こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント・トレーナー)のブログ別館。2,000字程度の読書記録の集まり。

イノベーション

中田善啓『ビジネスモデルのイノベーション―プラットフォーム戦略の展開』―自動車・建設・医療業界でマルチサイド・プラットフォームが登場したら面白い


ビジネスモデルのイノベーション―プラットフォーム戦略の展開ビジネスモデルのイノベーション―プラットフォーム戦略の展開
中田 善啓

同文舘出版 2009-12

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 この本は私が今年今までに読んだ約70冊の中で一番ひどかった。
 デジタル・コンバージェンスは、プラットフォームがフィーチャをバンドル化することによって、境界が徐々に消滅していくことをいう。
 「まさのChoiceがGoodだから僕は毎回Here we goしている」(水曜どうでしょう藩士にしか伝わらない)並みの文章である。カタカナは外来語を日本語に吸収する際の緩衝材である。よって、カタカナを連発する人というのは、そのカタカナを日本語に昇華することができていない人のことである。

 カタカナだけがひどいのかと思ったら、
 取引費用の節約による費用削減、ないしは探索費用の増大による多様性やアメニティの提供を通じて、消費者、部品・製品供給業者、販売業者の効用ないしは価値が増大するのである。
 日本語も万事こんな具合であり、全くもって意味不明である。本来、この手の駄本は滅多斬りにしてやりたいところだが(滅多斬りにした例が、ブログ本館の記事「土屋勉男、金山権、原田節雄、高橋義郎『革新的中小企業のグローバル経営―「差別化」と「標準化」の成長戦略』―共著と中小企業研究の悪癖が両方とも出た1冊」)、内容が理解できず斬ることもできないので、今回の記事では私が好きなことを好きなように書くことにする。

 一応、本書の内容に少しだけ触れておくと、プラットフォーム企業には3つのタイプがある。1つ目が「インテグレーター・プラットフォーム」であり、自動車が該当する。自動車メーカーは、系列参加の部品メーカーから供給されるそれぞれの部品を組み立てて統合(インテグレーション)するためのプラットフォームを持っている。部品メーカーは、プラットフォームが要求する仕様に合わせて部品を製造する。2つ目が「製品プラットフォーム」であり、インテルのMPUがその例である。インテルはPCという製品のコアを担っており、インテルのMPUの仕様、性能、スペックが他の部品の仕様、性能、スペックを拘束する。

 これは見方を変えると、インテグレーター・プラットフォームとは、製造のバリューチェーンの下流に位置するプレイヤーがプラットフォームを有する場合であり、製品プラットフォームとは、製造のバリューチェーンの上流に位置するプレイヤーがプラットフォームを有する場合と言える。それぞれのビジネスモデルについては、随分昔に旧ブログの記事「【第13回】プロセスを分解して特定プロセスに特化する―ビジネスモデル変革のパターン」、「【第18回】プロセスを分解して特定プロセスを独占する―ビジネスモデル変革のパターン」で触れたことがある。

 インテグレーター・プラットフォームが存在する業界では、製造の川下のプレイヤーが少なく、川上に行くほどプレイヤー数が増えていく。これに対して、製品プラットフォームが存在する業界では、製造の川上のプレイヤーが少なく、川下に行くほどプレイヤー数が多くなる。どの業界でもそうだが、製造バリューチェーンの各プロセスを見ると、そのプロセスを担うプレイヤーの数が相対的に多いプロセスと少ないプロセスに分かれる。プレイヤーの数が少ないプロセスにおいては、合従連衡が進んでプラットフォームが出現する可能性がある。

 ここで、なぜプラットフォーム企業は製造バリューチェーンの川上と川下でしか現れず、川中からはなかなか出現しないのか?という素朴な疑問が生じる。この問題は引き続き検討していきたいと思う。

 プラットフォーム企業の3つ目が「マルチサイド・プラットフォーム(MSP)」である。これは、自社に対する供給業者を顧客化することで、プラットフォームを介して2種類の顧客を持つ形態である。MSPは、両者の取引を媒介し、両方の顧客から料金を取る(実際には、ユーザ(=本来の意味での顧客)からは料金をほとんど取らず、供給業者からの料金が収益の柱であるケースが散見される)。

製品・サービスの4分類(①大まかな分類)

【修正版】製品・サービスの4分類(各象限の具体例)

製品・サービスの4分類(③具体的な企業)

 上図については、ブログ本館の記事「「製品・サービスの4分類」に関するさらなる修正案(大分完成に近づいたと思う)」、「『一橋ビジネスレビュー』2018年SPR.65巻4号『次世代産業としての航空機産業』―「製品・サービスの4分類」修正版(ただし、まだ仮説に穴あり)」をご参照いただきたい。

 MSPと最も親和性が高いのは<象限③>である。この象限は必需品ではなく、需要を一から創造しなければならないイノベーションの領域である。この領域には、世界中から一攫千金を狙って数多くのイノベーターが参入してくる。イノベーターは自分のイノベーションこそ最高と信じており、「自分がこれだけ惚れ込んでいるのだから、世界中の人々もきっと同じようにほしがるはずだ」と考えている。そして、世界中にイノベーションを普及させるためならば、自ら多少のお金を払ってもよいと思うようになる。こうしたイノベーターを束ねるのがMSPである。

 世界で最も企業価値が高い10社のうち5社、すなわちApple、Alphabet(Google)、Amazon、Facebook、Microsoftは、いずれもMSPである。5社とも巨大な顧客(ユーザ)基盤を資産としており、Appleは音楽やスマホアプリ、Googleは広告、スマホアプリや音楽、Amazonは書籍、音楽や映像コンテンツ、Facebookは広告、MicrosoftはPC上のソフトウェアの供給業者(イノベーター)を引きつける。そして、供給業者はMSPの顧客基盤にアクセスするために料金を支払うのである。GoogleのAndroid向けアプリを例にとると、開発者はまず、Googleに対して、プラットフォーム(開発環境)を利用するための料金を支払う。そして、自分が開発したアプリがプラットフォームを介してユーザに売れた場合には、料金の一部を手数料としてGoogleに支払う。MSPの場合、このように固定料金+変動料金という2階建ての料金体系を持っているのが普通である。

 (※)上図ではMicrosoftを<象限①>としているが、これは必需品としてのWindows搭載PCが事業の主力となっているためである。Microsoftが提供する開発環境で開発されたPC向けソフトウェアは、他の4社に比べると事業規模が小さい。よって、同社は<象限③>寄りというよりも<象限①>寄りである。

 料金の一部を手数料として支払うだけであれば代理店のビジネスモデルと変わらないのだが、MSPの場合は、プラットフォームに参加する時点で料金を払わなければならない点が大きく異なる。さらに、代理店の場合は、顧客に売れそうな製品・サービスを代理店があらかじめ厳選するのに対し、MSPは倫理的な基準を満たす製品・サービスであれば何でも歓迎する。MSPが取り揃えている製品・サービスの多様性が、顧客にとって魅力となる。何が顧客に売れそうなイノベーションなのかは、実はMSPも解っていない。だから、MSPは常にランキングを作成し、今世界で売れているイノベーションが何なのかを顧客に提示している。

 ただ、MSPも、蓄積されたデータを活用すれば、何がヒットするイノベーションの要件なのか解析することが可能であるような気もする。ブログ本館の記事「『未来を予測する技術(DHBR2017年1月号)』―予測が困難なのにデータ重視のアメリカ、予測が容易なのにデータ軽視の日本、他」でも書いたが、アメリカ企業は少ないデータからでも成功のモデルを導き出そうとする。例えば、映画がヒットするかどうかは、台本の内容や配役によってではなく、単に映画のタイトルで決まるという結論を得たりする(イアン・エアーズ『その数学が戦略を決める』〔文藝春秋、2007年〕より)。あるいは、世界中の人がそのイノベーションを受け入れるように、キリスト教を全世界に布教した方法に倣って(半ば強引な)プロモーションを展開し、消費者の嗜好を変えてしまうこともある。

 MSPはイノベーターに対して、イノベーションの成功要件に従って製品・サービス開発のコンサルティングをしたり、特定のイノベーターを集中的にプロモーションしたりするサービスを提供してもよさそうである。だが、これを行うと、イノベーションがどれも似たり寄ったりになってしまうリスクがある。また、特定のイノベーションに肩入れすることは、多種多様な製品・サービスを揃えるというMSPの本来の姿勢に反する可能性がある。MSPはこの点を恐れているのかもしれない。

 MSPは近年、<象限①>にも現れている。その筆頭がAmazonである。書籍からスタートした同社は、今や日用品、ファッション、食品、ベビー用品など<象限①>の製品も取り扱うようになっている。<象限①>は参入障壁が低く、競争が激しい。別の言い方をすれば、供給過多になりやすい。すると、供給業者の中には、多少のお金を払ってでも、自社の製品を販売したいと考える企業が出てくる。ここから先の展開は<象限③>の場合と同じである。

 ここでもう1つ、<象限②>ではMSPは登場しないのか?という疑問が生じる。MSPが登場するための要件は、1つのカテゴリの中の製品・サービスラインナップが非常に多いこと(例:iTunes、Google Play)、もしくは多数の製品・サービスカテゴリを取り揃えることが可能であること(例:Amazon)であるように思える。だが、自動車や建設、医療業界などは、他の業界に比べるとラインナップが少ない。それに、プラットフォーム上で自動車も住宅も医療サービスも購入しようとする顧客はまずいないだろう。こう考えると、<象限②>ではMSPの成立は難しいのかもしれない。ただ、仮にMSPが成り立つビジネスモデルを考えついたら、非常に魅力的な事業になると思う(私は3時間考えたところで諦めてしまった(早い))。

ダイアン・マルケイ『ギグ・エコノミー―人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方』―フリーランス中心の社会は理想とは思えない


ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方ギグ・エコノミー 人生100年時代を幸せに暮らす最強の働き方
ダイアン・マルケイ 門脇 弘典

日経BP社 2017-09-22

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 「ギグ・エコノミー」とは、終身雇用ではなく、”ギグ(単発の仕事)”を基盤とした新たな労働・経済形態のことである。具体的にはコンサルティングや業務請負、アルバイト、派遣労働、フリーランス、自営業、副業、オンラインプラットフォームを介したオンデマンド労働などが該当する。

 アメリカでは、上記のような非伝統的な働き方をしている労働者は2005年の10%から2015年には15.8%へと、ここ10年で1.5倍に増加している。また、事業経営や個人事業による自営業所得・損失の納税申告に用いられる書式を提出した個人の割合は、1980年には約8.5%だったのに対し、2014年には16%強とほぼ倍増している。アメリカでは、フルタイムの社員を雇用すると、独立請負人と比べて人件費が3~4割高くなる。このような状況の中で、社員を独立請負人に切り替える流れがあらゆる業種で加速しているという。

 物凄くかいつまんで言えば、フルタイムの正社員として企業に終身雇用される時代は終わり、労働者の多くが個人事業主やフリーランスとして働く時代がやってくるということなのだろう。だが、私はそういう社会が理想だとはとても思えない。以前の記事「小笹芳央『モチベーション・マネジメント―最強の組織を創り出す、戦略的「やる気」の高め方』―モチベーションを高めるのは社員の責任」で、企業は現代最高の社会主義機関であると恨み節を書いたが、事実現代の企業こそ、社員の生活の安定と経済の成長を実現していると私は考えている。

 それを可能にしているのは、企業が個人では到底なし得ない大規模な仕事を完遂したり、高品質の製品・サービスを提供してくれたりするその組織力に対して顧客がプレミアムを支払うことについて、社会的に暗黙の了解が成立しているからである。また、企業が新製品開発やR&D活動を通じて、現在よりもさらに優れた製品・サービスを開発してくれることに対しても、顧客が期待をしプレミアムを支払うことに合意しているからである。そのプレミアムを分配することで、社員は安定した給与を受け取り、企業はイノベーションに投資することができる。

 フリーランス中心の社会とは、顧客がそのようなプレミアムを負担しない社会である。フリーランスにできる仕事の範囲はたかが知れている。その限定された仕事を安くやってくれれば十分であり、イノベーションなど全く期待されていない。独立請負人の方がフルタイムの正社員よりも人件費が3~4割安くなるのはそのためである。実際のところ、フリーランスの現状は非常に厳しい。中小企業庁が発表している『小規模事業白書(平成28年度版)』によると、フリーランスとして得ている収入が300万円未満という人の割合は実に56.7%に上る。

 フリーランスは、収入が少ないにもかかわらず、やらなければならないことだけはやたらと多い。『上司が鬼とならねば部下は動かず』で知られる染谷和巳氏は、『致知』2018年1月号の中で次のように述べている。
 サラリーマンの中には、独立して自由に仕事をする芸術家や職人に憧れている人がいる。営業ノルマもなく誰にも束縛されずに、マイペースで仕事をしている姿を羨ましく思うのだろう。しかし、それは幻想である。芸術家や職人がその道でやっていこうと思えば、技術はもとより、資金力、得意先との人間関係構築能力、営業力などあらゆる力を駆使できなくてはいけない。(中略)多くの人が独立後、それまで自分がいかに恵まれた環境に身を置いていたかに気づき後悔の涙を流しているのである。現実の社会は決して甘いものではない。
(染谷和巳「仕事観の確立が人を育てる」)
致知2018年1月号仕事と人生 致知2018年1月号

致知出版社 2018-01


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 最近は大企業を中心に、副業解禁の動きが広がっている。私は、正社員という本業を持ちながら、収入の足しになるようにとフリーランスの仕事をすることについては何も言わない。むしろ、普段勤めている企業とは異なる視点で仕事ををすることが、その人の創造力を大いに刺激するかもしれない。だが、フリーランスが中心となるような社会に対しては警鐘を鳴らしたいと思う。フリーランス中心の社会では、多くの労働者が不安定な収入に悩まされ、イノベーションが止まる。政府は、新種の巨大な社会不安に対処するのに苦労するに違いない。

久繁哲之介『商店街再生の罠―売りたいモノから、顧客がしたいコトへ』―「レトロ商店街」、「テーマパーク型商店街」などは十中八九失敗する


商店街再生の罠:売りたいモノから、顧客がしたいコトへ (ちくま新書)商店街再生の罠:売りたいモノから、顧客がしたいコトへ (ちくま新書)
久繁 哲之介

筑摩書房 2013-08-07

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 著者は地方自治体から商店街活性化の仕事を随分と請け負っているようだが、本書の中で行政の担当者を滅多切りにしている。商店街を活性化しなければならないと口では言いながら、通勤する時はマイカー通勤で商店街を見ることもなく、昼には市役所の安い食堂で食事を済ませる。著者を招いた勉強会の後には、商店街で懇親会をするのではなく、市役所の会議室でウーロン茶で乾杯をする(マイカー通勤をしているためである)。こんな市役所の担当者に商店街のことが解るわけがない、彼らが立てる商店街活性化計画など、役所にありがちな美しい文章にすぎないと味噌くそに言っている。一応、著者にとって行政は顧客にあたるはずなのだが、その顧客をここまでけなすということは、仕事を切られてもいいと思うほどはらわたが煮えくり返る経験をしたのだろう。

 著者は、最近の商店街活性化の取り組みのうち、「レトロ商店街」、「テーマパーク型商店街」、「B級グルメ商店街」の事例をことごとく批判している。私も著者の考えには基本的に賛成である。

製品・サービスの4分類(大まかな分類)

製品・サービスの4分類(各象限の具体例)

 ブログ本館の記事「【シリーズ】現代アメリカ企業戦略論」などで私が頻繁に用いている上図に従うと、商店街は左下の<象限①>に該当する。ところが、商店街をレトロ商店街化するといった取り組みは、簡単に言えば商店街を観光地化しようとするものであるから、商店街を<象限①>から<象限③>に移行させる取り組みである。何度も書いている通り、<象限③>はイノベーションの領域であり、顧客の需要を一から創造しなければならない。資金力のある企業が多数のエバンジェリスト(伝道者)を派遣し、自社のイノベーションの魅力を訴求して、顧客を洗脳する。イノベーションが成功を収めれば莫大な富を手にすることができる。イノベーターは、成功した後は市場からさっさと身を引き、悠々自適のセカンドライフを送る。しかし、そんなことができるイノベーターはごく少数である。

 自らがイノベーションを創出する代わりに、イノベーションのプラットフォームを用意するという選択肢もある。GoogleやAppleのスマートフォンアプリ、定額音楽配信サービスのプラットフォームなどがその代表例である。そして、無数のイノベーションをランキング化し、何が顧客にとって最良のイノベーションかを顧客自身に決めさせる。イノベーション単体の寿命よりも、プラットフォームの寿命の方が長いため、賢いイノベーターはこのプラットフォーム型の戦略に転向している。

 仮にも「地域商店街活性化法(商店街の活性化のための地域住民の需要に応じた事業活動の促進に関する法律)」が「地域住民の生活の向上及び交流の促進に寄与してきた商店街」として、永続的存続を前提としている商店街を<象限③>の博打にさらすのは、私にとっては狂気の沙汰としか思えない。また、前述のプラットフォーム型の戦略も万能ではない。プラットフォーム自体が寿命を迎えることがあるためだ。例えば、今日本ではB級グルメのグランプリが各地で開催されており、商店街がこぞってB級グルメを出品しているが、ランクインするB級グルメが「焼きそば」に偏っていることを著者は本書の中で指摘している。そのランキングを見た人々は、早晩B級グルメから離れていくことだろう。このように、商店街のビジネスは<象限③>と非常に相性が悪いのである。

 商店街は原点に戻って、<象限①>のビジネスに徹するべきである。<象限①>は必需品の領域であるから、顧客ニーズが顕在化しているし、人口や世帯数によって市場規模もある程度見える。だから、やるべきことをやっていれば、<象限③>ほどの派手な成功はなくとも、成果は後からついてくる。ここで言う「やるべきこと」とは、顧客の生の声に耳を傾ける、競合他社を観察し弱点を発見する、自社の差別化要因をはっきりさせるといった、ビジネスとしては当たり前のことに他ならない。本書では「リピート客を作る5つの方法」が紹介されていたのて引用しておく。これすらできないと言う商店街は、座して死を待つのみである。

 ①【顧客の不満】
  店へ何回行っても、大勢の中の無名な一人として扱われる。
 ⇒【顧客ニーズ】
  「常連客(できれば、たった一人の私)」として接客されたい。
 ⇒【リピート客を作る方法例】
  いつも、ご来店ありがとうの気持ちが伝わる「言葉と表情」を示す。

 ②【顧客の不満】
  商品の価値は値段しか書かれていない。売りたい下心しか伝わってこない。
 ⇒【顧客ニーズ】
  商品価値を、顧客ごとの立場・生活シーンに即して伝えてほしい。
 ⇒【リピート客を作る方法例】
  顧客情報(購入履歴、会話履歴)を踏まえて、顧客ごとに商品価値説明や利用方法提案を示す。さらに、顧客情報を踏まえた仕入・生産を行い、メールや電話で「あなたに相応しい商品が入りましたよ」と連絡するとなおよい。

 ③【顧客の不満】
  店に入りにくい(ほしいものがなかった場合、何も買わずに店を出にくい)。
 ⇒【顧客ニーズ】
  気軽に入店したい(必ず、何かを買うわけではない)。
 ⇒【リピート客を作る方法例】
  「試着や試食をして、気に入ったら買ってください」という情報発信を行う。

 ④【顧客の不満】
  少量・一品では買いにくい。
 ⇒【顧客ニーズ】
  少量・一つでも気兼ねなく買いたい。
 ⇒【リピート客を作る方法例】
  少量・一つでも喜んで売りますという情報発信を行う。

 ④【顧客の不満】
  惣菜など揚げ物・焼き物のでき上がり時間が解らない。
 ⇒【顧客ニーズ】
  でき立ての美味しい状態で食べたい。
 ⇒【リピート客を作る方法例】
  でき上がり時間を店舗掲示や店員の声かけなどで伝える。

DHBR2017年9月号『燃え尽きない働き方』―スノーピーク社の戦略について


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 09 月号 [雑誌] (燃え尽きない働き方)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2017年 09 月号 [雑誌] (燃え尽きない働き方)

ダイヤモンド社 2017-08-10

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製品・サービスの4分類(大まかな分類)

製品・サービスの4分類(各象限の具体例)

製品・サービスの4分類(具体的な企業)

 久しぶりにこの図の登場。詳しくはブログ本館の記事「【シリーズ】現代アメリカ企業戦略論」、「「製品・サービスの4分類」に関するさらなる修正案(大分完成に近づいたと思う)」をご参照いただきたい。

 【象限③】は「あってもなくてもよい製品・サービス」であり、常に需要を創造しなければならない。言い換えれば、リーダーがイノベーションを起こさなければならない。市場ニーズはまだ存在していないのだから、伝統的な市場調査は役に立たない。よって、(A)リーダーは「顧客が何をほしがっているか?」ではなく、「自分だったらどういう製品・サービスがほしいか?」と考える。Appleはスティーブ・ジョブズがほしいと思った製品を作り、全世界に普及させた典型例だと言える。そして、Appleがそうであったように、(B)リーダーは製品・サービスに込めた強い思いを顧客に正確に伝え、ブランドイメージを守るために、販売チャネルに対して強いパワーを発揮し、販売チャネルをコントロールしようとする。

 ただし、イノベーションは成功確率が非常に低い。イノベーター自身がその製品・サービスをほしいと思っても、世の中の大多数の人々が同じくそれをほしがるとは限らない。イノベーションは多産多死の世界である。よって、(C)イノベーターはリスクを最小化するため、一時的に優秀な人材を集めてプロジェクトを作り、製品・サービスが完成すればチームを解散するというプロジェクト型の経営をする。正社員は最小限にとどめ、外部のパートナーをフルに活用する。仮に正社員を多く抱える場合でも、固定的なキャリアパスはなく、そのプロジェクトが要求する最高の能力を持つ人材をその都度社内からかき集めるので、上を下への人事異動が頻発する。他方、日本企業が強い【象限②】では、長期雇用を前提として大半の社員を正社員とし、キャリアパスを明確にして社員の育成に投資する。

 本号には、アウトドア用品のスノーピーク社の代表取締役社長・山井太氏の論文が掲載されていた(「スノーピークが実践するユーザー主義の原点 すべては、社員の幸せから生まれる」)。アウトドア用品は、私の見解では【象限③】に該当する。論文を読むと、同社が前述の(A)~(C)を実践していると感じた。
 (A)1988年、筆者は「自分たちが本当にほしいものをつくる」と宣言し、キャンプ用品のハイエンド製品群をつくり始めた。それまでのように、ちょっと風が吹くと潰れてしまうテントではなく、嵐に遭遇しても持ち応えられる頑強なテントをつくろうと、素材と技術、デザインにこだわって製品化を果たしたのである。
 (B)小売店は回転率のよい売れ筋製品しか扱ってくれないため、店舗ごとの品揃えに大きなバラツキが生じてしまう。加えて、問屋経由では流通そのものもコントロールできておらず、当社が目指すハイエンドなイメージとはかけ離れた店舗で販売されるケースもあった。(中略)そこで筆者は、翌1999年から1年をかけて問屋や小売店との交渉を行い、2000年のシーズンからは販売体制を一変させた。まず、問屋を介さず小売店との直接取引に変え、流通をよりシンプルにした。さらに直接取引の特約店方式を採用して、当社製品の取扱店を4分の1に絞り込み、その代わりに全商品を展開してもらうという体制を構築した。
 (C)組織変更は年に1度、あるいいは半期ごとの会社も多いと思うが、筆者はその時点の体制が機能していないと感じたら、時期を問わず即座に変えることにしている。組織変更やポジション変更が年10回ということも珍しくない。(中略)当社では、タスクリーダー、マネジャー、シニアマネジャーというキャリアパスが基本だが、積極的な抜擢人事を行うことも多い。若手社員を一足飛びでマネジャーに引き上げることもある。同時に、降格も躊躇しない。執行役員から降格して部長職まで落ちることもある。(中略)ただし、敗者復活戦が用意されていることが特徴だ。
 ところで、事業戦略の立案から実行にかけてのプロセスは、大まかに言って、①事業機会の抽出⇒②ターゲット顧客・差別化要因の決定⇒③CSF(Critical Success Factor:重要成功要因)の明確化⇒④戦略目標(売上高・利益・市場シェア)の設定⇒⑤ビジネスモデルのデザイン⇒⑥ビジネスプロセスのデザイン⇒⑦施策の優先順位づけと実行計画の作成⇒⑧将来の損益計算書のシミュレーション、という8つのフェーズから成り立っていると考える。

 ブログ本館の記事「【戦略的思考】事業機会の抽出方法(「アンゾフの成長ベクトル」を拡張して)」は①のツールである。最近、旧ブログで書いた「【シリーズ】:ビジネスモデル変革のパターン」は②の差別化要因を考える際のヒントになるのではないかと思うようになった。また、上図のマトリクスに関しては、スノーピーク社の事例が示唆するように、象限ごとに適切なビジネスモデルというものが存在し、⑤のビジネスモデルのデザインに役立つのではと感じている。こうして、今まで何年もの間私がバラバラに考えていたことがようやく1つにまとまりつつある。ちなみに、このアイデアを思いついたのは、私が1人カラオケをしている時であった。しばしば、仕事から解放された時に革新的なアイデアがふと浮かぶものだと言われるが、私にとってはこれが初めての経験であった。

『中国に勝つ/岐路に立つネット証券 トップ6人が描く未来像(『週刊ダイヤモンド』2017年7月15日号)』―日本が生き残る道は中国のイノベーションの模倣


週刊ダイヤモンド 2017年 7/15 号 [雑誌] (中国に勝つ)週刊ダイヤモンド 2017年 7/15 号 [雑誌] (中国に勝つ)

ダイヤモンド社 2017-07-10

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 中国は経済が失速している、共産党一党独裁という政治リスクがある、対日感情が悪化しているなどの理由から、中国を敬遠する動きが最近見られる。しかし、外務省「海外在留邦人数調査統計」を見ると、各国の日系企業拠点数(企業の他に駐在員事務所、支店を含む)では中国が圧倒的に多い。

日系企業拠点数推移

 JETRO「2016年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査(JETRO海外ビジネス調査)結果概要」には、今後海外で拡大を図る機能を尋ねた質問があり、地域統括を除く販売、生産、研究開発、物流の4分野で中国が1位となっている(地域統括はシンガポールが1位)。本号の特集は「中国に勝つ」だが、経済規模ではもはや日本は絶対に中国にかなわない。だから、急激に成長するこの隣の龍を上手に利用して、日本の経済衰退を押しとどめ、望むらくは日本国民1人あたりGDPが成長する方向へ持って行くのが得策だと思う。

海外で拡大を図る機能(国・地域ランキング)

 1つは、「顧客がいる現場に張りつき、顧客の生の声を丹念に拾い上げて、それを丁寧に製品・サービスに反映させていく」という日本企業のマーケティング上の強みを活かすことである。本号では、中国で自動販売機事業を急成長させている富士電機が紹介されていた。人口13億人の中国はアイデアの宝庫である。
 中国人の柔軟なアイデアに寄り添うことで商機が生まれる場合もありそうだ。実際に、富士電機側にも、顧客から「カラオケセットと自販機を合体させて、歌の評価で最高得点を取ったら、ジュースが1本出てくるような自販機を作っほしい」とか「弁当が出てくる自販機を作ってほしい」という相談が舞い込んでくるのだとか。
 もう1つは、中国のイノベーションを模倣することである。日本は世界で最も早く超高齢化社会を迎え、医療・介護分野をはじめとして、新しいニーズを先取りしたイノベーションが求められる。私は以前、ブログ本館の記事「【ドラッカー書評(再)】『乱気流時代の経営』―高齢社会に必要な新しい戦略的思考」という記事で、来るべき超高齢化社会の望ましい姿を主体的にデザインし、その社会を支える製品・サービスを開発すればよいのではないかと書いたが、この考えにはいささか自信が持てなくなってきた。日本人はどうもイノベーションが苦手である。

 中国も今後は少子高齢化が進む。2040年には高齢化率が22.13%となる(同時期の日本は36%)。中国の場合、省や都市によって、日本以上に高齢化率がばらついていると想像できる。例えば、20世紀に最も人口が成長した都市である深センは、ここ30年で人口が30万人から1,400万人に膨張し、高齢化率はわずか2%である。こういう極端に若い都市があるということは、逆に極端に高齢化が進んでいる都市・地域もあるはずである。中国では、人口統計において「常住人口」と「戸籍人口」という2つの統計基準が存在し、中国の地域別(都市と農村別や省別など)に少子高齢化の実態を把握することが難しいとされる。ただ、1つの傾向として、都市部より農村部の方が高齢化が進んでいることは解っている。

 20世紀から21世紀の初頭にかけて、イノベーションの中心はアメリカであった。しかし、これからは中国がその中心になるかもしれない。中国人は元々イノベーションに長けている。何と言っても、世界3大発明と言われる火薬、羅針盤、活版印刷術は、全て中国が生み出したものである。だから、商魂猛々しく、創造力に満ちたイノベーターが、高齢化が進んだ地域で革新的なイノベーションを生み出すに違いない。日本は、お得意の模倣作戦で、中国のイノベーションを輸入し、これまたお得意の低コスト化、小型化、高品質化で、より洗練された製品・サービスに仕立て上げる。これが日本の生きる道ではないかと思う。

 何のことはない。中国を師と仰いで、中国の文化や制度を真似してきたかつての日本に戻るだけのことである。日本は文明の基礎となる文字ですら中国から輸入し、アレンジを加えて独自の文字体系を作ってしまった。ピーター・ドラッカーは、日本が海外のイノベーションを模倣して、最初にそれを開発したイノベーターよりも優れた製品・サービスを作ることを「起業家的柔道」と呼んで賞賛している(『イノベーションと企業家精神』)。だから、決して恥ずかしい作戦ではない。
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谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 ※持病の悪化により、今年の3月に続いて再び入院することとなりました。皆様にはご心配をおかけして申し訳ございません。復帰は8月末~9月上旬の予定です。それまでは過去の記事をお楽しみいただければと思います。

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、1,500字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

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(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)
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