こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント・トレーナー)のブログ別館。2,000字程度の読書記録の集まり。

2016年07月


三木良雄『IoTビジネスをなぜ始めるのか?』


IoTビジネスをなぜ始めるのか?IoTビジネスをなぜ始めるのか?
三木 良雄

日経BP社 2016-05-19

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 最近の中小企業向け補助金で注目度が高いのが「ものづくり補助金」である。平成24年度補正予算から始まって、今年で4年目に入る。初年度は製造業のみが対象であったが、平成25年度以降はサービス業もカバーするようになった。今回、平成27年度補正予算でものづくり補助金を実施することが決まった時、補助上限1,000万円(補助率3分の2以内)という通常のコースに加えて、今話題のIoTに取り組む設備投資に対して上限3,000万円(補助率3分の2以内)の補助金を出すコースを新設する点が大々的にアピールされた。

 ただ、私は中小企業がそうそう簡単にIoTのシステムを構築できるわけがないと思っていた。それに、経済産業省もIoTについては不勉強で、ものづくり補助金の概要資料には、「新たに航空機部品を作ろうとする中小企業が、既存の職人的技能をデータ化すると共に、データを用いて製造できる装置を配置」するものをIoTとして挙げているようなレベルであった(ブログ本館の記事「平成27年度補正ものづくり補助金の概要について」を参照)。

 そういう経緯もあってか、公募が始まって蓋を開けてみると、IoTは「高度生産性向上型」という類型の一部という位置づけに格下げされていた。高度生産性向上型には、IoTの他に「最新型」という類型があり、一定期間内に販売が開始された最新設備を導入すると補助金が出る。補助上限は、IoTと同じく3,000万円である(補助上限3分の2以内)。最新型は、「最新モデル省エネルギー機器等導入支援事業(平成26年度補正)」という類似の補助金の流用である。だから、経済産業省の本音は、今まで手がけたことがなく、自分たちもよく解らないIoTよりも、実績のある最新型で応募してほしい、ということだったのではないかと推測する。

 IoTがトーンダウンしたとはいえ、公募を行う限りは、IoTとは何なのかを明確に定義しておく必要がある。公募要領には次のように書かれている。
 「IoTを用いた設備投資」とは、本事業において設備投資を行うことで、単に従来から行われている単独機械の自動化や工程内の生産管理ソフトの導入にとどまらず、複数の機械等がネットワーク環境に接続され、そこから収集される各種の情報・データを活用して、①監視(モニタリング)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)、④分析(アナライズ)のいずれかを行うことをいいます。
 しかしながら、この定義は実に曖昧である。この定義に従うと、例えばSFAシステムもIoTに該当してしまう。営業担当者はPCやタブレットで商談履歴を登録する。上司は部下の情報を見ながら、部下に個別にアドバイスをしたり、部門全体の営業方針を改善したりする。確かに複数の機械がネットワークにつながっており、上司が分析を行っている。だが、これをIoTと呼ぶ人はいないだろう。

 インプットとなる情報は、人間が手を使って入力するのではなく、機械に取りつけられたセンサーなどによって自動的に収集される必要がある。まずはこの点をIoTの定義に盛り込まなければならないと考える。

 「①監視(モニタリング)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)、④分析(アナライズ)」というIoTの機能についても同様である。これらを人間が行うのであれば、やはりIoTとは言い難い。例えば、鉄道各社は電車にセンサーを取りつけ、集中管理室で人間が運行状況をモニタリングしている。人身事故などのトラブルが発生した場合は、影響が及びそうな沿線に連絡し、対応策を伝える。これも、確かに複数の機械がネットワークにつながっており、監視・制御を行っている。とはいえ、IoTと呼ぶには無理がある。

 「①監視(モニタリング)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)、④分析(アナライズ)」という4つの機能のうち、①②③はネットワークに接続された機械に対して何かしらのフィードバックを送る。他方、④はデータを集約したサーバ側で完結してしまうケースがある点に問題がある。

 現在のPOSレジは、人間がバーコード情報を読み取るのでIoTとは言えないが、仮にICタグの技術が上がって無人レジが一般化したとしよう。各店舗からは膨大な購買履歴情報がサーバに集約される。だが、そのサーバが売れ筋・死に筋を分析するだけにとどまっていたら、システムとしてはほとんど意味がない。

 サーバからは、分析結果を店舗や配送センターにフィードバックする必要がある。しかも、フィードバック結果を活用するのは人間ではなく機械である。分析結果を受けた店舗では、「ロボット店員」が棚卸の陳列を変更したり、発注情報を修正したりする。配送センターは、それぞれの店舗から受け取った発注情報に基づいて、最適な配送ルートを割り出す。同時に、在庫情報に基づいて仕入先に自動発注を行う。各店舗に商品を配送するトラックや、仕入先から配送センターに出入りするトラックは「自動運転車」である。ここまでくれば、壮大なIoTである。

 以上を踏まえて、私なりにIoTを定義すると次のようになる。
 IoTとは、複数の機械などをインターネットに接続し、そこから自動的に収集される各種の情報・データを自動的に分析して、その結果を機械などにフィードバックし、機械などの①監視(モニタリング)、②保守(メンテナンスサービス)、③制御(コントロール)などを通じて、業務効率化や生産性向上につなげる仕組みである。
 この定義に照らし合わせて本書を読むと、定義に合致するものと、必ずしも十分に合致するとは言えないものとが混在している印象を受けた。JINSは「JINS MEME」というメガネを発売した。JINS MEMEには3点式眼電位センサーが搭載されており、装着者の眼球の周りでかすかに変化する電位を検出し、スマートフォン専用のアプリがデータを解析する。だが、これは複数人が装着する複数のJINS MEMEのデータを活用しているわけではないため、IoTとは呼びにくい。

 セコムは、不審車や侵入者を検知してドローンで追跡するサービスを開始している。セコムのシステムには、全国各地に設置されているレーザーセンサーから送られる大量のデータが蓄積されており、不審者や侵入者を特定するメカニズムが確立されているはずだ。それを活用して、特定地域における不審者や侵入者を発見する。その結果をドローンにフィードバックし、自動で現場に移動させる。センサーからのインプットも、ドローンへのフィードバックも自動で行われており、かつドローンの動きを制御しているから、これはIoTと呼べそうだ。

 ドコモ・バイクシェアは全国でサイクリング事業を展開し、自転車に利用状況を把握するための通信システム(GPSなど)を搭載している。この機能を使うと、自転車の貸し出し状況のデータや走行データなどが取得できる。このシステムは、コマツの「KOMTRAX」に似ている。だが、KOMTRAXでは、建設機械の稼働情報を保守などに活用するのは人間であり、この点でIoTと呼ぶにはやや抵抗がある(世間的には、IoTの代表例のように扱われているが)。ドコモ・バイクシェアは、収集したデータを自転車にやさしい街づくりの基礎資料とするらしいが、その分析作業はおそらく人間がやるであろうから、IoTとは言い難い。

 損保ジャパン日本興亜は、ドライブレコーダーで収取したデータを基に、ドライバーの運転危険度を分析している。分析結果は客観的なレポートや運転の改善点としてドライバーにアドバイスされ、安全運転が促進される。損保ジャパン日本興亜のデータベースには、様々なドライバーの運転情報が蓄積されており、危険な運転のパターンを自動的に分析していると考えられる。ただし、制御の相手が機械=自動車ではなく、人間=ドライバーであるから、これもIoTと呼びづらい。

 例えば、ドライバーの運転情報に基づいてドライバーのリスクが定期的に判定され、それが毎月の自動車保険料に自動的に反映されて保険料が変動し、ドライバーに通知されるとする。こういう仕組みだったらIoTと呼べるように思える。

『創価学会と共産党/6月23日国民投票! 英国のEU離脱騒動(『週刊ダイヤモンド』2016年6月25日号)』


週刊ダイヤモンド 2016年 6/25 号 [雑誌] (創価学会と共産党)週刊ダイヤモンド 2016年 6/25 号 [雑誌] (創価学会と共産党)

ダイヤモンド社 2016-06-20

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 ダイヤモンド社が独自に算出した創価学会の総資産は、何と約1.8兆円。燃費不正問題で揺れる三菱自動車の総資産が約1.4兆円(2016年3月期)であるから、それよりも巨大な資産を抱えていることになる。これだけの規模の組織ともなれば、当然のことながら、そのお金を目当てに集まってくる企業も多い。創価学会を中心として成り立つビジネス圏を、本誌では「S経済圏」と表現していた。創価学会は全国各地に「中心会館」という施設を持ち、これだけで総資産の半分を占める。施設の建設や保守ビジネスを狙うゼネコンが多いようだ。

 創価大学は、偏差値はそれほど高くないのに(どの学部も大体40台である)、大企業への就職率は高い。本誌には、主たる大企業の新入社員に占める創価大学出身者の割合のランキングが掲載されており、1位はセコムであった。セコムは、前述した会館の警備ビジネスを創価学会から受注しているのかもしれない。約9,000億円の施設の警備ともなれば、相当な事業規模になるはずである。

 創価学会は、1950~60年代にかけて会員数を大きく伸ばし、それに伴って全国各地に会館を建設した。当初は、会館の警備は会員が自ら行っていた。自主警備を行うグループは、地域ごとに当番や会館警備と呼ばれいたが、1971年に「牙城会」として全国で組織化され、統一的な人材育成に取り組み始めた。

 創価学会では、会館の警備も仏道修行の一環と定められており、牙城会員は、日々の唱題と来訪者に対する心遣い(来訪者に気持ち良く会館を利用してもらう)を学ぶことを通じ、社会人としての成長を目指して、会館警護の任務を行っている。着任する際には、仕事の予定などを調整し、当日は通常よりも早めに出勤したり、休憩時間を削ったり、あるいは休暇を取得したりするなど、仕事と任務の両立を図る。これも修行の一環と定められている。

 警備中は細心の注意を払い、無事故で任務を終了するのが当然と考える。しかし、万が一、事故が生じた場合は、信心の魔(信心を妨げる業)が差したと考え、自己の心に油断がなかったか厳しく問いかける。

 創価学会は警備業の許可を持たないため、これらの業務は法的には当直・宿直に該当する。 かつては閉館から翌朝まで泊り込み、交代で警備していたが、現在は特別な期間中や一部の会館を除いて、セコムによる機械警備に取って代わられている。こういう経緯で、セコムが会館に深く入り込んでいるようだ。

 私は学生時代にセコムのインターンシップに参加したことがある。全体で20人ぐらい採用され、営業拠点、経営企画室、コールセンターなど色々な部署に配属された。私は、「セコムの食」という、食品の通信販売を行っている事業のコールセンターで2週間ほど仕事をさせていただいた。その20人のうち、妙に創価大学の学生の割合が高かったのを記憶している。本号を読んでその謎が解けた。

 ちなみに、私を含む20名は、セコムのインターンシップの第1期生であった。後で知ったことだが、セコムとしてはインターンシップ生を一本釣りするつもりだったらしい。ところが、その後の採用で誰一人セコムに入社しなかったため(皆揃って裏切者、苦笑)、インターンシップは1年で取りやめになってしまった。

 本号の特集は「創価学会」と「共産党」であるが、「共産党」はさらりと触れられている程度だった。共産党は闇が深すぎて、週刊誌には手が負えないと思う。参議院選挙で、安倍政権の暴走を止めると息巻く共産党は、いつも以上に選挙活動に力が入っているように思える。しかし、彼らは2つの嘘をついている。

 ①共産党は平和主義を掲げて戦争に反対している。
 ⇔共産党は、未だにマルクス・レーニン主義、すなわち社会主義の実現を目指している。マルクスは、社会主義は世界同時に実現すべきだと主張し、そのための手段は「暴力革命」によるとした。実際、戦後の共産党は、何度か暴力革命を試みている。そのために、破壊活動防止法が制定された。そして、現在も破防法の規定に従って、監視対象の団体とされている。国家間の戦争はNGで、国家内部で体制を転覆させる暴力はOKとする理由が、私にはさっぱり解らない。

 ②共産党は政党交付金を受け取っていない。
 ⇔政党交付金とは、政党の活動を助成する目的で国庫から交付される資金であり、議席数に応じて額が決まる。2016年の政党交付金は、自民党が約172億円、民進党が97億円である。共産党は政党交付金を受け取らない代わりに、党が発行する機関紙「しんぶん赤旗」を主な収益源としている。赤旗の発行部数は24万部で、赤旗の売上高が党費の大部分を賄っている。

 これだけであれば、「クリーンで頑張っている政党」という話で終わるのだが、共産党には中国共産党から裏金が流れているという噂が絶えない(※この点に関する証拠を探しています)。戦後、コミンフォルムは世界各国の共産党に資金を提供していたことが知られている。目的は、前述の通り世界同時革命を起こすためである。ソ連が崩壊した今となっては、そのような資金ルートは崩れていると思うが、だからと言って「完全になくなった」と言い切れる証拠もない。
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。これまでの主な実績はこちらを参照。

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、2,000字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

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