こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント・トレーナー)のブログ別館。2,000字程度の読書記録の集まり。


坂本光司『日本でいちばん大切にしたい会社』


日本でいちばん大切にしたい会社日本でいちばん大切にしたい会社
坂本 光司

あさ出版 2008-03-21

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 本書はまさに『ビジョナリー・カンパニー』の日本版である。中小企業を中心に全国約6,300もの企業を訪問した著者が、①社員、②取引先・外注先、③顧客、④地域社会、⑤株主という5種類のステークホルダーを大事にしている理想的な企業を5社選出したのが本書である。

 《本書で紹介されている企業》
 日本理化学工業株式会社(神奈川県川崎市)
 伊那食品工業株式会社(長野県伊那市)
 中村ブレイス株式会社(島根県大田市)
 株式会社柳月(北海道帯広市)
 杉山フルーツ(静岡県富士市)

 5社はいずれも、企業の社会的責任(CSR)を果たしながら継続的に業績を上げている。競争戦略論の父であるマイケル・ポーターが最近使っているCSV(Creating Shared Value:共通価値の創出)という概念を借りれば、社会的ニーズを満たしながら経済的な価値を創出しているということになるだろう。

 だが、ブログ本館の記事「『CSV経営(DHBR2015年1月号)』―日本人は「経済的価値」と「社会的価値」を区別しない、他」でも書いたように、アメリカ人は経済的な価値を追求した結果、環境破壊や人権侵害、格差拡大など社会的な問題を引き起こしてきたため、その贖罪として社会的価値を追求するようになったのに対し、日本人は経済的価値を追求すれば自ずと社会的価値が創出されると考える。両者の違いはどこから生じるのであろうか?

製品・サービスの4分類(修正)

 ブログ本館で提示したこの分類図を使えば、多少は上手く説明できる気がする(いい加減、右上の象限を埋めてこの図を完成させないといけない)。

 アメリカ企業は、左上の象限に強い。iPhone、facebook、コカ・コーラ、ペプシ、ディズニー映画など、世界の時価総額ランキングで上位に入るアメリカ企業の製品・サービスの多くは、必ずしも必需品ではない。また、その製品・サービスに欠陥があった場合、顧客が一時的に困ることはあっても、消費者の生命や顧客企業の事業に深刻なダメージを与えることはない。

 これらの製品・サービスは、経済的に余裕がある顧客が、より快楽を求めるために購入する。したがって、それらの製品・サービスを提供するアメリカ企業は、純粋に経済的価値を追求していることになる。アメリカ企業は、マーケティングだけでは飽き足らず、イノベーションによって新たな製品・サービスを生み出し、それを世界中に展開する。しかし、アメリカの製品・サービスを世界中に半ば強引に押しつけようとするため、現地の利害や文化と衝突することがある。その埋め合わせのために、アメリカ企業は社会的価値の実現に着手するわけだ。

 一方、日本企業が強いのは、右下の象限である。製品・サービスに欠陥があると、消費者が死亡したり、顧客企業のビジネスがストップしたりするため、1,000個に1個の不良でも許されない。そのため、政府による細かい規制、企業による高い品質管理、継続的な技術革新などによって、不良率を極限まで下げる。こうした努力のおかげで、日本の製品・サービスは世界中で高い評価を得ている。

 しかも、右下の象限は顧客にとって必需品である。必需品ということは、それなしでは最低限豊かな生活ができないことを意味する。ポーターは社会的価値の意味を明確に定義していないのだが、論文から察するに、社会的価値のある製品・サービスとは、顧客がそれによって肉体・精神的に健康で、一定水準以上の生活ができるようになるものを指していると思われる。ということは、日本企業は右下の象限に注力することで、自然と社会的価値を創出していると言える。

黄文雄『中国・韓国が死んでも隠したい 本当は正しかった日本の戦争』


中国・韓国が死んでも隠したい 本当は正しかった日本の戦争 (一般書)中国・韓国が死んでも隠したい 本当は正しかった日本の戦争 (一般書)
黄 文雄

徳間書店 2014-02-19

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 中国が捏造しているとされる7つの出来事についてのメモ書き。

(1)南京大虐殺
 一時期は犠牲者100万人という説まで出たが、その後中国共産党の決定として30万人という数字が出た。しかし、当時の南京の人口は20万人にすぎない。民間人になりすました中国兵による乱暴が実際にあり、彼らを日本軍が掃討したことが民間人虐殺と誤解されたことが考えられる。

(2)三光作戦
 三光とは「搶光(奪い尽くす)」、「焼光(焼き尽くす)」、「殺光(殺し尽くす)」という意味で、これが日本軍の政策だったとされる。日本軍が日本兵に指示したのならば、当然日本語のはずである。しかし、この「光」は「空にする」という意味で使われており、日本人には馴染みが薄い。

 戦後に中華民国政府が発行した『中共述語語彙集』には、共産党軍が地主に「清算闘争」を行う際のスローガンとして、「分光(分け尽くす)」、「吃光(食べ尽くす)」、「用光(使い尽くす)」という語を使っていたことが記されている。また、中華人民共和国による『中国人民述語辞典』によれば、国民党が人民を殺害する際に用いたスローガンとして、「搶光」、「焼光」、「殺光」が出てくる。

 つまり、三光作戦とは、日中戦争中に国民党軍・共産党軍両軍が用いていたスローガンであり、それがいつの間にか日本の話にすり替わったと考えられる。

(3)七三一部隊
 中国で最も日本軍を苦しめたのは、中国軍ではなく疫病と不衛生である。1937年7月から1940年11月までの間、華北の日本軍では赤痢や腸チフス、パラチフス、発疹チフスの感染が急増していた。しかも、自然の感染ではなく、細菌テロの可能性が既に指摘されていた。

 このような戦地において防疫が重要なのは当然であって、七三一部隊は防御用であっても攻撃用ではあり得ない。対抗措置としての生物・化学兵器開発は考えられていたものの、公式指令がないことや資料不足から、開発製造には至らなかった。森村誠一の著書『悪魔の飽食』で有名になった人体実験も、確かな証拠は今に至るまで出ていない。

(4)万人坑
 南京大虐殺の遺体を埋めたとされる万人坑だが、虐殺の歴史の長い中国では一度に大量の人骨が見つかるのはよくあることだ。南京では、太平天国滅亡時の天京(南京)大虐殺、辛亥革命後に張勲が起こした南京虐殺事件、蒋介石軍が日本居留民を殺害した南京事件など、たびたび「南京大虐殺」が起きている。これらが全て、日中戦争時の日本軍の仕業とされてしまっている。

(5)田中上奏文
 1927年、当時の田中義一首相が昭和天皇に差し出した上奏文の中に、「支那を征服せんと欲すれば、まず満蒙を征せざるべからず。世界を征服せんと欲すれば、必ずまず支那を征服せざるべからず・・・これ乃ち明治大帝の遺策にして」と書かれていたことから、日本による中国・世界征服の計画書だとされた。

 上奏文は中国語で4万字という長文で、漢文訳だけでも10数種類、英露独語にも翻訳されている。しかし、日本語の原文は見つかっておらず、文体にも天皇にさし上げた文章としては不自然な箇所がある。つまり、非常にお粗末な偽書であり、反日プロパガンダであったと考えられる。

(6)黄河決壊
 1938年6月7日に河南省中牟付近の黄河堤防が爆破された事件であり、水死者100万人、被害者600万人と言われる犠牲が出た。国民党の通信社などは「日本の空爆による」と報道したが、同月17日にはフランス社会党の機関紙が「国民党による自作自演の愚挙」と報じている。

 その後、当時の工兵参謀が名乗り出たことで、真相が明らかになった。徐州会議後の日本軍の西進を阻止するべく、蒋介石の命令で堤防を爆破したのである。結局、失敗した作戦の巻き添えで100万人の命が失われた。日本軍は堤防を爆破したどころか、被害者の救助作業にあたった写真が見つかっている。

(7)長沙焚城
 中国軍が自国民の生命と財産を無差別に踏みにじった例としては、他に長沙焚城がある。蒋介石が「長沙が陥落したら全城を焼き払え」と命じていたことに基づき、1938年1月12日に湖南省の長沙城が放火された事件である。この時、日本軍はまだ数百キロ先にいたにも関わらず命令は実行されて、死者20万人という被害を出し、さらに紀元前まで遡る長沙の重要な文書もほとんど失われた。

『3人に1人がヤバい!認知症社会が到来/高齢者が買ってはいけない金融商品(『週刊ダイヤモンド』2015年2月21日号)』


週刊ダイヤモンド 2015年2/21号 [雑誌]週刊ダイヤモンド 2015年2/21号 [雑誌]
ダイヤモンド社 週刊ダイヤモンド編集部

ダイヤモンド社 2015-02-16

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 てっきり認知症=アルツハイマー病だと思い込んでいたのだが、どうやら違うらしい。認知症はその原因に応じて主に以下の3つに分けられる。

(1)アルツハイマー型認知症
 アミロイドというタンパク質のゴミや、タウタンパク質が脳に蓄積されて、神経細胞のネットワークが壊れる。側頭葉と前頂葉が障害され、最近の出来事を忘れたり、道を忘れたりしやすい。

(2)脳血管性認知症
 脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などにより脳の血管が詰まったり、敗れて出血し、脳細胞を圧迫する。前頭葉が障害されることが多く、意欲が低下しやすい。

(3)レビー小体型認知症
 異常なタンパク質であるレビー小体が脳細胞に蓄積し、細胞が死滅する。後頭葉が障害され、現実にはないものがあるように見える幻覚が起こりやすい。

 認知症の患者を支援するために、国が「認知症サポーター」という人々を育成していることも初めて知った。認知症サポーターとは、何か特別なことをやる人ではない。認知症についての正しい知識を習得し、自分のできる範囲で認知症の人や家族を応援するのが認知症サポーターである。

 認知症の本人を支援する以外にも、例えば、友人や家族に認知症に関する識を伝えていくことや、認知症の人を抱える家族の気持ちを理解するよう努めることも、サポーターにできる支援である。その他にも、商店・交通機関など、自らの働く場で、できる範囲で手助けをするなど、色々な関わり方が想定されている。

 認知症サポーターになるためには、「キャラバン・メイト」と呼ばれる講師が行う、60~90分程度の「認知症サポーター養成講座」に参加する必要がある。同講座は、都道府県・市町村等の自治体や職域団体・企業、町会・自治会などとキャラバン・メイトの協働で行われ、養成講座を受講した人が認知症サポーターとなる。講座を修了すると、認知症サポーターの「目印」として、オレンジ色のブレスレット「オレンジリング」が渡される(「とうきょう認知症ナビ」HPを参照)。

 現在、全国の認知症サポーターは約580万人に上るという(2014年12月31日時点)。認知症サポーターの数を年代別に見てみると、60歳以上が約250万人で全体の4割強を占める。これは、自治体が実施する認知症サポーター養成講座への参加者が多いためと思われる。

 一方、40~50代は、企業が実施する講座への参加者が多い。高齢者の顧客を多く抱える企業が、社員の顧客対応力を強化する一環として、認知症サポーターの育成に着手している。本号ではいくつかの事例が紹介されていた。イオンは2007年から育成を開始し、現在では認知症サポーターの数は約5万人に上る。食品や日用品を共同購入して自宅に届ける生活協同組合(生協)では、全国約10万人の職員の約2割が認知症サポーターになっている。最近は、コンビニエンスストアや金融機関が認知症サポーターの養成に取り組み始めているという。

 政府は今年の1月27日、12省庁横断で取り組む「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」をまとめた。その中には、認知症サポーターを2017年度末時点で800万人まで増やすことが明記されている。
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。これまでの主な実績はこちらを参照。

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、2,000字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

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