Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法
リー・ギャラガー 関 美和

日経BP社 2017-05-25

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製品・サービスの4分類(①大まかな分類)

製品・サービスの4分類(②各象限の具体例)

製品・サービスの4分類(③具体的な企業)

 上図は、ブログ本館の記事「【シリーズ】現代アメリカ企業戦略論」で解説した後、「『イノベーション研究 これからの20年(『一橋ビジネスレビュー』2017年SPR.64巻4号)』―「製品・サービスの4分類」に関する修正案」で少し切り口を変えたが、どうもしっくり来なくて、「「製品・サービスの4分類」に関するさらなる修正案(大分完成に近づいたと思う)」で再度修正して現在に至るものである。

 旅行・宿泊業は、私の理解に従えば必需品ではなく、宿泊体験に欠陥があっても顧客の生命が脅かされるリスクは極めて低いから、【象限③】に属する。以前の記事でも書いた通り、【象限③】の製品・サービスは、需要が不安定であり、市場規模の予測が難しい。どんな製品・サービスがヒットするかは神のみぞ知る。

 ただ、個人的には、ヒットする製品・サービスにはいくつかの法則があるように感じる。ブログ本館の記事「『創造性VS生産性(DHBR2014年11月号)』―創造的な製品・サービスは、敢えて「非効率」や「不自由」を取り込んでみる」では、①イノベーター自身の好み、「これがほしい」という強い思いを反映させる、②敢えて顧客に「非効率」、「不自由」さを味わわせる、③顧客価値の向上には直結しないが、裏でイノベーターが徹底的にこだわる箇所を作る、という3つを挙げた。

 Airbnbが登場する前は、大手ホテルチェーンが金太郎飴のような部屋を提供していた。マリオット・インターナショナルのアーネ・ソレンセエンCEOは、「20年前の旅行者の望みは、清潔で驚きのない部屋だった。それが私たちのブランド戦略につながった。よし、それなら全て同じ部屋にしよう、とね」と語っている。

 ここで、並のイノベーターであれば、大手ホテルチェーンに対抗して独自のポジショニングを構築するために、上記①~③の条件を満たすような、普通の人から見れば一風風変りなホテルを作っただろう。しかし、Airbnbの創業者は、自らそのようなホテルを作らなかった。そういうホテル、特に②を満たすホテルは、民間人がたくさん持っているではないかと判断したのである。つまり、民間人をホテル業界のイノベーターに見立てたわけだ。
 多くの旅行者、特にミレニアル世代(1980~2000年代初頭に生まれた若者)は、旅行体験に不完全な本物らしさを求めている。それは、退職した家主の家に泊まることかもしれないし、裏通りのわかりにくい入り口からしか入れないようなソーホーのロフトを独り占めすることかもしれない。どんな形であれ、その体験はいつもと違っていて、本物で、独特な何かだ。
 さらにAirbnbが傑出していると思うのは、最初からプラットフォーム型を志向していた点である。ブログ本館の記事「「製品・サービスの4分類」に関するさらなる修正案(大分完成に近づいたと思う)」でも書いたように、【象限③】には大量のイノベーターが参入してくるため、より一層イノベーションの成功確率が下がる。

 すると、イノベーターの中には、自分がお金を払ってでもいいから、自分の考案したイノベーションを普及させたいと考える人が出てくる。こうしたイノベーターたちを束ね、世界中の顧客と引き合わせるのがプラットフォーム型企業である。プラットフォーム型企業の特徴は、顧客からだけでなく、イノベーターからもお金を取る点にある。従来の常識で考えれば、流通チャネルが仕入先にお金を払って製品・サービスを仕入れ、それを顧客に販売して代金を回収するというモデルになる。もちろん、仕入先が流通チャネルに対して販促費と称してリベートを支払うことはある。しかし、これはやりすぎると独占禁止法違反になってしまう。

 ところが、プラットフォーム型企業は、自社を介してイノベーターと顧客の両方から収益を獲得する。Airbnbの場合、ホストから3%、ゲストから6~12%の手数料を徴収している。つまり、ホストから堂々と合法的にお金を取っているのである。このビジネスモデルを考えたAirbnbの創業者は、素直にすごい人たちだと思う。