こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント・トレーナー)のブログ別館。1,500字程度の読書記録の集まり。

人脈

河瀬誠『「アジア・新興国」進出を成功させる海外戦略ワークブック』-二言目には政治的人脈を自慢する人はどうも好きになれない


「アジア・新興国」進出を成功させる 海外戦略ワークブック「アジア・新興国」進出を成功させる 海外戦略ワークブック
河瀬 誠

日本実業出版社 2014-11-07

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 彼ら(※エージェント)は日本人とはいえ、詐欺師まがいの人物も少なくない。彼らは話もうまいし、実際に政治家や著名人にも会わせてくれる。しかし、本当に実力がある人は、最初から軽々しく自分のネットワークを吹聴しないものだ。相手をどこまで信用できるかは、彼らが直接顧客にしている(という)日本企業の担当者に直接話し(※原文ママ)を聞いて確かめるべきだ。
 海外でビジネスをするには、顧客や販売チャネルとコミュニケーションを取るだけでは不十分な時がある。現地の規制をクリアしたり、現地の投資優遇策を受けたりするために、現地の政治家や行政当局ともリレーションを構築しなければならない。そういう時に重宝するのがエージェントである。だが、引用文にもあるように、エージェントの質はピンキリである。個人的には、こちらがまだ十分に話もしていない段階から、「私は○○国の△△という政治家とすぐにアポが取れる」などと自慢してくる人は好きになれないし、どうも信用できない。

 私は今年の2月末まで、ある中小企業向けの補助金事業の事務局員をやっていた。事務局には「補助金に応募するにはどうすればよいか?」といった問い合わせの電話が来るのだが、私はある中小企業の経営者と6時間半電話したという珍記録(?)を持っている。私も「申し訳ございません。この後外出の予定が入っておりまして・・・」などと言って上手いこと電話を切り上げればよかったものの、どうやらその人は以前に複数の他の事務局員にも電話をしており、その時の応対にひどく不満だったと言うから、私も無下に電話を切ることができなかった。

 その人がほとんど一方的にまくし立てていただけなので、話の内容はほとんど覚えていない。ただ、「私は○○省の△△という人を知っている」とか、「○○という政治家からも我が社の事業は評価されている」などと、やたらと政治的な人脈を自慢していたことだけは覚えている。こういう人は大抵、「私のバックには政治家や行政がついているのだから、補助金に応募した時には必ず採択せよ」と暗示している。しかし、企業にとって最も重要なのは政治家や行政ではなく、顧客である。その人からは、6時間半話しても顧客の話は一切出てこなかった。この点で、この企業は間違いなく業績が芳しくないと察しがついた。第一、経営者が日中に6時間半も電話をしていること自体が仕事のなさを表している。

 中小企業診断士で海外経験が長い人の中にも、胡散臭い人はいる。一例を挙げると、途上国を中心に、学校で使う補助教材を販売していたという人がいる。彼は初対面でいきなり、「私はこういう製品を売っていました」とその補助教材を取り出し、さらに、自分がいかに各国の政府とリレーションがあるかを示すために、政府の要人と思しき人物と一緒に写っている写真のファイルを披露してきた。私にとってこういうタイプの診断士は非常に珍しかったため、しばらくの期間彼の行動を観察していた。すると、会合や懇親会で新しい人に会うたびに、私に対してしたことと同じことを必ず繰り返していた。

 だが、彼は1つ大きな勘違いをしている。彼の事業における真の顧客は、政府ではなく学校の子どもたちである。彼は政治家との写真はたくさん持っていたが、学校でその製品がどのように使われているかという写真はなかったし、子どもたちの生の声も把握していないようだった。一体、彼の提供価値は何なのか、彼特有の能力とは何なのかと、私は疑問を抱かざるを得なかった。単に、政府関係者と顔をつなぐだけの役割だったのではないかとさえ思った。

 もちろん、政府関係者とコネクションを作る力も一種の特殊能力かもしれない。海外の政府は、名前を聞いたこともない日本企業と簡単に会ってくれるわけではない。しかし、本質的に政治家というのは、自分の権力を誇示するために、ネットワークを広く薄く作ろうとする人種である。「政治家に必要なのは、薄い友人関係を構築する力である」と述べたのはキッシンジャーだったと記憶している。また、行政の関係者は、公平性の観点から、会いに来た人に差別的な応対はできないから、よほどおかしな人ではない限り受け入れてくれるものである。

 つまり、政治家や行政とのつながりは、多少努力すれば簡単に構築できると私は思うわけだ(その多少の努力さえせず、政治家や行政と大したリレーションも持っていない私が言うのは不適切かもしれないが)。しかし、繰り返しになるが、ビジネスの本質は顧客を獲得することである。自分にとって価値がないと思えば簡単に自社を切り捨てるような顧客との間に深い関係性を構築しなければならない。顧客との人脈を自慢する人であれば、私はその人のことを信用するであろう。

『続ける力(DHBR2017年2月号)』―人脈の作り方について


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 特集の「続ける力」についてはブログ本館で書くとして、ブログ別館では特集以外の論文から、人脈の作り方について書いてみたいと思う。ティツィアーナ・カッシアロ、フランチェスカ・ジーノ、マリアム・クーシャキの「考え方を変える4つの戦略 人脈づくりが好きになる方法」という論文では、①学習に焦点を絞る、②共通の関心を見つける、③自分が提供できるものを広い視野で考える(金銭、情報、コネ、技術的支援といった、有形物や職務に関連するものだけでなく、相手に対する感謝の気持ちや評価などのように、目に見えないリソースを提供する)、④より重要な目的を見出す(個人的利益のためではなく、自分が帰属する集団の利益を重視する)という4つのポイントが紹介されている。

 実を言うと私は極度の人見知りで、知らない人が大勢集まるような会合が非常に苦手である。中小企業診断士の資格を取得すると、支部や研究会の関係で、飲み会に参加する機会が格段に増える(診断士というのは、飲み会が異常に好きという特殊な人種なのかもしれない)。最近でこそ、私と同年代の30代の診断士が増えてきたものの、私が診断士の資格を取得した10年前は私も20代半ばであり、飲み会に参加すると周りは50代、60代の先生ばかりであった。そうすると、一体何を話していいのか解らずに困ったものである。

 そういうこともあって、しばらくは診断士の飲み会から遠ざかっていた。ところが、2012年に1か月半ほど入院して全ての仕事を失ってしまったので(経緯などについてはブログ本館の記事「【シリーズ】中小企業診断士を取った理由、診断士として独立した理由」を参照)、診断士の人脈作りをして、何とか仕事を紹介してもらえないかと画策した。だが、私は相変わらず人見知りのままである。そこで私が取った作戦は、懇親会に参加するたびに、懇親会の参加メンバーを見て(診断士はちょー助などを使って出欠管理をすることが多いため、事前に参加者が解る)、支部や研究会などで要職を務めている先生にあたりをつけ、その先生に質問すること、依頼することを1つだけ決める、というものであった。

 例えばある時は、「独立診断士として食べていくためにはどうすればいいですか?」とストレートに聞いてみたり(今振り返ると、結構失礼な質問をしたものだ)、ある時は「○○部(支部の中の組織)の活動に興味があるので入部させていただけませんか?」とお願いしてみたりした。ありがたいことに、年配の診断士の先生には面倒見のいい方が多かったため、私がそのようなことを尋ねると、「そういうことに興味があるなら、○○先生を紹介してあげるよ」と言ってくれた。こうして、飲み会に参加するたびに、1人、また1人と、重要な先生との人脈がつながっていった。その時の人脈が現在の仕事の重要な基盤となっている。

 最近では私の人見知りも多少は改善されてきたから、診断士の飲み会で初対面の人と名刺交換しても、「お仕事は何をされているのですか?」、「診断士を取ろうと思ったのはなぜですか?」という質問から入って話を広げていき、人脈を作る術が身についたと思う(それでもまだ初歩レベルだと思うが)。

 問題なのは、診断士以外の飲み会、懇親会に参加した場合である。診断士の飲み会の場合は、「診断士」という共通項があるから、会話の突破口も開きやすい。ところが、例えば外部のセミナーに参加した後の参加者同士の懇親会のように、事前に参加者の属性が解らず、単に「同じセミナーに参加した」ということ以外に共通項がないケースでは、未だにどうやって人脈を広げていけばいいのか解らない。いい加減、私も大人にならなければ。
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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京都豊島区を拠点に、東京23区で活動する中小企業診断士(コンサルタント・トレーナー)。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、1,500字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
~終わりなき旅~
所属組織など
◆個人事務所
 「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ

(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長を務めています)

企業内診断士フォーラム(KSF)企業内診断士フォーラム
(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)
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