こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント・トレーナー)のブログ別館。2,000字程度の読書記録の集まり。

2018年06月

DHBR2018年7月号『アジャイル人事』―顧客情報を活用した広告のカスタマイズ化は意外とできていない気がする


DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2018年07月号 [雑誌]DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2018年07月号 [雑誌]
ダイヤモンド社 DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

ダイヤモンド社 2018-06-09

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 (※)本号の特集以外の論文に関する記事のため、ブログ別館に書きました。

 レスリー・K・ジョン、タミ・キム、ケイト・バラスの論文「プライバシーを尊重しながら最大の効果を上げる デジタル広告を”炎上”させない5つの方針」では、炎上しやすいデジタル広告の特徴として次の2つが挙げられていた。
 ・別のウェブサイトから入手した情報に基づいて広告を表示する。これは、陰口を叩くのと似ている。
 ・アナリティクスで誰かに関する情報を推測する。これは、誰かについて憶測で物を言うのと似ている。
 1つ目は何となく理解できるものの、2つ目に関しては、Amazonという巨大な例外が存在するように思える。言うまでもなく、Amazonはユーザの購買履歴情報に基づいて、そのユーザが次に買いそうな製品を統計的な推測に基づいて紹介している。だからと言って、Amazonのこのやり方で炎上したという話は聞かない(家族が共有するアカウントで、父親がアダルトビデオを購入した後、娘がAmazonのページを閲覧したら、おすすめ商品がアダルト関連ばかりになって家族が気まずい思いをしたという話は聞いたことがあるが)。

 これは私だけかもしれないが、個人的には、せっかく自分のプライバシー情報を提供しているのだから、企業はもっとアナリティクスを活用して別の製品・サービスを提案してほしいと思う。Googleから楽天のサイトに入って楽天で買い物をした後、Yahooのページを開いたら楽天のGoogle広告が表示されるのだが、既に購入した製品が紹介されることがよくある。さっき購入したばかりなのだから、同じ製品を購入する確率は低いだろう。また、ある製品を購入しようと複数の企業のHPをGoogleで検索し、特定の企業から製品を購入した後、別のページを閲覧したら、Google広告は私が選択の対象から外した企業を表示させることも多い。

 Googleには、楽天で私が購入した製品と同じ製品を購入した人が、その後購入する確率が高い製品を紹介してほしかった。また、私が製品を購入した企業で、他によく売れている製品や、その企業のHPを訪問した後によく訪問される企業のHPを宣伝してほしかった。世間ではビッグデータだのAIだのと騒がれているが、この辺りのアナリティクスはまだまだ発展途上なのかもしれない。

 似たようなことは、クレジットカードや共通ポイントカードにも言える。クレジットカード会社や共通ポイントカードの運営会社は、膨大なユーザ情報と購買履歴情報を保有している。それを活用してもっと積極的に広告を打てばいいのにと思う。昔はクレジットカード会社も毎月の請求書を紙で送っていたから、郵送物の中に自分の購買履歴と関連があると思われる広告が入っていたものである。ところが、請求書がデジタル化されてからは、そのような広告は消えてしまった。Webのマイページ上で、購買履歴情報に基づく広告を表示させているクレジットカードは、少なくとも私が使っているカードの中には存在しない。

 共通ポイントカードは、クレジットカードよりも頻繁に使われるため、さらに購買履歴情報の量が増える。ユーザと類似の属性、行動範囲、購買履歴、消費パターンを持つ他のユーザのデータから、お勧めの企業・店舗や製品・サービスを宣伝することは、技術的には不可能ではないはずだ。しかし、私はTポイントカードのユーザであるが、そのような私向けの広告が配信されたことはないし、Tポイントカードのアプリを開いても、そもそも広告のスペースがない。Tポイントカードを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の企業理念は「マーケティングを通じて社会に貢献すること」である(TSUTAYAはその一手段という位置づけである)。今のところ、その理念は十分に達成できていないように見える。

 もちろん、クレジットカード会社や共通ポイントカード運営会社は、広告を配信しすぎるとユーザの反発を買う恐れがあるため、敢えて広告を配信していない可能性はある。Amazonはお勧め商品を表示させることで、その場でついで買いを誘発できるのに対し、クレジットカード会社や共通ポイントカード運営会社が広告を表示させても、次の購買行動につながるかどうかは解らない。広告に関する費用対効果を検討した結果、広告を打たないという選択をしたのかもしれない。

 そうすると、膨大な購買履歴情報は宝の持ち腐れとなってしまう。そこで、ユーザ向けに広告を配信するというBtoCビジネスの代わりに、加盟店に対して購買履歴情報に基づく最適な製品ミックスなどをコンサルティング提案するというBtoBビジネスを展開することが考えられる。しかし、基本的にクレジットカード会社や共通ポイントカード運営会社のビジネスモデルは”薄利多売”型であり、そのような手の込んだサービスに手を出すかは疑問である。

小寺昇二『実践スポーツビジネスマネジメント―劇的に収益力を高めるターンアラウンドモデル』―ロッテさん、そろそろレギュラーシーズン勝率1位での優勝を!


実践スポーツビジネスマネジメント―劇的に収益力を高めるターンアラウンドモデル実践スポーツビジネスマネジメント―劇的に収益力を高めるターンアラウンドモデル
小寺 昇二

日本経済新聞出版社 2009-03-05

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 著者の小寺昇二氏は、千葉ロッテマリーンズ(以下、マリーンズ)で2005年からターンアラウンド(事業再生)に関わった人物であり、その事例がケーススタディとして本書の随所で紹介されている。小寺氏によると、マリーンズのターンアラウンドを実行するにあたり、3回に分けて人材を採用したという。

 ①2005年上旬のコア人材の採用。
 ②2005年開幕前のエンターテインメント、プロモーション系人材の採用。
 ③2005年下旬の事業開発型マネジメント人材の採用。

 小寺氏が採用されたのは③であり、事業開発にあたっては「指定管理者制度」を受注したことが大きかったと述べられている。マリーンズの本拠地である千葉マリンスタジアムは、土地は千葉県、スタジアムは千葉市の所有というねじれ構造になっていた上、スタジアムの運営管理は千葉市と地元財界による第三セクター「株式会社千葉マリンスタジアム」が受託していた。マリーンズと千葉市、スタジアム会社との間で結ばれていた契約は、以下のような不平等条約であった。

 ・ゲームにおけるスタジアムの使用料はかなり高く、入場料収入の大半がスタジアム会社に持っていかれる勘定となっていた。
 ・スタジアム内の飲食テナントに対する使用料は全てスタジアム会社に帰属し、マリーンズには一切入ってこなかった。
 ・スタジアムのグッズショップの運営はスタジアム会社であり、やはりショップからの売上は一切マリーンズに入ってこなかった。
 ・スタジアム内の広告看板収入は、基本的にスタジアム会社と千葉市に渡り、ごく一部だけがマリーンズに還元されることになっていた。

 球団の収入は、チケット収入、放映権収入の他に、スポンサー収入(企業からの広告収入が中心)、スタジアム内の飲食テナント収入、グッズ収入などから構成されることを踏まえると、マリーンズはかなり不利な立場に置かれていたことになる。指定管理者制度を受託したことでこの不平等条約が見直され、マリーンズの収益源が多角化されたことは、マリーンズの業績を大きく押し上げた。

 それにしても、この第三セクターは、第三セクターとしては珍しく黒字を出していたから、よくマリーンズが指定管理者制度を受託することを容認したものだと思う。本書では、「指定管理者制度の受託がなければ収益性は改善せず、マリーンズは千葉にとどまることができない」と自治体などのステークホルダーを説得したとあるが、この辺りの交渉劇がもう少し詳しく明らかにされているとよかった。

 ブログ本館の記事「『一橋ビジネスレビュー』2018年SPR.65巻4号『次世代産業としての航空機産業』―「製品・サービスの4分類」修正版(ただし、まだ仮説に穴あり)」で紹介したマトリクス図に従うと、スポーツは「必需品でない&製品・サービスの欠陥が顧客の生命(BtoCの場合)・事業(BtoBの場合)に与えるリスクが小さい」という<象限③>に属する。以前の記事「DHBR2017年9月号『燃え尽きない働き方』―スノーピーク社の戦略について」でも書いたように、<象限③>においては、イノベーターが製品・サービスのコンセプトを徹底的に貫徹するために、できるだけ自前主義をとる。外部の企業を使う場合も、その企業に対して強いパワーを発揮する(Appleを思い浮かべると解りやすい)。

 マリーンズは指定管理者制度の受託によって、スタジアム内の飲食テナントに対して強いパワーを発揮することが可能になった。テナントには、マリーンズのコンセプトに沿ったサービスを提供するよう要請し、業績が上がらないテナント、コンセプトに従わないテナントには退去してもらった。また、グッズの企画・販売の主導権を握ることで、マリーンズのコンセプトをより反映させやすくなった。

 ここで、「マリーンズのコンセプト」とは何かが問題になる。実は、前述の通り、小寺氏が採用されたのが③の時期にあたるため、コンセプト作りがどのようになされたのかについての記述がやや弱い印象を受けた。コンセプト作りは①の段階で行れたものと思われるが、コンセプトも含めて、マリーンズの経営理念、戦略、ビジネスモデルがどのようにして形になっていったのかをもっと知りたかった。また、②の採用を行った後、2005年のマリーンズは立て続けに様々なプロモーションやエンターテインメント企画を実施しているが(リストで4ページ以上に上る)、これらの企画がマリーンズのコンセプトからどのようにして導かれたものであるかについても、もう少し記述がほしかったところである。

 マリーンズのコンセプトの1つとして本書で挙げられているのは、「勝っても負けても楽しいスタジアム」というものである。球団としては、チームが勝利するよりも会社として利益が残る方が重要だから、どうしてもフィールドサイドがビジネスサイドよりも劣位に置かれる傾向がある。だが、ファンとしては、チームが勝つところを見たいものである。意地悪な見方をすれば、先ほどのコンセプトによって、マリーンズは端から優勝を諦めているのではないかと感じてしまう。

 ロッテは2005年に優勝しているが、これはプレーオフ制度のおかげであり、レギュラーシーズンの勝率は2位であった。レギュラーシーズンの勝率1位での優勝となると、1974年のロッテオリオンズ時代にまで遡らなければならない。フィールドサイドとビジネスサイドを対立させるのではなく、マリーンズには是非、「勝ちながら利益を上げる」経営を追求してほしいと思う(他の11球団にも共通)。

アンドリュー・ジンバリスト『60億を投資できるMLBのからくり』についての本ではない


60億を投資できるMLBのからくり60億を投資できるMLBのからくり
アンドリュー ジンバリスト Andrew Zimbalist

ベースボールマガジン社 2007-03

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 現中日の松坂大輔が2006年オフにボストン・レッドソックスに移籍したのを受けて出版された書籍であるため、本の帯には「松坂大輔に投じた『60億』の大金はどこから調達したのか?MLBのビジネスモデルを徹底分析した本書にその答えはある」とあるが、残念ながら直接的な回答はこの本には書かれていない。

 本書の断片的な情報をつなぎ合わせて先ほどの回答に間接的に回答するならば、次のようになる。まず、MLBの各チームのオーナーは、チームだけでなく、ローカルメディアを始めとして野球関連ビジネスを多数保有している。その中にはスタジアム運営会社、不動産会社、コンサルティング会社、金融会社、輸送会社などが含まれる。そして、ローカルメディアは自チームの試合の放映を通じて多額の収入を得ている。本書に書かれているように、MLBは反トラスト法の免除措置を受けているため、放送に関しても排他的テリトリーを設定できる(つまり、敵チームの地元メディアはその試合を放送できない)。さらに、近年のアメリカにおけるケーブルテレビへの移行が、ローカルメディアの収入を大きく押し上げた。

 オーナーは、チームを彼らの投資ポートフォリオの一部として扱う。チーム自体はプロフィットセンターではなく、オーナーの他の投資の価値向上の手段として運営される。例えば、スタジアム周辺に商業・住宅施設を開発したり、スタジアムがある地域の不動産価格を上昇させたりする。これらの恩恵を受けるのは、ポートフォリオを構成する不動産会社などである。こうしたグループ内の相乗効果は年間数千万ドルに上ると推計される(本書では各チームの財務分析が詳細に行われていたが、オーナーが保有するビジネス全体となると、各社の関係性が複雑であるがゆえ、著者の力をもってしても実態を明らかにするのは難しかったようだ)。松坂に投じられた60億円は、ここから捻出されたと考えられる。

 本書の主眼は、MLBが反トラスト法の免除措置を受けているという特権的地位を利用して、選手のチーム間の移籍を制限したり、年俸を安く抑えようとしたりしてきたのに対し、選手会がどのように交渉してきたのか、その歴史を克明に記録することにある。また、MLBは独占的立場にあるから、経済学の理論に従えば超過利潤(レント)の恩恵にあずかっているはずなのに、各チームの財務諸表を操作して(前述の通り、オーナーは多数の企業を保有しているため、本来チームに帰属すべき売上を他の企業につけ替えたり、他の企業が負担すべき費用をチームの会計に計上したりしている)、「MLBは大赤字で貧乏だ」と触れ回り、「連邦政府や州政府が補助金を出してくれなければスタジアムが建設できない」などと言って公的資金を引き出していたことも暴露されている。

 現在、MLBではメジャーリーグ、マイナーリーグともに、チームが自由に参入することができない。著者は、MLBの反トラスト法の免除措置を止めてチーム間で自由に競争をさせれば、チーム間の戦力格差が是正され、毎年優勝を争うチームが入れ替わって、リーグ全体が盛り上がると考えているようだ。

 確かに、何年も優勝を続けるチームは、短期的に見ればチームの収益を押し上げるが、長い目で見れば選手の年俸の高騰に悩まされるようになり、高年俸の選手を手放さなければならなくなる。また、何年も実力のある高年俸の選手に頼ってきたため、若手が育っていない。だから、高年俸の選手を失った途端、一気に弱小チームに転落する。その一方で、若手を着実に育成してきたチームが今度は優勝争いをし、常勝軍団の仲間入りをする。しかし、そのチームもやがては選手の年俸高騰という問題を抱えるようになる。この繰り返しで、常勝軍団が定期的に入れ替わるということは、頭の中では十分に成り立つことだ。

 ブログ本館の記事「『一橋ビジネスレビュー』2018年SPR.65巻4号『次世代産業としての航空機産業』―「製品・サービスの4分類」修正版(ただし、まだ仮説に穴あり)」で紹介したマトリクス図において、スポーツは「必需品でない&製品・サービスの欠陥が顧客の生命(BtoCの場合)・事業(BtoBの場合)に与えるリスクが小さい」という<象限③>に該当すると考えている。<象限③>のイノベーションは多産多死の世界だが、勝つ確率が高いのは、資金力がありプロモーションや人材に惜しみなく投資できる企業である。さらに、長期的に存続する可能性があるのは、無数のイノベーションを束ねるプラットフォーム企業である(Amazon、Google、Facebook、Appleなどが該当する)。これをスポーツにあてはめると、リーグがプラットフォームで、各チームがイノベーターととらえることができる。

 本書では、イギリスのプレミアリーグに言及している部分がある。プレミアリーグ自体は30チームに固定されているが、下位リーグには誰でも自由にチームを作って参入することができる。つまり、著者の言う自由競争が実現されている。では、定期的に常勝軍団が入れ替わっているかというと、そうではない。

 プレミアリーグが始まった1992-93シーズン以降の優勝チームは、マンチェスター・ユナイテッド(マンU)を始め6チームしかなく、しかもマンUが断トツの優勝回数を誇る。マンUが強いのは、ひとえに多角化ビジネスが成長をしており、優秀な選手に惜しみなく投資ができるからだ。30シーズン経って30チーム中6チームしか優勝経験がないというのは、日本のプロ野球の感覚に慣れている私などからすると異常である。ほとんどマンUしか優勝しないリーグのどこが面白いのかと素朴な疑問が生じるのだが、こればかりはイギリス人に聞いてみないと解らない。

 MLBでは戦力バランスを保つために、「収益分配制度」と「ぜいたく税」が導入されている。収益分配制度は、各チームの純収入(総収入から球場経費を除いた額)に34%課税し、課税額の全てを全チームに均等分配する「ストレート・プール方式」と、収入の高いチームに課税し、一定のルールに基づいて収入の低いチームに再分配する「スプリット・プール方式」から成り立っている。ぜいたく税とは、球団側が選手に支払う年俸総額が一定額を超えた場合、超過分に課徴金を課すものである。4年間に一定額を超えた回数に応じて税率が引き上げられ、2013年からは最大で50%の税率が課されることになった。

 だが、本書によれば、収益分配制度は戦力バランスを保つのにあまり貢献していないようだ。というのも、ポストシーズンへの進出の見込みが薄くなったチームは、わざと選手年俸を下げるからである。MLBでは年俸総額とチームの成績に一定の相関があり、選手年俸を下げたチームの成績は悪化する可能性が高くなる。すると、弱いチームの試合を観に行くファンが減るから、チームの業績も下降する。その結果、収益分配制度によって多額の収益を得られるのだが、そのお金はオーナーのポケットに入ってしまい、選手への投資に使われない。

 一方、近年はFA選手の年俸が高騰しており、優秀な選手が資金力のあるチームに集中する傾向がある。ぜいたく税を払ったとしても、冒頭で述べたオーナーの多角化ビジネス全体から見れば微々たる額である。それに、各チームは独占の恩恵もプラスアルファで受けていることも踏まえれば、オーナーにとってはぜいたく税など痛くもかゆくもない。こうして、両方の制度があるにもかかわらず、戦力格差はむしろ広がっている。桑田真澄氏が早稲田大学大学院で「野球道」の研究を行った時の指導教官である平田竹男教授によれば、「MLBは共産主義的」なのだが(桑田真澄、平田竹男『新・野球を学問する』〔新潮社、2013年〕)、それにもかかわらずMLBでは戦力格差が拡大するという珍現象が起きている。

新・野球を学問する (新潮文庫)新・野球を学問する (新潮文庫)
桑田 真澄 平田 竹男

新潮社 2013-02-28

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経団連事業サービス人事賃金センター『本気の「脱年功」人事賃金制度―職務給・役割給・職能給の再構築』―人事制度は論理的に設計すればするほど社員の納得感が下がる


本気の「脱年功」人事賃金制度―職務給・役割給・職能給の再構築本気の「脱年功」人事賃金制度―職務給・役割給・職能給の再構築
経団連事業サービス人事賃金センター

経団連出版 2017-10-02

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 職務等級制度、役割等級制度、職能資格制度に関する1冊である。ただし、本書でも述べられている通り、職能資格制度は年功的に運用されることが多いというデメリットがあるため、本書の中心は職務等級制度と役割等級制度であり、とりわけ職務等級制度にウェイトが置かれている。

 職務等級制度を導入するには、大前提として事業戦略が明確であることが重要となる。その前提に立って、まずは職務分析を行う。事業戦略を遂行するために必要となる企業内の全ての業務を漏れなく洗い出し、求められる成果の大きさや質、遵守すべきプロセス、外的な制約条件、肉体的・心理的負荷の程度、必要な能力要件などを分析する。それを踏まえて、その業務の総合的な難易度をスコア化する。例えば、営業部門で既存の大企業顧客に製品の継続購入を促す営業担当者の業務は198点、人事部門で新しい人事制度の導入を行うプロジェクトリーダーの業務は243点といった具合だ(点数は私が適当に決めたもの)。

 全ての業務のスコアが判明したら、職務等級を決定する。本書では、等級の決定方法として、等差級数法、等比級数法、等級差等差級数法の3種類が紹介されている。本書の例を使うと、100~145点は1級、146~191点は2級、192~237点は3級、238点以上は4級などと決めることになる。そして、全ての業務がどの等級に該当するかを判定する。先ほどの営業担当者は職務等級3級、人事部門のプロジェクトリーダーは職務等級4級にあたる。

 職務等級が定まったら、今度は給与を決定する。職務等級制度においては、給与は職務給と貢献給(業績給)から構成される。職務給は等級ごとにその等級の難易度を考慮して決める。貢献給は、再び本書の例を使うと、5等級の場合、業績ランクがEならば1万円、Dならば2万円、Cならば3万円、Bならば4万円、Aならば5万円、それよりも難易度が高い6等級の場合、業績ランクがEならば1万円、Dならば3万円、Cならば5万円、Bならば7万円、Aならば9万円などと設定する。最後に、新しい事業戦略に従ってそれぞれの職務に人材を配置し、計画通りの売上高が上がった場合、必要な人件費を支払えるかどうかを検証する。

 職務等級制度は事業戦略に人事制度を従わせており、最も論理的に設計された人事制度と言える。ところが、こと人事制度に関しては、論理的に設計すればするほど、社員の納得感が下がるというパラドクスが生じるように思える。まず、職務の難易度を決める際に、本当に客観的な基準で難易度を決定できるのかという嫌疑が生じる。基準を明文化したとしても、ある特定の業務について、Aさんは○○と解釈して難易度が低いと判断する一方、Bさんは△△と解釈して難易度が高いと判断する可能性がある。それを防ぐために基準を厳密かつ丁寧に記述すると、それらの文言をめぐってさらに多様な見方を生んでしまう。

 等級を決める際に、等差級数法、等比級数法、等級差等差級数法のうち、どれを採用するかも大きな問題である。どの方法を採るかによって等級間のスコアの幅が異なり、それが職務給の違いとなって表れるからだ。3種類の方法のうち、自社ではどの方法を使うことにしたのか、社員に対して納得感のある説明ができる人事部門は果たしてどのくらい存在するだろうか?

 貢献給の決め方も前述のようなやり方でよいのかという疑問が生じる。前述の方法だと、職能資格制度において、特定の職能内で号俸が上がるのと大差ないのではないかと感じてしまう。貢献給は業績の配分であるから、一定のルールに従って企業の業績を社員に配分しなければならない。ただ、この配分ルールが曲者である。私は旧ブログやブログ本館で、納得感のある業績給の決定方法を色々と検討してみたが(例えば、イノベーションに失敗した人の業績給をどうするか、マネジャーの業績給をどうするか、など)、結局、成果には短期のものもあれば長期のものもあり、また失敗した(損失を出した)仕事であっても自社にとって価値があるものがあることなどを踏まえると、単年度の業績を合理的に配分するルールを設定するのは不可能だという結論に至った。

 実は本書では、職務等級制度の給与は原則として「職務給+貢献給」で決まるとしながら、職務のタイプによってさらに細かい給与設定の方法が提案されている。まず、定型的職務に関しては、「職務給+習熟給(もしくは習熟ランク給)」としている。習熟給とは、定型業務に慣れて業務スピードや業務品質が上がるにつれて追加される給与のことである。

 習熟給については、賃金テーブルを使うのが通常だが、習熟給の範囲だけを示した昇給表(本書の例を使うと、3級は職務給23万円、習熟給0~9万円とする、など)や、金額の代わりに指数による昇給表(本書の例を使うと、3級で人事考課がSの場合は200、Aの場合は150、Bの場合は130、Cの場合は50、Dの場合は0とし、今期は100=500円とすることで、人事考課がSの場合は1,000円、Aの場合は750円、Bの場合は650円、Cの場合は50円、Dの場合は0円とする、など)を用いることで、企業の業績に応じて習熟給を柔軟に調整できるとしている。

 一方、非定型的職務のうち、その職務に就いたばかりで、担当者の職能の伸長に応じて課業配分の一部分が変わる職務の場合は「職能給(範囲型)」、職能が一定レベルに達し自己裁量で職務を遂行できる職務の場合は「上限職能給+貢献給」、人事部長、製造課長などの管理職や営業職、研究開発職、ソフト開発技術者など、経営目標達成のため役割や職責があらかじめ設定されている職務の場合は「職務給(役割給)+貢献給」がよいとされている。

 論理的に考えるとそうなのかもしれないが、通常の社員は、まずは定型的職務から始まって徐々に非定型的職務へと移行し、さらにマネジャーに昇進するというキャリアパスを想定すると、最初は職務給で、途中から職能給に代わり、マネジャーになると再び職務給に戻るという複雑な経路をたどることになる。この給与体系に納得できる社員がどれほどいるか私には疑問である。また、キャリアパスの途中から貢献給が加わることになるが、なぜか貢献給に関しては、習熟給のように企業の業績に応じて柔軟に調整する方法が述べられていない点も不自然に感じた。貢献給こそ、業績に応じた調整が必要なのではないだろうか?(もっとも、私自身は前述のように業績配分ルールの設定を諦めているわけだが)。

 最大の矛盾は、本書の前半で、定型課業で構成される職位従事者は能力考課を行い業績考課は行わない反面、非定型課業で構成される職位従事者は能力考課を行わず業績考課を行うと書かれている点である。これは、定型的職務には「職務給」を、非定型的職務の大半には「職能給」を支払うとする先の記述と矛盾する。定型的職務には「職能給」を、非定型的職務には「職務給+貢献給」を支払うとしなければおかしい。このように、本書は人事制度をきめ細かく設計しようとしているが、細部を詰めすぎるあまり途中でボロが出てしまい、残念ながら社員にとって納得感のある制度にはなっていないように感じる。

 私は、人事制度で最も大切なのは「公正さ」よりも「解りやすさ」だと思う。公正さを追求して厳密な制度にしようとすると、本書のように途中で矛盾が生じ、かえって公正さが損なわれてしまう。多少不公平感が残ったとしても、簡便な制度にすることの方を優先した方がよい。その点、日本の年功制は最も優れた制度であると私は考えている。事実、本書にも次のように書かれた箇所がある。
 年齢や勤続年数という基準は、人事考課結果とは異なり、だれもが文句をつけようのない客観的な物差しであり、ある意味きわめてわかりやすい。
 この年功制をベースとしたシンプルな賃金制度について、近日ブログ本館で私案を提示する予定である。

 《2018年6月15日追記》
 ブログ本館に私案をアップしました。
 比較的シンプルな人事制度(年功制賃金制度)を考えてみた

佐藤厚『ホワイトカラーの世界―仕事とキャリアのスペクトラム』―PDCAサイクルからGDSA(Goal⇒Do⇒Support⇒Assess)サイクルへ


ホワイトカラーの世界―仕事とキャリアのスペクトラム (日本労働研究機構研究双書)ホワイトカラーの世界―仕事とキャリアのスペクトラム (日本労働研究機構研究双書)
佐藤 厚

日本労働研究機構 2001-03-01

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 ホワイトカラーの仕事の実態とキャリアを調査した1冊。タイトルに「スペクトラム」という言葉が入っているように、ホワイトカラーの仕事の多様性に着目している。だが、この本も章によって使われるフレームワークが変更されるため、非常に理解しにくい1冊であった(以前の記事「清家彰敏『顧客組織化のビジネスモデル―小規模事業集団の経営』―「『顧客を組織化する』とはこういうことではないか?」という4形態」でも似たような問題を指摘した)。著者に言わせれば、ホワイトカラーは多様なのだから、分析するフレームワークも多様であってしかるべきだということなのだろう。だが、多様性をありのままに記述するのはジャーナリストの仕事であって、研究者の仕事とは、多様性の背後にある本質的な共通点を見出し、他のカテゴリーに援用可能なヒントを提供することではないかと思う。

 まず、著者はホワイトカラーを①管理職、②専門・技術職、③創造的事務職、④定型的事務職の4つに分類する。創造的事務職とは、主に人事や経営企画部門において、新しい分野(製品・サービス、業態など)を開拓する仕事、複数のテーマが与えられる仕事、プロジェクトチームなど動態的な組織で動く仕事、取引先や他の部署と連携を取る必要がある仕事などに従事する事務職のことを指している。専門・技術職は、異動はするもののキャリアの初期段階から特定の職種に就くことが多いのに対し、創造的事務職は他の職種を経験する異動を繰り返しながら、ある時期から特定の職種に絞られることが多いと指摘されている。

 本書では、専門・技術職として、テレビ局番組制作業務や新聞記者の事例が取り上げられている点が興味深い(ちなみに、以前の記事「川喜多喬、小玉小百合『実証研究 優れた人材のキャリア形成とその支援』―私は修羅場を乗り越えられなかった経験を活かして顧客企業の心に寄り添えるコンサルタントになりたい」で取り上げた書籍では、デザイナーやアナウンサーのキャリアが研究されていた)。創造的事務職に関しては、大企業事務系ホワイトカラーと自動車ディーラーの営業職の比較がなされている。終盤では、中小企業にフォーカスを当て、主にサービス業のホワイトカラーに関する考察を行っている。

 ここからが私の問題意識。まず、ホワイトカラーを前述のように4タイプに分けておきながら、実は管理職と定型的事務職については研究結果が一切記載されていない。この点で、「スペクトラム」はかなりの片手落ちになっていると言わざるを得ない。私なりにホワイトカラーを分類すると図1のようになる。

 ○図1
ホワイトカラーの4分類

 「創造性を発揮する余地が大きいか否か?」と「管理職か否か?」という2つの軸でマトリクスを作り、4つのタイプに分類している。<象限①>は非管理職であり創造性を発揮する余地が小さい仕事に就いている人であるから、本書で言うところの定型的事務職に該当する。<象限②>は創造性を発揮する余地が大きい非管理職であり、本書で言うところの創造的事務職にあたる。

 <象限③>は創造性を発揮する余地が小さい管理職を指している。<象限③>はさらに、部下が創造的な仕事をしているか否かによって2つのタイプに分けることができる。上司も部下も定型的な業務を行っているケースは解りやすい。上司は定型的な業務を行っているが、部下は創造的な業務を行っている例としては、IT導入プロジェクトなどにおいて、管理職がプロジェクトマネジメントの定型業務を担当しているようなケースが考えられる。

 <象限④>は創造性を発揮する余地が大きい管理職であり、これもまた、部下が創造的な仕事をしているか否かによって2つに分かれる。上司も部下も創造的な業務を行っているケースは解りやすい。上司は創造的な業務を行っているが、部下は定型的な業務を行っている例としては、人事部長が人材戦略を立案し採用計画を立てて、部下がその計画に従って採用業務を行うケースがある。

 本書ではホワイトカラーのキャリアの分析にあたって、異動や転職の回数に着目している。前述の通り、創造的事務職は他の職種を経験する異動を繰り返しながら、ある時期から特定の職種に絞られることが多い。確かに、大企業事務系ホワイトカラーを分析した章ではこの点が確認されている。一方、自動車ディーラーの営業職を分析した章では、「人材調達が内部労働市場によるか外部労働市場によるか?」、「異動が多いか否か?」という2軸からなるマトリクスが新たに登場し、ディーラーの営業職は内部労働市場によって調達されるが、異動が少ないという結果が導かれている。これは先ほどの創造的事務職の特徴と矛盾する。

 終盤の中小サービス業のホワイトカラーの章では、「転職回数が多いか否か?」という軸に加えて、新たに「資格を保有しているか否か?」という軸が登場し、また新しいマトリクスが作成される。だが、中小企業についてのみ資格の有無を問題にする理由が不明であり、この点が本書の理解を難しくしている。

 ○図2
外的キャリアを見る視点

 私なら図2のように、「異動が多いか否か?」、「職種変更が多いか否か?」、「転職が多いか否か?」という3軸で8パターンのキャリアを想定し、図1のホワイトカラーの4タイプ(厳密には6タイプ)のそれぞれについて、どのようなキャリアのパターンが多いのかをあぶり出そうとするだろう。そして、例えば<象限②>の創造的事務職の中に複数のキャリアのパターンが認められる場合には、図1を修正して、ホワイトカラーのカテゴライズを見直すと思う。

 本書には管理職についての分析がないものの、著者は、ホワイトカラーの時間管理が弾力化されるに従って、管理職の役割はいよいよ重要になると主張している。今年の国会では「働き方改革」と銘打って裁量労働制の適用拡大が試みられたが、私は裁量労働制を導入したからと言って時間管理をしなくてもよいという考え方には反対である。管理職の仕事の1つは、部下の仕事の生産性をチェックすることである。そして、ホワイトカラーの生産性は、「アウトプット÷労働時間」で算出される。裁量労働制の導入で時間管理をしないということは、管理職はマネジメント業務を放棄したに等しい。これは明らかに愚策である。

 管理職の仕事に関してもう1つ言うならば、部下の裁量が大きくなるに従って、伝統的なPDCAサイクルを見直す必要があるということである。従来は上司が詳細な計画を立て(Plan)、それを部下が忠実に実行する(Do)ように要求していた。そして、部下の仕事に問題がないかを確認し(Check)、改善が必要な場合は必要な措置を取る(Action)というのが今までのPDCAサイクルであった。

 だが、部下の裁量が大きくなると、管理職が詳細な計画を示すことは難しくなる。管理職が部下に示すことができるのは目標(Goal)にとどまる。その目標をどのように達成するかは部下の裁量に委ねられる(Do。もちろん、企業として守るべきルールや価値観、行動規範には従わなければならない)。計画の詳細を知っている管理職ならば、部下が計画から逸脱した場合には即座にチェックを入れることができた。だが、部下に大きな裁量がある場合、管理職にできるのは部下の目標達成を支援(Support)することである。ドラッカー流に言えば、「あなたが目標を達成する上で、管理職である私に何かできることはないか?/管理職である私が阻害要因になっていることはないか?」と部下に尋ねることである。

 部下が仕事を完了したら、管理職は部下の仕事を評価(Assess)する。Assessとは価値を評価するという意味である。部下の仕事の価値、自社にとっての意義を評価するとともに、部下本人の人材価値を評価する。具体的には、部下がどんな能力を伸ばすことができたか、一方でまだ課題がある能力は何かといった点をめぐって、管理職と部下が対話を行う。このように見ていくと、従来のPDCAサイクルは、GDSA(Goal⇒Do⇒Support⇒Assess)へと修正されるだろう。

 最後にもう1点。本書では異動や転職に注目しており、キャリアの外的側面にフォーカスしていると言える。だが、キャリアには内的側面もある。そして、通常、キャリア開発と言う場合には、組織の視点に立った外的キャリアよりも、個人の視点に立った内的キャリアの方が重要な意味を持つ。なぜならば、結局のところ、キャリアとは働く個人本人の心理的課題であるからだ。内的キャリアを定義することは非常に難しいが、私なりに暫定的に定義すると次のようになる。
 まず、一見バラバラに見える、仕事を中心とした過去の様々な経験について、上司、同僚、部下、その他企業や組織の関係者、さらには友人、家族など多様な人物を登場させつつ、自分なりに意味づけをすることによって筋の通った1つの物語を編纂し、自分は何者なのか(自分はどんな価値観を大切にしているのか、自分には何ができるのか、自分は何をしたいのか)という自己認識を持つこと。

 その上で、企業や組織を取り巻く環境の変化を把握し、周囲から中期的に期待されている役割を理解するとともに、個人的な問題や家族の問題との葛藤が生じた時、そこに自己認識の物語を照射し、納得のいく意思決定を下して、仕事を中心とする人生の中期的なビジョンを構想すること。
 「ホワイトカラーがどのようにして内的キャリアを開発しているのか?」といった点が、今後の重要な研究課題になると思われる。
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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、2,000字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
所属組織など
◆個人事務所
 「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ

(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)
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