こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント・トレーナー)のブログ別館。2,000字程度の読書記録の集まり。

プラットフォーム


『プラットフォームの覇者は誰か(DHBR2016年10月号)』


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 10 月号 [雑誌] (プラットフォームの覇者は誰か)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 10 月号 [雑誌] (プラットフォームの覇者は誰か)

ダイヤモンド社 2016-09-10

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製品・サービスの4分類(修正)

製品・サービスの4分類(修正)

 ブログ本館の記事「森本あんり『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体』―私のアメリカ企業戦略論は反知性主義で大体説明がついた、他」などで散々用いた未完成の図に、ようやく少しだけ手を加えた(これでもまだ改善の余地は大いにあると考えている)。

 <象限①>は「品質要求が厳しくない必需品」であり、消費者や企業が日常的に頻繁に利用する製品・サービスが該当する。象限①の製品・サービスは、それぞれの国の文化的嗜好や価値観を反映するため、規模の経済を目指すグローバル企業は育ちにくく、中堅~小規模のローカル企業が乱立する。これらの企業は、その国における雇用の受け皿ともなる。ただし、新興国の中には、低コストを武器にして象限①の製品・サービスを世界市場に展開しようとする野心的な企業もある。先進国の被雇用者は、こうした新興国企業の脅威にさらされる。

 <象限②>は「品質要求が厳しい必需品」であり、日本企業が最も得意とする分野である。象限②に該当する製品・サービスは、消費者の安全や顧客企業の事業を守るために、様々な規制がかけられている。ということは、その規制によって、ある程度製品・サービスの規格が標準化されることを意味する。そのため、グローバル規模の事業展開が可能となる。ただし、規制や規格が非常に厳しいことから、後発組の新規参入は容易ではなく、大手企業の寡占が多く見られる。

 <象限③>は「品質要求が厳しくない非必需品」であり、アメリカが得意とする象限である。非必需品ということは、その製品・サービスによって新たに市場を創造するわけだから、イノベーションに該当する。アメリカのリーダーがどのようにイノベーションを行っているかについては、冒頭の記事に譲る。一言だけつけ加えておくと、この象限では、ほぼ必ず勝者総取りという結果に終わる。

 <象限④>は、今までずっと「?」にしていたのだが、該当する産業が2つあると考える。1つは航空産業である。飛行機は自動車や鉄道に比べると、消費者の利用頻度が低い。象限④は、非必需品である上に品質要求が厳しいため、経営の難易度が非常に高い。航空会社は世界一経営が難しいと言われるのは、この辺りの事情とは無縁ではない。もう1つの業界は軍需産業である。戦争は必要不可欠ではない。しかし、軍隊が使用する武器には最高クラスの品質が必要とされる。軍需産業もまた、経営の舵取りが難しいに違いない。

 ここからが本題。本号を読んで、プラットフォームにはいくつかの種類があり、各々がそれぞれの象限に対応しているように思えた。元々、プラットフォーム企業は、象限③で生まれたものである。象限③においては、何がヒットするか事前に予測することが難しい。成功の確率を上げるためには、次々と新しい製品・サービスを投入するしかない。さらには、自分がお金を払ってでもいいから、自分の製品・サービスを世の中に広めたいと考える人も出てくる。プラットフォーム企業は、そういう売り手をかき集めることで成立する。

 出版社のビジネスモデルはまさにこれである。出版社は著者からお金をもらって書籍を出版する。出版社もどんな書籍がヒットするか解らないので、とにかくたくさんの著者を集めて、たくさん書籍を書かせる。何がヒットするか解らないため、書籍をたくさん市場に投入する数多くの出版社をさらに束ねているのがAmazonである。Amazonの強みは何と言ってもその品揃えである。そして、アルゴリズムを駆使してランキングを即座に作成し、売れ筋書籍を大量に売りさばく。

 象限③のプラットフォーム企業は、人気投票形式を採用している。Googleの検索エンジンによるWebページの順位づけも、被リンクの数を基にした人気投票と言える。Google PlayストアやApp Storeで提供されているスマホアプリも、人気投票である。Amazon、Google、Appleにとっては、どんな書籍やアプリが売れようと関係ない。彼らとしては、プラットフォームを利用する数多くの売り手がプラットフォーム使用料を支払ってくれ、さらに、ランキングによって火がついたヒット商品を世界中の人々が購入することで買い手からも収入が得られればそれでよい。

 象限②におけるプラットフォームは、IoTが中心となる。よく使われる例だが、GEは航空機のエンジンにセンサを組み込んでおり、エンジンの稼働状況を一元管理している。そして、保守点検のタイミングを最適化したり、適切なタイミングでメンテナンスパーツを供給したりする。象限③のプラットフォームの目的は、人気投票によって勝者と敗者を明確に分けることであったのに対し、象限②のIoTの目的は、モノの需要を先読みし、サプライチェーンを最適化することにある。

 IoTを構築する企業には、大きく分けると2種類ある。1つは、GEのように最終顧客と直接の接点を有する企業である。GEと取引のある部品メーカーは、GEのIoTプラットフォームに組み込まれていく。日本で言う系列のような関係が強化される。もう1つは、最終製品を持たないが、最終顧客を大量に掌握しているIT企業である。例えば、Googleが自動運転を事業化すれば、運転中に不具合が生じた場合に、すぐに最寄りの修理工場へと向かわせ、同時に別の自動運転車が交換パーツを修理工場に届けるといったことが可能になるだろう。

 部品メーカーとしては、どちらのプラットフォームに参加するかを決定する必要がある。いずれのプラットフォームにも一長一短がある。まず、最終メーカーが主導するIoTプラットフォームに参画する場合、最終メーカーからの安定的な受注は見込めるが、それ以上の発展はない。仮に、複数の最終メーカーに部品を納めている部品メーカーがあったとすると、それぞれの最終メーカーが独自にIoTプラットフォームを構築しているから、自社製品をどちらのプラットフォームにも対応できるようにしておかなければならない。

 GoogleのようなIT企業が主導するIoTプラットフォームに参画する場合、Googleは世界中の自動車をカバーするであろうから、受注の可能性が一気に広がる。ただし、そのプラットフォームには他の部品メーカーも数多く参加しており、必ずしも自社が選ばれるとは限らない。つまり、競争が非常に激しくなる。自社が選ばれる可能性を高めるには、どんな自動車でも自社の部品が使えるように部品を標準化・汎用化する必要がある。ところが、標準化した部品に万が一不具合が生じた場合、その損害は計り知れないほど大きくなる。

 象限①におけるプラットフォームは、P2P(ピアツーピア)の形式をとる。代表例は、UberやAirbnbである。本来、タクシー業界やホテル業界は、そのサービスに欠陥があると顧客の生命に与えるリスクが高い業界である。ところが、UberやAirbnbを利用する顧客は、多少荒っぽい運転をする見ず知らずの人でも、安全性に問題がありそうな建物に住んでいる人でも、一時的につき合うだけならリスクを低減できると考えているのだろう。つまり、象限②から象限①に顧客を移行させて、P2P型のプラットフォームを導入したと解釈できる。

 象限①は日常的に使用する頻度が高い製品であるが、ついつい買いすぎてしまうことがある。また、何らかの事情で不要になることがある。一方で、象限①の製品は少しでも安く入手したいという”主婦的な”感覚の人たちがいる。象限①の製品は、多少欠陥があっても自分に危害が及ぶ可能性が低いから、他人の”お下がり”でも構わない。ここに、余りを処分したい人と、その余りをほしがる人とを直接結びつける可能性が生まれる。少子化が進む日本ではあまり需要はないかもしれないが、子どもの洋服を処分したい人と、お下がりをほしがっている人とをつなぐP2Pのプラットフォーム事業などが考えられる。

『デザイン思考の進化(DHBR2016年4月号)』


ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 04 月号 [雑誌] (デザイン思考の進化)ダイヤモンドハーバードビジネスレビュー 2016年 04 月号 [雑誌] (デザイン思考の進化)

ダイヤモンド社 2016-03-10

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 《参考記事(ブログ本館)》
 日本とアメリカの戦略比較試論(前半)(後半)
 『目標達成(DHBR2015年2月号)』―「条件をつけた計画」で計画の実行率を上げる、他
 『稲盛和夫の経営論(DHBR2015年9月号)』―「人間として何が正しいのか?」という判断軸
 森本あんり『反知性主義―アメリカが生んだ「熱病」の正体』―私のアメリカ企業戦略論は反知性主義で大体説明がついた、他

製品・サービスの4分類(修正)

 上記の参考記事で上図(※まだ改良の余地あり)を用い、アメリカ企業は左上の象限におけるイノベーションが、日本企業は右下の象限におけるマーケティングが得意であると書いてきた。イノベーションは世界中の市場を相手にするため需要予測が難しく、また異業種格闘技となり様々な競合他社が入り乱れる。その上、何がヒットするかは予想困難であるから、失敗と解ったら素早くその製品・サービスを市場から引き上げ、新たな製品・サービスを次々と投入しなければならない。DHBR2016年4月号には、次のような記述があった。
 しかしデザインというのは、なかなか予想通りにはいかない。ユーザー体験の向上がどれほど価値を生むのか、あるいは創造性への投資がどれほどリターンを生むのかを、計算によって知ることは不可能とは言わないまでも困難である。
(ジョン・コルコ「シンプルさと人間らしさをもたらすツール デザインの原理を組織に応用する」)
 どんなイノベーションでもそうだが、最初は非必需品としてスタートする。非必需品を顧客が受け入れる基準は、その製品・サービスが「好きか嫌いか」の1点である。すなわち、顧客は極めて感情的に振る舞う。したがって、イノベーターは顧客の”快”に訴えるプロモーションを展開する。ジョン・コルコの論文では、従来のバリュープロポジション(提供価値)は実用性を約束するのに対し、デザインを通じたバリュープロポジションは次のようなものになると述べている。
 デザインを理解している組織は、むしろ感情的な言語(願望、野心、愛着、経験などに関わる言葉)を使って製品やユーザーを説明する。チームメンバーは製品の要件や実用性と同じくらい、バリュープロポジションがユーザーの感情に共鳴するかについても検討する。(同上)
 イノベーターは、他の無数のイノベーションを押しのけて自社のイノベーションを顧客に受け入れてもらおうとする。よって、しばしばそのプロモーションは強引なものとなる(最近は、あるタレントのテレビへの露出が急激に増えると、視聴者は”ごり押し”だと反応する)。他者から”快”を押しつけられて”快”になびく人がいる一方で、強烈な”不快”反応を示す人もいる(だから、タレントのブログが”炎上”する)。逆説的だが、イノベーションは全世界への普及を狙っているにもかかわらず、プロモーションを進めるほどにファンとアンチが真っ二つに分かれる。

 本号において、ビジネスデザイナーの濱口秀司氏は、イノベーションの特徴の1つとして「議論を生む(賛成/反対)」を挙げている。
 全員が賛成あるいは反対するものはイノベーションではない。そのアイデアが大好きな人と大嫌いな人が戦う中から絞り込まれるのが、イノベーティブなアイデアの特徴である。
(濱口秀司「真のイノベーションを起こすために 「デザイン思考」を超えるデザイン思考」)
 ペプシコのインドラ・ヌーイCEOは本号のインタビューで、「優れたデザインの定義とは何か?」と尋ねられて、次のように回答している(なお、本インタビューの言葉を借りれば、ペプシコには「健康によい製品」もあるが、主力はコーラに代表されるような「食の喜びを与えてくれる製品」である。そして、「食の喜びを与えてくれる製品」は必ずしも必需品ではなく、上図の左上の象限に位置すると考える)。
 私にとってうまくデザインされた製品とは、消費者が惚れ込む製品、もしくは嫌悪感を抱く製品です。両極端かもしれませんが、何らかの生の反応を引き出すものでなければならないのです。
(インドラ・ヌーイ「【インタビュー】CEOが語るデザイン思考をもとにした企業変革 ペプシコ:戦略にユーザー体験を」)
 左上の象限には、一攫千金を狙って様々な売り手が参入してくる。しかし、どんなイノベーションがヒットするか解らない。売り手は、自分が売り手であるにもかかわらず、こちらがお金を払ってでも自分のイノベーションを買ってほしいと考えるようになる。そういう売り手と世界中の買い手を結びつけるのがプラットフォーム企業である。AppleやGoogleのスマートフォンアプリのプラットフォームや、Amazonの電子書籍のプラットフォームなどはまさにこれである。

 従来の小売業でも、売り手(メーカー)が買い手(小売店)に対してお金を支払うことはある。ただし、いわゆるリベートは法的に規制されていることが多い。一方、プラットフォーム企業は、公然と売り手からお金を徴収する。この点で、古典的なリベートとは全く性質が異なる。3Dプリンタに詳しいリチャード・ダベニーは、21世紀はこうしたプラットフォーム企業の時代になると予測する。
 高度にデジタル化された21世紀型の市場では、プラットフォームこそが最大の特徴である。(中略)1つのプラットフォーム上で、たえず変化する生産量は活発に調整され、設計図は保存されたうえに常時更新され、原材料の供給管理と購入が行われ、顧客からの注文を受け付けるようになる。そうなれば、システムの利用者全員がそのプラットフォームの存続に利害関係を持つようになる。
(リチャード・ダベニー「製造業を根本から変える 3Dプリンティング革命の衝撃」)
 私は、プラットフォーム企業は左上の象限に固有のものだと思っていた。だが、野心的な企業は、左下や右下の象限への進出も狙っているようである。

 最近の流行語(バズワード?)をつなぐと、こんな近未来が出現する。つまり、数年後にはGoogleなどがIoTで世界中のモノからデータを集め、ビッグデータ解析をして顧客のニーズを先読みし、世界中でネットワーク化された3Dプリンタ企業に対して、AIを通じて顧客が求める製品の製造命令を出し、物流は提携する世界中の物流業者の自動運転車とドローンにやらせ、提携先企業の中で資金需要が出てきたらFinTechで自動的に融資する、という未来である。
プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都城北エリア(板橋・練馬・荒川・台東・北)を中心に活動する中小企業診断士(経営コンサルタント、研修・セミナー講師)。これまでの主な実績はこちらを参照。

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、2,000字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
シャイン経営研究所HP
シャイン経営研究所
 (私の個人事務所)

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