新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ! ―ビデオリサーチが提案するマーケティング新論II新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ! ―ビデオリサーチが提案するマーケティング新論II
株式会社ビデオリサーチひと研究所

ダイヤモンド社 2017-02-10

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 本書では、調査を基にシニアを6つのグループに分類している。その中に「セカンドライフモラトリアム」という全体の約3割を占める最大派がある。彼らは変化や刺激に親和性を持っていながら積極性に欠ける。その分、消費をはじめ様々な面でポテンシャルが高い。男性は仕事に代わるものを未だ見いだせず、模索している。女性は、育児や子どもの成長などに応じて人付き合いに幅が生まれやすいものの、男性同様、交友関係は広くない。以上のような特徴がある。

 セカンドライフモラトリアムに該当する男性(モラトリアムおじさん)の市場を攻略するためのキーワードとして、本書では以下の6つが挙げられている。

 ①再開/リベンジ
 仕事人間だったモラトリアムおじさんには、心のどこかに自分の好きなこと、やりたいことを抑制してきたやり残し感がある(若い頃は大型バイクに乗っていたが、出産やマイホーム購入を機に止めてしまうケースなど)。そこで、今までは仕事中心の生活でできなかったことを、もう一度できる機会と情報を提示する。

 ②大義名分
 モラトリアムおじさんは「動くことが求められている」、「買う必要がある」といった理由づけがあると行動しやすくなる。自分のためではなく他人のため、社会のためになる、請われたから仕方なく、どうしても断れなくて、などという言い訳があると有効である。特に、妻など身近な人から頼まれたり勧められたりすると、「しょうがないなあ」と言いながら、素直に受け入れる傾向がある。

 ③お墨つき
 モラトリアムおじさんは、世間から「いいもの」、「社会に貢献しているもの」といったお墨つきを与えられると価値を感じる。○○会社のプロジェクト、△△市における地域の貢献といった、ストーリーを説明しやすいものなら安心して参加する。

 ④達成目標
 モラトリアムおじさんは、仕事が人生の充実度を示すバロメーターだったため、リタイア後も数値などによる具体的な目標があると、それをクリアすることに新たな充実感を見出しやすい。例えば、ただ旅行に行くのではなく、事前に権威ある人から学んでから行く、といった仕掛けがあるとよい。

 ⑤無所属不安の解消
 モラトリアムおじさんにとっては、長年の会社人生の影響で、「適度な束縛」が安心感につながる。そこで、スケジュール帳が埋まる要件が生まれ、出勤先や肩書、あるいは名刺を持てる状況に収まると不安解消の効果が高い。

 ⑥新しいコミュニティ
 モラトリアムおじさんも、人とのつながりは重視している。誘ってくれる人、遊んでくれる人など、地域や趣味のつながりを作りたいが、プライドが邪魔をして踏み出せない。しかし、新たなコミュニティに参加できる仕掛けがあると動き出す。誰かがモラトリアムおじさんに参加のきっかけを与え、オーソライズしたり、リスペクトしたりしながら、時に発破をかけていくと、生き生きと活動を再開できる。

 こうして見てみると、ブログ本館の記事「『艱難汝を玉にす(『致知』2017年3月号)』―日本人を動機づけるのは実は「外発的×利他的」な動機ではないか?」で書いたように、モラトリアムおじさんを動機づけるのは「外発的×利他的」な要因ではないかという気がする。上記のうち。、②③⑥がそれに該当する。そして、前述の記事でも書いたように、日本人の大部分は「外発的×利他的」に動機づけられた後、「外発的×利己的」に動機づけられるフェーズに移行する。モラトリアムおじさんで言えば、④⑤がそれにあたる。