実践的中小企業再生論〔改訂版〕~「再生計画」策定の理論と実務~実践的中小企業再生論〔改訂版〕~「再生計画」策定の理論と実務~
藤原 敬三

きんざい 2013-04-19

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 藤原敬三氏はみずほ銀行、東京都中小企業再生支援協議会支援業務責任者を経て、現在は中小企業再生支援全国本部統括プロジェクトマネジャーを務めている。以下、士業やコンサルタントに対する辛口コメント。私も気をつけます。
 分析手法の前に「事業の理解」がある。ここを勘違いしている事業DDがいかに多いことか。今後の再生計画ではほとんど役に立たない外部環境分析を長々と記述し、収益に与える影響の少ない要素をこねくり回して、最終的に具体性のない施策が並んでいるDDなど事業を見極めるという役割を果たすことができないDDが多いことも事実である。
 再生支援協議会の例でも、たとえば「営業力の強化」とか「原価管理の徹底」という一言で数値計画の説明がなされていた例があるが、「強化・徹底」では説明にならない。つまり企業にとっても「どこの工程の原価部分」、あるいは「どこの営業拠点」、。また「生産拠店(ママ)のどの部門のどこが問題なのか」といった具体的な指摘に基づいた施策の提案でなければ、経営者の納得感は得られない。
 事業再生の目的の下、債権者が関与できない方法によって債権カットを目的に実行される会社分割については、詐害行為取消権の適用を認めた裁判例、否認権行使を認めた裁判例、法人格否認の法理により別会社に対する請求権を認めた裁判例など法的に否定されるケースも出てきており、法的な問題をはらんでいることに留意する必要がある。

 このような手法を再生手法として喧伝しているコンサルタントや士業が現実に存在しており、債権者としては、このような濫用的な事例が判明した場合、詐害行為取消権の行使や破産申立てをするなど毅然とした対応をとることが望ましいとさえ思えてならない。