こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント)のブログ別館。1,500字程度の読書記録の集まり。

アメリカ

『世界』2017年11月号『北朝鮮危機/誰のための働き方改革?』―朝日新聞が「ファクトチェック」をしているという愚、他


世界 2017年 11 月号 [雑誌]世界 2017年 11 月号 [雑誌]

岩波書店 2017-10-07

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 (1)特集1のタイトルが「北朝鮮危機―解決策は対話しかない」となっているのを見た時、これはおそらく中身がない特集だろうと推測したのだが、果たしてその予感は的中した。どの記事を読んでも、「アメリカ(もしくは日本)と北朝鮮が対話をすべきだ」ということ以上のことは書かれていなかった。「対話をすべきだ」と主張するからには、いつ、どこで、誰がどのようなチャネルを通じて北朝鮮の誰と会い、具体的にどんな話をするのか、という点にまで踏み込まなければ意味がない。そのようなことに一切触れずに、ただ単に対話が重要だと言うだけであれば、単身で北朝鮮に乗り込んでいったアントニオ猪木議員以下である。

 ロシア外相が「幼稚園の子どものけんか」と呼んだ米朝間の緊張について、対話の重要性を説くリベラルは、まるで日本が親のように振る舞って、暴れん坊の子どもをなだめることができると信じているらしい。だが、アメリカも北朝鮮も実際には子どもなどではない。むしろ暴力団の抗争に例える方が適切だろう。日本では、山口組が本部のある神戸市の住民に対してハロウィンイベントでお菓子を配るなど、住民の間に溶け込む努力をしている。しかし、いくら山口組が神戸市民と良好な関係を築いているからと言って、神戸市民が山口組と住吉会の抗争を対話で止めさせようとはしない。それと同様に、日本がアメリカと同盟関係にあるからと言って、米朝の間に入ってできることなど、残念ながら現実的にはない。

 神戸市民が山口組と住吉会の抗争に巻き込まれないように身を守るのと同様に、日本も北朝鮮からミサイルが飛んできた場合を想定した国民の防衛策を真剣に検討すべき段階に来ている。永世中立国のスイスに倣って、公共のあらゆる場に急ピッチで地下シェルターを作るのも一手であろう。

 (2)欧米では最近、「ファクトチェック」と呼ばれる活動が活発になっているそうだ。これは、政治家など公的な立場にある人間が発する言葉やネット上に流れる様々な情報について事実か否かを確認し、その結果を指摘する作業のことである。虚偽の情報を意図的に流すフェイクニュースがネット上にあふれる中で、それに対抗する手段として登場してきたものである(立岩陽一郎「フェイクニュースとの闘い―ファクトチェックの現在」)。

 思わず笑ってしまったのは、日本でファクトチェックに注力しているのが朝日新聞だということである。最初に記事を掲載したのは2016年10月24日で、同年9月29日の安倍総理の発言を検証している。安倍総理は「参議院選挙において街頭演説などで私は必ず必ず、平和安全法制についてお話をさせていただきました」と発言していた。だが、朝日新聞が確認した64か所の街頭演説のうち、「平和安全法制」という言葉を使ったのは20か所だったため、「誇張」と判定した。

 また、2017年1月に憲法改正について安倍総理が「どのような条文をどう変えていくかということについて、私の考えは述べていないはずであります」と発言した点について、過去の国会の議事録を検証して「誤り」と指摘している。議事録で確認したところ、憲法96条について「3分の1をちょっと超える国会議員が反対をすれば、指一本触れることができないということはおかしいだろうという常識であります。まずここから変えていくべきではないかというのが私の考え方だ」と答弁していたことが判明したというのがその理由である。

 吉田清治の妄言を信じて世界中に従軍慰安婦のフェイクニュースをまき散らし、日本国民の名誉を著しく傷つけた朝日新聞が、こんな枝葉末節なチェックをしているとは噴飯物である。朝日新聞は、他人の情報よりも、自社が発信する情報が事実かどうかを検証する社内体制をもっと強化すべきではないだろうか?

陳破空『米中激突―戦争か取引か』―台湾を独立させれば中国共産党は崩壊する


米中激突 戦争か取引か (文春新書)米中激突 戦争か取引か (文春新書)
陳 破空

文藝春秋 2017-07-20

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 さらに重要なポイントは、ここで言う「我々の」とは、「アメリカの『一つの中国』政策」という意味であり、「中国の『一つの中国』政策」ではない、という点である。言いかえれば、「一つの中国」政策について、北京には北京の、ワシントンにはワシントンの見解がそれぞれあり、2つは別物である、ということだ。

 北京の見解とは、「世界には一つの中国があるだけで、大陸と台湾は、共に一つの中国に属し、中華人民共和国政府こそが中国を代表する唯一の合法政府である」というもので、ワシントンの見解とは、「アメリカの『一つの中国』政策とは『米中間の3つのコミュニケ(上海コミュニケとも言われる、1972年2月のニクソン大統領の訪中に関する米中共同声明など)』、アメリカの『台湾関係法』、アメリカ議会の『台湾に対する6つの保証』などの法案に基づくもの」というものである。
 ブログ本館で、現代の大国であるアメリカ、ドイツ、中国、ロシアはいずれも二項対立的な発想で動くという特徴があると書いてきた。こうした伝統は、少なくとも「正」に対しては「反」が存在すると主張したヘーゲルにまで遡ることができる。私の二項対立論はまだ非常に軟弱なのだが、改めて整理すると次のようになる。

 今、A国とB国という2つの大国が二項対立的な関係にあるとする。実はA国とB国の国内も二項対立になっており、A国内には反B派(A国政府派)と親B派(A国反政府派)が、B国内には反A派(B国政府派)と親A派(B国反政府派)が存在する。最前線で観察できるのは、A国の反B派とB国の反A派の激しい対立である。だが、もう少し詳しく見ていくと、そこには複雑な関係がある。まず、A国の反B派はB国の親A派を、B国の反A派はA国の親B派を支援している。さらに、A国の親B派とB国の親A派は裏でつながっている。これによって、A国内の反B派と親B派、B国内の反A派と親A派も対立する。これが大国同士の二項対立の構造である。この構造の利点は、A国・B国ともに、国内の対立の処理に配慮せざるを得ず、両国が全面的に対立しなくても済むという点である。

 二項対立のもう1つの利点は、一方が誤りだと判明した場合、すぐさまもう一方が正として前面に出てくるということである。仮に、上記の例で、A国内の反B派が誤りであることが判明したとしよう。すると、反B派と親B派の立場が逆転する(親B派がA国政府派になり、反B派がA国反政府派になる)。そして、A国の動きに呼応して、B国でも同様の逆転が生じる。その結果、表面的にはA国の親B派とB国の親A派が手を結ぶようになる。しかし、両国は完全に同じ船に乗っているわけではない。依然としてA国内には反B派が、B国内には反A派がいる。A国の親B派はB国の反A派と、B国の親A派はA国の反B派と対立する。さらに、A国内では親B派と反B派が、B国内では親A派と反A派が対立する。

 日本人的発想に立つと、せっかくA国の親B派とB国の親A派が仲良くしているのだから、その関係を保てばよいのにと思うところだが、この複雑な関係にもメリットがある。それは、大国同士が完全に融合して、超大国が誕生するのを防ぐことができるということである。二項対立の関係にある大国は、右手で殴り合いながら左手で握手をしているようなものであり、状況に応じて殴る右手の方が強いか、握手をする左手の方が強いかという違いが生じるにすぎない。こうした関係を通じて、大国は勢力均衡を保っている。

 仮に、A国内で二項対立が消えたとしよう。A国は国全体が反B派になるか、親B派になる。つまり、A国が全体主義になったケースである。A国全体が反B派になった場合、A国はB国を潰しにかかる。親B派になった場合、A国はB国を吞み込もうとする。いずれにしても、A国の全体主義の目的は、B国を完全に消滅させることである。全体主義の場合、国内対立がもはや見られないため、B国に向かうエネルギーを抑制する要素がない。A国は全力でB国に向かってくる。

 全体主義は、人間の理性が完全無欠であることを前提としている(以前の記事「大井正、寺沢恒信『世界十五大哲学』―私の「全体主義」観は「ヘーゲル左派」に近いと解った」を参照)。だが、歴史が証明しているように、人間の理性が無謬であることはあり得ない。国の方向性が間違っていることに気づいた国民は、やがて国家に対して反旗を翻す。二項対立的な発想をしていれば、反対派を国内の二項対立の構造に押し込めて対処することもできるが、全体主義国にはそうした装置がない。したがって、全体主義国は反対派を抹殺するしかない。だが、国家による暴力は国民のさらなる反発を招き、やがては自壊に至る。

 前置きが長くなってしまったが、米中関係を二項対立の構図でとらえてみたいと思う。まず、中国は内部に中華人民共和国(=反米派)と台湾(=親米派)という二項対立を抱えている。一方のアメリカは、反中派(=親台湾派)と親中派(=反台湾派)という二項対立を抱えている。表面的にまず観察されるのは、中華人民共和国とアメリカの反中派の対立である。加えて、中華人民共和国はアメリカの親中派を支援し、アメリカの反中派は台湾を支援する。これによって、アメリカ国内の反中派と親中派、中国内の中華人民共和国と台湾の対立が激化する。

 中国の場合、中華人民共和国と台湾の関係が入れ替わることがないというのが難点だが、形式上は一応、大国同士の二項対立の構図に収まっている。中華人民共和国が共産党の一党独裁でありながら崩壊しないのは、逆説的だが台湾という対立項を内部に抱えているからだと私は考えている。

 だから、逆に言えば、中華人民共和国、正確には中国共産党を崩壊させようとするのであれば、アメリカは台湾を独立させてしまえばよい。そうすると中国は全体主義に陥る。中国は、中華人民共和国と台湾の関係が固定的であるため、国内で反乱分子が生じた際にそれを国内の二項対立の構図で処理する術を持たない(反乱分子を台湾に押し込めるわけにはいかない)。簡単に言えば、反乱分子の取り扱いに慣れていない。そのため、現時点で既に、年間約18万回の暴動が起き、約10万人の共産党関係者が逮捕・検挙され、約100万人の国民が取り締まりを受けているという。この国家が全体主義に陥った時、内乱が拡大し、自ずと崩壊の道をたどるであろう(ただし、崩壊するのは中国共産党であって、中国自体は二項対立的な発想に従って新たな国家を建設するに違いない)。

墓田桂『難民問題―イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題』―アメリカに責任を取らせよう


難民問題 - イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題 (中公新書)難民問題 - イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題 (中公新書)
墓田 桂

中央公論新社 2016-09-16

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 <難民の数(2015年末時点、上位10件)>
 ①シリア・・・4,850,792
 ②アフガニスタン・・・2,662,954
 ③ソマリア・・・1,123,022
 ④南スーダン・・・778,629
 ⑤スーダン・・・622,463
 ⑥コンゴ民主共和国・・・541,291
 ⑦中央アフリカ・・・471,104
 ⑧エリトリア・・・379,766
 ⑨ウクライナ・・・321,014
 ⑩ベトナム・・・313,155
 
 <国内避難民の数(2015年末時点、上位10件)>
 ①シリア・・・6,600,000
 ②コロンビア・・・6,270,000
 ③イラク・・・3,290,000
 ④スーダン・・・3,182,000
 ⑤イエメン・・・2,509,000
 ⑥ナイジェリア・・・2,096,000
 ⑦南スーダン・・・1,697,000
 ⑧ウクライナ・・・1,679,000
 ⑨コンゴ民主共和国・・・1,500,000
 ⑩パキスタン・・・1,459,000

 <難民の受け入れ数(2015年末時点、上位10件)>
 ①トルコ・・・2,541,352
 ②パキスタン・・・1,561,162
 ③レバノン・・・1,070,854
 ④イラン・・・979,437
 ⑤エチオピア・・・736,086
 ⑥ヨルダン・・・664,118
 ⑦ケニア・・・553,912
 ⑧ウガンダ・・・477,187
 ⑨コンゴ民主共和国・・・383,095
 ⑩チャド・・・369,540

 上記の数字は本書からの引用である。現在、世界には約1,548万人の難民、約4,080万人の国内避難民がいるそうだ。そのうち、最も高い割合を占めているのがシリアである。シリアの難民は4,850,792人(全体の31.3%)、国内避難民は約660万人(同16.2%)にも上る。

 シリアをはじめとする難民の多くは、地理的に近いEUに向かう。ドイツは比較的難民の受け入れに積極的である。というのも、伝統的に製造業に強みを持つドイツでは、日本と同じく少子高齢化の進展に伴い、工場で働く若手の現場作業員が不足している。難民は、労働力不足を解消するカギと見なされているわけだ。ドイツでは、難民を受け入れるための様々なプログラムが用意されている。難民に対してドイツ語教育を施すのはもちろんのこと、移住先の地域の歴史を理解するのに役立つ情報を積極的に発信したり、フェライン(日本で言うNPO)などが主催するイベントで文化交流を促進したりしている。

 ただし、EUでは難民受け入れをめぐって深刻な問題を生じているのは周知の通りだ。イギリスのEU離脱の理由の1つも難民問題であったし、ドイツにおいても難民排斥を訴える政党「ドイツのための政党(AfD:Alternative für Deutschland)」が台頭している。EUは、ヨーロッパ諸国が国家主権をEUという機構に預けて、「ヨーロッパ人」という新たなアイデンティティを確立する試みであった。ところが、ヨーロッパ人が確立されるどころか、難民の流入によってかえって各国のナショナリズムが刺激されてしまい、難民のナショナリズムとの衝突を引き起こしている。

 ドイツの取り組みを見ると、ナショナリズムの統合は、企業の合併のようにとらえられているように感じる。一般的に、企業が合併すると、PMI(Post Merger Integration)と言って、合併した企業同士のビジョンや価値観、組織風土を統合するための施策が実施される。ドイツが難民に対して行っているのも同じようなことである。言語を統一し、文化や歴史に対する理解を促し、価値観を浸透させれば、難民をドイツのナショナリズムに包摂することができると思われていた。

 しかし、ナショナリズムとは複雑な感情である。ナショナリズムとは、「民族、言語、歴史、伝統、文化、価値観、生活様式、風習など多くの面で共通点を持つ人々が自国を愛する感情である」と言えるだろう。しかし、実は言語や歴史、伝統や価値観などの背後にはさらに”何か”があって、それはおそらく人間の性格の大半が幼少期に形成されるのと同様に、幼少期の連続的な体験が大きく影響していると考えらえる。だから、PMIのように、単に文化統合プログラムを実施しただけでは、難民のナショナリズムを変更することはできないのである。

 ただ、そうは言っても現に難民は発生しているわけで、この問題を解決しなければならない。個人的には、アメリカがもっと積極的に責任を取るべきだと思う。

 というのも、シリア難民は、アサド政権の転覆を狙ってアメリカが介入し、アサド政権を支持するロシアと対立したことが原因である。アフガニスタンに関しては、同国に親米政権を樹立するためにタリバンを育成したが、やがてタリバンが反米に転じ、アルカーイダのウサーマ・ビン・ラーディンを生み出してしまった。アメリカはビン・ラーディンを殺害したものの、相変わらず頻発するテロとの戦いは継続しており、その結果、同国から大量の難民が発生している。南スーダンの混乱も、アメリカがスーダンから親米政権を独立させたことに起因する(中国の石油開発を妨害するのが狙いだったとも言われている)。

 EUの各国にしてみれば、アメリカのせいで大量に発生した難民をなぜ自国がケアしなければならないのかという憤りもあるに違いない。EUに流入した難民は、EU各国で分担して引き受けるのではなく、いっそアメリカに送りつけてはどうか?(もっとも、メキシコからの移民にさえ目くじらを立てているトランプ大統領がEUからの難民を受け入れる可能性は限りなく低いが・・・)。日本のメディアが難民問題をめぐってアメリカを批判しないのは、広告収入でビジネスが成立しているメディアが企業批判を控えるように圧力を受け、それ以上に政府批判をしないように政府から圧力を受け、さらにそれ以上に、日本を同盟で庇護しているアメリカを批判しないようにアメリカから圧力を受けているためではないかと勘繰ってしまう。

堤未果『アメリカから<自由>が消える【増補版】』―アメリカも中国も似たような監視社会


増補版 アメリカから<自由>が消える (扶桑社新書)増補版 アメリカから<自由>が消える (扶桑社新書)
堤 未果

扶桑社 2017-07-02

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 ・金融機関は顧客情報やクレジットカード情報を、通信事業者は通信情報を、医師は患者のカルテを、図書館の司書は利用者の貸し出し記録を、本屋は顧客の購買履歴を、といったように、国内の様々な機関や団体は政府から要請があった時はいつでも個人情報を提出しなければならない。

 ・政府は、テロ容疑者は戦争捕虜に関するジュネーブ条約の対象外であるとし、捕まえた容疑者のほとんどを海外に移送して拷問している。

 ・政府は従軍記者の取材に大幅な規制をかけ、戦争報道支配を開始している。メディアは、軍の許可を受けた情報以外は一切外に出すことができない。さらに、新聞社やテレビ局など組織への介入ではなく、ジャーナリスト個人が直接召喚されるケースも増えている。

 ・政府はインターネットの世界にも介入してくる。近年、政府を批判する記事を書いたブロガーが投獄される事件が増加している。運よく投獄を免れた場合でも、反政府的なHPには政府からアクセス制限がかけられる。

 ・政府や行政は、自らにとって都合のよい政策や法律を議会で通すために、大手広告代理店を利用してメディアで大々的にキャンペーンを展開する。政府や行政のみこしを担ぎ、反政府派を批判するコメンテーターや評論家は、広告代理店を通じて政府や行政から多額の報酬を得ている。

 これは中国の話ではない。アメリカで起きていることである。21世紀で最悪の法律と言われる『愛国者法』(日本の共謀罪のモデルとなった)をはじめ、ありとあらゆる法律を駆使して、アメリカ政府は国民を監視する。当初の目的はテロの防止であったが、だんだんと目的が拡大し、最近では反政府的な動きがないかどうか、国民の一挙手一投足まで細かく監視するようになっている。これはジョージ・オーウェルが小説『1984』で描いた監視社会とまるで同じである。

 私は書籍の大半をAmazonで購入している。ところが、ある人から「Amazonでは買い物をしない方がよい」と言われたことがある。Amazonは顧客の購買履歴を政府に提供しているというのだ。アメリカ政府は、外交の場において、各国の要人がどのような政治的思想の持ち主なのかを調べるために、Amazonの購買履歴を活用しているらしい。もっとも、私はアメリカの外交に関与するほど偉い人間ではないから、そんなことは気にしなくてもいいのだが・・・。

 ブログ本館の記事「マイケル・ピルズベリー『China 2049』―アメリカはわざと敵を作る天才かもしれない」で、かなりざっくりとだが下のような図を作ってみた。

4大国の特徴

 「アメリカ&ドイツ」VS「中国&ロシア」の対立は、冷戦構造の名残である。だが、この対立構造は最近複雑化している。まず、アメリカはEUの盟主であるドイツと覇権を争っている(アメリカによるフォルクスワーゲンの提訴はその一環だと思っている)。中国とロシアは旧共産圏の国であり、お互いを戦略的パートナーと見なしているものの、例えばウクライナ問題をめぐっては微妙に対立している。

 一方で、ドイツとロシアの接近も見られる。両国は第2次世界大戦で激しく戦火を交えたが、戦後は関係深化に努めてきた。現在、両国は経済的に深く結びついている。さらに、ロシアがウクライナ問題で国際社会から非難を受けた時には、ドイツのメルケル首相がロシアのプーチン大統領をロシア語でなだめるという一幕もあった(メルケル首相は旧東ドイツ出身なので、ロシア語も堪能である)。

 アメリカと中国の関係も複雑である。軍事面では対立を見せているものの、経済的には両者は切っても切れない関係にある。また、アメリカが旧ソ連に対抗し、旧ソ連と中国の関係の分断を図って中国に接近したという経緯もあり、アメリカと中国は完全な敵対関係とは言えない。そして、トランプ大統領という予測不可能な指導者が現れたことで、アメリカと中国が突然手を結んで日本のはしごを外す日が来るのではないかと私は内心恐れている(ブログ本館の記事「『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他」を参照)。

 本書で書かれているように、アメリカも中国のように全体主義化している。非常に安直な考えかもしれないが、似たもの同士がひょんなことでくっつく可能性はゼロではないと思う。事実、第2次世界大戦では、全体主義国であった日本、ドイツ、イタリアが同盟を組んだという歴史がある。

松岡完、広瀬佳一、竹中佳彦『冷戦史―その起源・展開・終焉と日本』―当初、アメリカは普遍的価値観の輸出に乗り気ではなかった?


冷戦史 -その起源・展開・終焉と日本-冷戦史 -その起源・展開・終焉と日本-
松岡 完 広瀬 佳一 竹中 佳彦

同文舘出版 2003-06-11

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 国外の冷戦と国内の冷戦を概観するには適した1冊。アメリカは自由、平等、法の支配、基本的人権、資本主義、民主主義といった普遍的価値を心の底から信じており、これらの価値を世界中で実現するために、時には他国の政治や経済システムにも介入するのだが、本書を読むと、冷戦当初はそれほど価値観の布教に熱心ではなかったのではないかと思うようになった。むしろ、ソ連の方が、社会主義・共産主義の革命を輸出することに躍起になっていたようである。

 第2次世界大戦終結直後、朝鮮半島では朝鮮戦争が勃発し、早くもアメリカ対ソ連の代理戦争の様相を呈した。ところが、当時のアメリカにとって、朝鮮半島はそれほど重要ではなかったという。アメリカにとっては、第2次世界大戦の主戦場となったヨーロッパでプレゼンスを発揮することが第一の命題であった(本書には明確に書かれていなかったが、第二の命題は、中東における石油の確保であっただろう)。アメリカは、ヨーロッパに関しては戦略的”攻撃”、アジアに関しては戦略的”防衛”というスタンスを取っていた。

 ソ連は周辺国に革命を輸出し、共産主義政権の樹立を支援したが、ソ連の強引なやり方に反対して反共的な政権を樹立しようとする動きもあった。これに関しても、アメリカはソ連の周囲に反共・親米的な政権ができることを嫌がっていたきらいがある。いくら戦争が公共事業であるアメリカといえども、世界中で小国同士の代理戦争が繰り広げられるような事態は避けたかったのかもしれない。

 潮目が変わったのは、アメリカが中国に接近してからだと思う。キッシンジャーの電撃訪中、さらにはアメリカと中国の国交樹立は日本中を仰天させたが(田中角栄は慌てて中国との国交を樹立した)、アメリカには泥沼化するベトナム戦争に関して、中国から何とか妥結案を引き出そうとしていた。一方の中国も、文化大革命が大失敗に終わり、経済が停滞し、海外からの直接投資が鈍っていた矢先であったから、アメリカからの支援の申し出は渡りに船であった。

 マイケル・ピルズベリーは著書『China 2049』の中で、「自分は弱い国なので助けてください」と低姿勢に出る中国に対して、バカ正直に様々な支援をしてしまい、結果的に中国を大国にしてしまったことを後悔している(ブログ本館の記事「マイケル・ピルズベリー『China 2049』―アメリカはわざと敵を作る天才かもしれない」)。だが、アメリカのインテリジェンスが中国の歴史を多少なりとも真面目に研究していれば、中国が心の奥底に覇権主義を秘めた大国候補であることは見抜けたはずである。二項対立的な発想をする世界の大国は、常に自分の対抗馬を必要としている。アメリカは、冷戦でソ連に勝利した後を見据えて、中国を新たな敵に仕立て上げようとしていたのではないかといのが私の仮説である。これ以降、アメリカはアジアへのコミットメントを強めていき、現在に至っている。

 最後に大国と小国の国際戦略について、現時点での私の考えを整理しておく。まず、大国であるが、前述の通り二項対立的な発想をするため、常に敵となる大国を必要としている。現代では、アメリカ&ドイツと、ロシア&中国が対立している。アメリカとロシアの対立に限って話を進めると、実は大国の内部も二項対立状態にある。つまり、アメリカ内部には多数派の反ロ派と少数派の親ロ派が、ロシア内部には多数派の反米派と少数派の親米派がいる。ここで、アメリカの親ロ派とロシアの親米派は裏で通じている。アメリカの親ロ派は反ロ派に対して、もっとロシア寄りになるように助言するが、反ロ派はそんな声には耳を貸さず、より一層反ロの姿勢を強める。同様にして、ロシアでは反米の姿勢が強まる。すると、アメリカとロシアは今まで以上に激しく対立するようになる。

 しかし、アメリカとロシアが本気で衝突したら壊滅的な被害が出ることは両国とも解っている。そこで、両大国は周辺の小国を自国の味方に引き込んでいく。その上で、アメリカとロシアの対立を、小国同士の代理戦争に転化させる。あるいは、小国の中に親米派と親ロ派を作り出し、両者を激突させる。中東で長らく続く混乱は、自分の手を直接汚したくない大国の狡猾な戦略の結果である。

 こうした大国の戦略に対して、小国はどのように振る舞うべきか?(私は日本も小国だと考える)まず、対立する大国の一方に過度に肩入れするのは絶対に避けるべきである。そんなことをすれば、早晩大国の代理戦争に巻き込まれる(近年、日本がアメリカ寄りの姿勢を強めているのは危険な兆候だと感じる)。

 小国は、対立する双方の大国から、自国の味方にならないかと様々なアプローチを受ける。その双方のいいところ取りをして、どちらの国の味方でも敵でもないという曖昧なポジションを作り出すのが得策である。ずる賢いと言われればそれまでだが、弱い小国が国際政治の乱気流を乗り切るにはこれしかない。私はこうした小国の戦略を「ちゃんぽん戦略」と呼んでいる(ブログ本館の記事「『トランプと日本/さようなら、三浦朱門先生(『正論』2017年4月号)』―米中とつかず離れずで「孤高の島国」を貫けるか?」を参照)。

 小国は他の小国に対してどのような態度を取るべきか?原則は、相手から求められない限りは動かない、ということである。他の小国は既に、対立する大国のどちらかに取り込まれている可能性がある。そういう小国に不用意に近づくと、大国の代理戦争に巻き込まれるリスクがある。小国は、他の小国から支援を求められた時に限って、必要な支援を行う。その際、支援先の小国も同じようにちゃんぽん戦略へと移行できるように働きかける。

 しばしば、日本は東洋と西洋の中間に位置する地政学的な位置を利用して、東洋と西洋の橋渡しを担うべきだという主張を見かける(以前、私もそう書いてしまった)。だが、地政学的に東洋と西洋のど真ん中にあるのは中東である。その中東の現状は悲惨である。橋渡しなどという夢物語を掲げるのはよくない。小国はまずは自国を守ることに注力し、周囲の小国からの求めがあれば、少しずつ大国同士の代理戦争の場を無効化していくのが望ましいのではないかと考える。
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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、1,500字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
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