こぼれ落ちたピース

谷藤友彦(中小企業診断士・コンサルタント)のブログ別館。1,500字程度の読書記録の集まり。

北朝鮮

牧野愛博『金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日』―アメリカも北朝鮮も本気で戦争をする気はないと思う


金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日 (講談社+α新書)金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日 (講談社+α新書)
牧野 愛博

講談社 2017-02-21

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 「金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日」というタイトルから、北朝鮮を痛烈に批判しているのかと思いきや、本書の最後は次のような文章で締めくくられている。
 かつて、幼いころの正恩が訪れたこともある日本だが、北朝鮮に関する人的情報(ヒューマン・インテリジェンス)に限っては、米韓両国に追いつけるだけの実力はまだない。正恩が倒れる日までに、その差を埋めることはおそらくできないだろう。
 なぜか日本を非難する文章で終わっているのだ。著者の牧野愛博氏が朝日新聞ソウル支局長であるから、これだけ北朝鮮が暴走しても、どこか北朝鮮に遠慮しているのかもしれない。朝鮮や中国を真正面から批判できない左派のメンタリズムを垣間見た気がした(ブログ本館の記事「『小池劇場と不甲斐なき政治家たち/北朝鮮/憲法改正へ 苦渋の決断(『正論』2017年8月号)』―小池都知事は小泉純一郎と民進党の嫡子、他」を参照)。

 北朝鮮がミサイルを連射し、核実験にまで踏み切った。一般に、北朝鮮の意図は「体制の維持」にあると報じられるが、それならば核兵器の開発というハイリスクを冒さなくても、バックの中国やロシアを頼りにしていれば十分である。核兵器の開発に踏み込んだということは、体制の維持以上の目的があると考えるのが自然である。それはつまり、北朝鮮が韓国を併合して、悲願である共産主義革命を成就させることである。北朝鮮が韓国に進撃すれば、アメリカが黙っていない。そこで、北朝鮮はアメリカを牽制するために、アメリカ本土に届くICBMの開発を急いでいる。この点を日本のメディアが報じないのが私には不思議である。

 本書では、アメリカ軍関係者の興味深い話が紹介されていた。
 「現時点での朝鮮半島を巡る軍事バランスは米韓が圧倒的に有利だ。そんな状況で、無理をして危機を招く必要はないし、米国はそんな危険な行動をけっして取らないだろう」
 通常であれば、敵の脅威が小さいうちに叩いておこうと考えるものである。ところが、アメリカはそうは考えない。むしろ、北朝鮮の軍事力が上がるのを待っているかのようである。この点については、ブログ本館の記事「『天皇陛下「譲位の御意向」に思う/憲法改正の秋、他(『正論』2016年9月号)』―日本の安保法制は穴だらけ、他」、「『北朝鮮”炎上”/日本国憲法施行70年/憲法、このままなら、どうなる?(『正論』2017年6月号)』―日本はアメリカへの過度の依存を改める時期に来ている」で書いた。

 北朝鮮の軍事力が不透明で中途半端な段階で手を出してしまうと、アメリカは北朝鮮の軍事力の分析が不十分なままに戦争に突入することになる。北朝鮮は、(半ばやけっぱちで)アメリカの同盟国である日本や韓国を攻撃するかもしれない。それよりも、アメリカが一番恐れているのは、北朝鮮に100万人いると言われる陸上軍とのゲリラ戦にずるずると巻き込まれることである。インテリジェンスを駆使して敵の作戦を事前に見抜くことに長けているアメリカは、逆に言うとインテリジェンスが通用しないゲリラ戦を苦手としている。このことは、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争の事例がよく示している。

 では、北朝鮮の軍事力が高度化し、アメリカが衛星やサイバー攻撃を駆使して北朝鮮の軍事力を完全に解明すれば北朝鮮を攻撃できるかというと、実はこれも怪しい。本書によると、アメリカが北朝鮮を攻撃した場合、北朝鮮が報復攻撃に出ないように同時に制圧すべき拠点が2,000ほどあるという。また、核に関連する地下施設が少なくとも5,000以上あり、これらもカバーしなければならない。いくらアメリカ軍が圧倒的な力を持っているとはいえ、これだけの数の拠点や施設を制圧するには最低でも数日はかかる。その間に、北朝鮮は間違いなく韓国や日本を攻撃するだろう。アメリカとしては、とても容認できることではない。

 だから、アメリカは北朝鮮と本気で戦争をしようとは考えていない。そして同時に、北朝鮮も本気でアメリカと戦争をしようとは思っていない。ICBMを数発開発したところで、アメリカと戦争をすれば、たとえゲリラ戦に持ち込んだとしても容易には勝てず、甚大な被害が出ることは重々承知している。

 アメリカは、北朝鮮がICBMを完成させるのを待つしかない。このままいけば、来年初頭までには北朝鮮のICBMが完成すると言われる。この段階でアメリカは、北朝鮮に対話を持ちかける。アメリカは北朝鮮に対して、ICBMの放棄を迫る。当然のことながら、北朝鮮は反対要求として、アメリカの軍事力削減を求める。具体的には在韓米軍の撤退を迫るであろう。

 北朝鮮にとっては、韓国から米軍が立ち去れば、朝鮮統一のハードルがぐっと下がる。韓国はアメリカに見捨てられる。しかし、現在の韓国の文在寅大統領は大の親北派である。また、韓国国内には、386世代(1990年代に30代(3)で、1980年代(8)に大学生で1987年の民主化宣言まで民主化学生運動に参加していた者が多い1960年代(6)生まれの人々)をはじめ親北派が増えている。朴槿恵前大統領を辞職に追いやった「ロウソク運動」にも、親北左派が多く関わっていたと言われる。アメリカとの対話後、北朝鮮はより平和的な方法で、念願の南北統一へと前進する。そして、韓国の少なからぬ人々もそれを歓迎するに違いない。

『論客58人に聞く 初の憲法改正へ、これが焦点だ/北の非道と恫喝は決して許さない/福島第一原発事故から5年(『正論』2016年4月号)』


月刊正論 2016年 04月号 [雑誌]月刊正論 2016年 04月号 [雑誌]
正論編集部

日本工業新聞社 2016-03-01

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 本号の巻頭特集では、識者58人に対し、「何としても改正するか創設すべき条項などを1つだけ挙げるとすれば何か?」、「近く憲法改正をする場合どのような方法で進めるか(緊急事態条項創設だけ先行させる/緊急事態条項創設と同時に、他条項改正も図る/その他の方法で現行憲法体制を改める/今は改正反対、の4択)」を尋ねたアンケート結果が掲載されている。

 改正すべき条項としては9条(9条2項のみを改正するという意見を含む)が圧倒的に多かった。2つ目の質問は緊急事態条項ありきになっているが、緊急事態条項を導入しても、東日本大震災の時の民主党政権が機能不全に陥ったことを忘れてはならないという呉善花氏(拓殖大学教授)の指摘はもっともだと感じた。

 どの部分から憲法改正に着手するかは非常に難しい問題である。日本にとっては初めての経験であるから、言葉は悪いが”華々しく”やりたい。しかし、”華々しい”問題というのは往々にして世論を二分する性質があるから、結局憲法改正が進まないというジレンマがある。9条はまさにそういう条文である。

 私自身は、国民の意思を行政に反映させるため、「総理大臣が任命する国務大臣には、国会の同意を必要とする」という条文を創設するのがよいと考えている(ブログ本館の記事「舛添要一『憲法改正のオモテとウラ』―森元首相は「偉大なる真空」、他」を参照)。だが、こういう”地味な”案は国民受けしないだろう。

 9条に関連して、自衛権について個人的な頭の整理をしておく。周知の通り、自衛権は19世紀以来国際慣習法によって認められてきた国家の国際法上の権利であり、国連憲章第51条には「武力攻撃が発生した場合」に国連加盟国が「個別的又は集団的自衛の固有の権利」を有することが明文化された。相手国が武力で攻撃してきた場合に武力で応戦するのが自衛権である。ここで問題になるのが、先制攻撃と武力復仇(報復)の2つである。

 先制攻撃(先制的自衛権)とは、他国からの武力攻撃が発生していない段階で、既に自国に差し迫った危険が存在するとして、危険を予防するために自衛措置を行うことができるとされる国家の権利である。先制攻撃をめぐっては、国際法上認められるという立場と、違法であるという立場の両方が存在する。

 肯定派は、国連憲章第51条中の「固有の権利」という文言をより重視する。国連憲章制定以前から国際慣習法上認められてきた国家の「固有の権利」に基づく自衛権行使は、「武力攻撃が発生した場合」に限られたものではなかったとし、憲章第51条の「武力攻撃が発生した場合”には”」という文言も、「武力攻撃が発生した場合”に限って”」自衛権行使を認める趣旨ではないとする。

 否定派は、憲章第51条中の「武力攻撃が発生した場合」という文言をより重視し、「武力攻撃が発生」していない場合の自衛権行使否定する。こうした見解によると、確かに19世紀以来の国際慣習法においては、「武力攻撃が発生した場合」に限らず国家の重大な利益に対する侵害に対して自衛権行使は容認されてきたが、憲章第51条の「武力攻撃が発生した場合」という文言はそれまで国際慣習法上認められてきた自衛権行使を一部制限したものと解釈する。

 武力復仇(報復)とは、相手国の武力攻撃が止んだ後に、復讐・制裁の意図を持って武力攻撃することである。武力復仇に関しては、否定派の方が多いように思われる。京都大学名誉教授、公立鳥取環境大学名誉学長(初代学長)である加藤尚武氏は、HPで武力復仇は違法であると論じている

 本来、ある国が武力行使をした場合には、国際連合が国際の平和と安全に対する脅威を認定し、強制行動を決定することとなっている。自衛権は、その決定までの間に認められる権利である。戦後の国際社会は、このような形で武力行使の統制を図ってきた。ところが、冷戦時代に安全保障理事会が機能不全に陥り、国連の役割は限界を露呈した。武力復仇を認める立場は、それが自衛権と国連の行動の間に横たわる長い空白を埋めるものだと主張する。

 一部の論者は、「対抗措置」としての武力復仇の可能性を模索するようになった。具体的には、「国際違法行為の国家責任条文草案」において「対抗措置」に、武力復仇が含まれるかが議論されてきた。対抗措置とは、他国が何らかの国際違法行為を行った場合、その被害国は一定の条件の下、国際違法行為により反応することができるというものである。

 ISの暴挙に対してどう対処すべきか、私は何ら有効なアイデアを持っていない。和を重んじる日本人は、ISを国家として承認すれば、国家同士が停戦に向けた交渉を開始し、最終的には和平に至ることを期待するかもしれない。ISを国家として扱い、国際法の世界にISを組み込もうというわけである。ところが、ISを敵視するアメリカ、ロシア、フランスなどの大国は、そのようには考えない。彼らにとって敵は敵であり、徹底的に排除しなければならない。だから、空爆もするし、容疑者も殺害する。この点が、小国日本と大国の思考回路の違いであろう。

池上彰『そうだったのか!朝鮮半島』


そうだったのか! 朝鮮半島 (そうだったのか! シリーズ)そうだったのか! 朝鮮半島 (そうだったのか! シリーズ)
池上 彰

ホーム社 2014-11-26

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 本書を読むと、韓国はアメリカと中国によって引き裂かれた国だと思えてくる。韓国が1997年に通貨危機に見舞われた時には、IMF主導で様々な改革を強いられた。IMFとの合意内容には、財政再建、金融機関のリストラと構造改革、通商障壁の自由化、外国資本投資の自由化、企業ガバナンスの透明化、労働市場改革などが盛り込まれた。要するに、アメリカ的な経済・金融システムへと変更するように要求されたわけである。

 その後、財閥系の大企業が次々とグローバル化に成功した。彼らの組織はトップダウン型であり、潤沢な資金をバックに全世界でマーケティングを行う。こうしたやり方は、アメリカのグローバル大企業に通じるところがある。一方で、アメリカ社会のような激しい格差も見られる。大企業と中小企業の正社員の賃金格差は拡大する一方であり、さらに正社員と非正規社員の格差は絶望的に大きい。韓国では大企業の採用枠が慢性的に不足していることから、大学を卒業しても中小企業の非正規社員にしかなれない人が非常に多い。

 経済的にはアメリカ化している韓国だが、政治的には左傾傾向が年々大きくなっているように見える。盧武鉉大統領(在2003~2008年)の支持を支えたのは、「386世代」と呼ばれる人々であった。386世代とは、1990年代に30代(3)で、1980年代(8)に大学生で学生運動に参加した、1960年代(6)生まれの人々を指している。平たく言えば、共産主義の影響を強く受けている人たちだ。

 韓国は朝鮮戦争で共産主義国の北朝鮮と戦ったはずである。しかし、北朝鮮の脱北者が韓国に流れてくると、彼らが韓国民に共産主義を吹き込むようになった。加えて、中国も韓国の共産主義化に貢献しているに違いない。こうして、韓国は経済的には右、政治的には左という、不思議な国になってしまった。

 現在の韓国は「中国傾斜論」をとっていると言われる。政治的に中国寄りだった韓国が、経済的にも中国寄りになりつつある。アメリカが主導するTPPには参加せず、中国が主導するAIIBには参加する。そんな韓国をオバマ大統領も冷たく突き放す。10月の米韓首脳会談では、声明に「TPPに対する韓国の関心を歓迎する」という文言が盛り込まれた。「TPPに対する韓国の『参加』を歓迎する」ではなく、「『関心』を歓迎する」という微妙な言い回しで、韓国を敬遠したのである。

 日米にとって最悪のシナリオは、韓国がアメリカとの同盟を破棄し、中国が(北朝鮮ではなく)韓国を使って朝鮮半島を統一することである。日本は共産主義国と正面から対峙しなければならない。しかも、統一された朝鮮国は、旧韓国の豊富な資金を使って、旧北朝鮮の核開発を大幅に前進させるだろう。そうすれば、日本にとっては非常に大きな脅威となる。

 この最悪のシナリオをもっと最悪なものにするのが、沖縄の独立である。沖縄は現在、真剣に日本からの独立を検討している。憲法は都道府県の独立を認めていないが、どうすれば独立が可能となるか、スコットランドの事例などを熱心に研究しているという。沖縄が独立すれば、かつて琉球王国がそうしたように、中国に接近するのは間違いない。沖縄の独立運動を陰で支えているのは、中国共産党であると言われる。沖縄が独立し中国と手を組めば、中国が主張する九段線がさらに日本側へ伸びる。この脅威に日本はどう対抗すればよいだろうか?

富坂聰『中国は腹の底で日本をどう思っているのか―メディアが語らない東アジア情勢の新潮流』


中国は腹の底で日本をどう思っているのか メディアが語らない東アジア情勢の新潮流 (PHP新書)中国は腹の底で日本をどう思っているのか メディアが語らない東アジア情勢の新潮流 (PHP新書)
富坂 聰

PHP研究所 2015-06-15

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 『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』というタイトルがついているが、中国に限らず、韓国、北朝鮮、ロシア、ASEAN諸国などをめぐる国際情勢に関する1冊であった。ブログ本館の記事「齋藤純一『公共性』―二項「対立」のアメリカ、二項「混合」の日本」などで書いたが、アメリカは共和党対民主党という構図に代表されるように、物事を二項対立で把握する。これに対して日本は、かつての自民党が派閥によって右から左まで広く政治家を内包していたように、対立項を自分の中に取り込んで共存させる傾向がある。

 ところが、最近の日本はアメリカ的な発想に影響されているせいか、二項対立的な物の見方が増えてきた。マスメディアに見られる善悪二分論はその典型である。小泉純一郎元首相は、「民営化か否か」と迫って自民党を二分した。また、一時的ではあったが、自民党対民主党という2大政党制が成立した。国際情勢においては、日本の味方となる国と敵となる国を明確に峻別する傾向がある。関係国を敵―味方に分けるのは、同盟関係を軸とした考え方である。

 日本にとっては、アメリカが親友で、中国や北朝鮮は敵である。最近は韓国も敵扱いかもしれない。だが、当の中国や北朝鮮・韓国は、どうやら単純な敵―味方二分論には染まっていないようだ。例えば、中国はベトナムやフィリピンと南シナ海で領有権争いをしている。しかし、中国はその両国からAIIBへの賛同を引き出している。とりわけベトナムは、自国のインフラ整備に中国が貢献してくれることを期待しており、AIIBに好意的である。

 韓国と北朝鮮は、北緯38度線で軍事的緊張を高めているものの、様々な場面で関係深化を図っている。北朝鮮は韓国で開催された仁川アジア大会にNo2を送り込んだ。一方の韓国は、北朝鮮の共産主義をよく研究しており、国内には親北朝鮮派が増えているという。中国は北朝鮮・韓国とバランスよくつき合っている。中国がイデオロギー的に対立する韓国と国交を樹立したことは、北朝鮮にとって屈辱であったはずだ。しかし、中国は北朝鮮の核実験を非難することはあっても、北朝鮮と手を切ることは考えていない。

 (ちょっと余談。本書では、朝鮮半島が2国に分裂したままであることが中国の国益にかなうと書かれていた。ただ私は、中国が韓国を利用して朝鮮半島を統一するというシナリオがあるのではないかと考えている。

 北朝鮮には朝鮮半島を統一するだけの力がない。一方で、韓国は北朝鮮研究によって左傾化が進んでいる。そこで、中国が韓国を使って朝鮮半島を共産主義化するわけである。韓国の経済力をつぎ込んで北朝鮮の核を強化すれば、日本にとって大きな脅威となる。そんなことをすればアメリカが黙ってはいないはずなのだが、朝鮮半島に巨大な核が生まれ、さらにバックにも核を持つ中国がいては、アメリカもそう簡単に手出しができない)

 国際政治の舞台では、相手国を単純に敵―味方に分けるのではなく、敵の懐に上手く飛び込むことが重要である。言い換えれば、「右手のこぶしを振り上げながら、左手で握手をする」のが国際政治のルールなのである。ある人とは両手でがっちり握手をし、別の人に対しては両手を振り上げるような外交をしているのは、日本(とアメリカ)ぐらいかもしれない。

 最近、中国と北朝鮮が日本にすり寄ってきたと言われる。中国も北朝鮮も国内経済が失速しており、情勢打開のために日本に支援を求めてきたというわけだ。敵―味方二分論に染まっている日本は、「中国や北朝鮮は、やはり日本がいなければ立ち行かない」などと、どこかこの2か国を見下している。しかし、彼らが日本に接近しているのは、右手のこぶしを振り上げながら、左手で握手を求めているだけのことであって、決して日本に頭を下げようと考えているわけではない。

植木千可子『平和のための戦争論―集団的自衛権は何をもたらすのか?』


平和のための戦争論: 集団的自衛権は何をもたらすのか? (ちくま新書)平和のための戦争論: 集団的自衛権は何をもたらすのか? (ちくま新書)
植木 千可子

筑摩書房 2015-02-04

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 抑止の成功のためには、能力と意図を持っているだけでは不十分で、それを相手に認識させなくてはならない。そのためには、正しくシグナルを送る方法が確保されていることと、シグナルの信憑性が高いことが重要だと考えられている。

 では、正しくシグナルを送り、相手が正しく受ける要素は何か。まずは、信頼関係の存在だ。対立していても、一定の信頼関係がないと抑止は成り立たない。(中略)また、コミュニケーションが取れる方法が確保されていること。これも重要な要素だ。
 思うに、相手国とコミュニケーションが十分に取れて、かつその情報が信頼に足ると思えるほどの関係が構築できていれば、わざわざ武力で相手国を牽制しようとしないのではないだろうか?相手国の情報が信頼できず、相手国が何を考えているのか解らないから、武器を持って抑止力を働かせようとするわけだ。

 北朝鮮はどの程度の性能の核兵器を持っているのか?また、核兵器はどこに配備されているのか?などといった情報は、北朝鮮は絶対に開示しない。だからこそ、日本は脅威を感じる。また、中国の軍事費は毎年二桁の伸びを示しており、いずれはアメリカの軍事費を抜くと言われている。だが、中国の軍事能力に関する情報は錯綜している。そもそも、中国政府が公表する軍事費のデータが信頼できるかどうかさえ怪しい。そのため、日本は下手に中国を刺激できない。

 ここでいきなり中日ドラゴンズの話を持ち出すことを許していただきたいのだが、落合博満氏が監督をしていた時代の中日は非常に強かった(8年間で優勝4回、日本一1回、Bクラスなし)。落合氏は徹底した秘密主義を貫き、自軍の情報が外部に漏れることを嫌った。ケガで戦線離脱した選手の情報も、普通はマスコミを通じて発表するものだが、落合氏はケガの原因を隠した。

 落合氏の退任後、中日の選手が語ったところによると、落合氏が目指していた野球は至って「普通の野球」であった。すなわち、攻撃においては、ランナーが出ればすぐに送りバントをして得点圏に進め、タイムリーを期待する。一方の投手陣は、攻撃陣がものにした数少ない得点を守り抜く。作戦や采配は(開幕投手=川崎憲次郎のような一部の例外を除いて、)非常に平凡であった。ところが、その秘密主義ゆえに、相手チームは「何をしてくるか解らない」と脅威を感じていた。

 フィンランドの危機管理コンサルタントであるピーター・ サンドマンはこう語っている。「危険は大きいが恐れは小さい時、人の反応は控え目である。そして、危険は小さいが恐れは大きい時、人はオーバーな反応をする」 危険の大きさを正しく伝えるのではなく、「危険かもしれない」と恐れを感じさせることが、抑止力になる。だから、田母神俊雄氏が批判したように、集団的自衛権を行使する事例を政府が公表してしまったら、自ら抑止力を放棄することに等しいのである。
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プロフィール
谷藤友彦(やとうともひこ)

谷藤友彦

 東京23区、神奈川県川崎市・横浜市を中心に活動する中小企業診断士・コンサルタント。

 専門領域は、(1)経営ビジョン・事業戦略の策定、(2)ビジョンや戦略とリンクした人材育成計画の立案・人事評価制度の構築、(3)人材育成計画に沿った教育研修プログラムの企画・開発。

 モットーは「日々改善、日々成長」、「実事求是」、「組織のためではなく知識のために働く」、「奇策は定石より先に立たず」、「一貫性(Consistency)」、「(無知の知ならぬ)無知の恥」

 好きなもの=Mr.Childrenサザンオールスターズoasis阪神タイガース水曜どうでしょう、数学(30歳を過ぎてから数学ⅢCをやり出した)。

 現ブログ「free to write WHATEVER I like」からはこぼれ落ちてしまった、1,000字程度の短めの書評を中心としたブログ(※なお、本ブログはHUNTER×HUNTERとは一切関係ありません)。

◆旧ブログ◆
マネジメント・フロンティア
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 「シャイン経営研究所」◆ シャイン経営研究所ロゴ

(一社)東京都中小診断士協会一般社団法人東京都中小企業診断士協会
(城北支部執行委員、青年部長、および国際部員を務めています)

NPOビジネスサポート特定非営利活動法人NPOビジネスサポート
(監事を務めています)

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(独立診断士の立場から、企業内診断士の活動を応援しています)

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(一緒にお仕事をさせていただいている「コンサルビューション株式会社」は、世界最大の信用調査会社Experianの正規代理店です)

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(以下の資格の講師をしています。
 ―ITパスポート
 ―情報セキュリティマネジメント
 ―経営学検定(初級・中級)
 ―中小企業診断士(企業経営理論、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策)
 谷藤友彦と株式会社サイトビジット代表取締役・鬼頭政人氏の対談動画(1)(2)(3)
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