて業態開発を行っている(本書が出版された2009年当時)。

 ここからは実現可能性をまだ十分に検討していないアイデアになるが、次のような経営はどうだろうか?まず、20代で起業した社長が、20代の社員とともに、10~20代をターゲットとした飲食店Aを開発する。社長が30代になると、飲食店Aは新しく入社してくる20代社員に任せ、30代の社員は30代をターゲットとした飲食店Bを開発する。社長が40代になると、飲食店Aは新しく入社してくる20代社員に、飲食店Bは30代になった社員に任せ、40代の社員は40代をターゲットとした飲食店Cを開発する。社長が50代になると、飲食店Aは新しく入社してくる20代社員に、飲食店Bは30代になった社員に、飲食店Cは40代になった社員に任せ、50代の社員は50代をターゲットとした飲食店Dを開発する。つまり、社員の年齢が上がるにつれて可処分所得が多い層をターゲットとし、付加価値の高い飲食店を開発するわけだ。すると、社員の給与を段階的に引き上げることも可能となる。

 あるいは、ターゲット顧客を例えば30代~40代に固定し、社員の年齢が上がるにしたがって利幅の大きい製品・サービスを扱う業態にシフトしていくという方法もある。具体的には(極端な話だが、)社員が20代の頃は飲食店で働き、30代の頃はスーパーマーケットで働き、40代の頃は電化製品店で働き、50代の頃は自動車ディーラーで働く、といった感じだ。

 もちろん、中小小売業が複数の業態を開発することには大きな困難も伴う。例えば、業態A~Dが同じ飲食店であったとしても、業態によってオペレーションは全く異なるものになり、経営を非効率にする恐れがある。また、異なる業態の投入によって、既存業態のブランドが毀損されるリスクもある。扱う製品・サービスが異なる業態を複数持つ場合には、さらに経営が混乱するかもしれない。社員の能力開発も容易ではない。ただし、それを乗り越えていけば、商店街の個店は生業的経営を脱して企業的経営へと変貌し、社内にいる複数の社員の中から後継者を見つけることもできるようになるだろう。
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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、1,500字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
所属組織など
◆個人事務所
 「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ

(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)
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