図解 これ1冊でぜんぶわかる!  貿易実務図解 これ1冊でぜんぶわかる! 貿易実務
大須賀 祐

あさ出版 2010-09-21

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 輸入取引に関する説明で、商品の品質や機能をチェックするために、事前にサンプルを取り寄せるべきだと述べました。この点を考えると、輸出する側にとっても、サンプルの輸出は重要なポイントであることがわかっていただけるでしょう。先方から引き合いが来て、サンプルの輸出を依頼されたら、後々問題が起きないようにするためにも、進んで送るようにしましょう。
 以前の記事「久田友彦『融資業務超入門』」でも書いたように、私は海外ビジネスのことを何も知らないので、こういう入門書で一から勉強しているところ。本書には、輸出の際は相手にどんどんサンプルを送るとよいと書いてあった。だが、信頼できるはずの日本人相手でもサンプルを模倣されるリスクがあるのに、相手の素性がよく解らない外国人が相手の場合は、ホイホイとサンプルを送ってはいけないと思う。せめて秘密保持契約(NDA)を締結するべきだろう。

 私の前職の企業は教育研修という見えにくいサービスを提供していた。HPから「研修の資料がほしい」と問い合わせが来た時、どういう資料を送るべきか社内でよく揉めていた。マーケティングを担当していた私としては、研修のイメージを持ってもらうために、テキストや演習の一部を切り出して資料に反映した方がよいと思っていた。さらに言えば、切り出したテキストや演習の資料をHPからダウンロードできるようにしたり、その部分を講師が実際に講義している風景を動画で撮影してHPで流したりする構想も持っていた(結局、実現しなかった)。

 しかし、営業担当者の中には、「それをやると相手にパクられる」とひどく警戒する人がいた。そのため、見込み顧客に送る資料には、研修の目的とゴール、期待できる効果、カリキュラムなど、当たり障りのない内容しか載せることができなかった。今振り返ると、相手とNDAを締結した上で研修の一部を公開するなど、もっと違うやり方ができたのではないかという気がする。

 研修サービスは分割可能なので上記のような対応がとれるが、分割不可能な製品・サービスの場合はどうすればよいだろうか?相手とNDAを締結するのは当然として、品質をわざとグレードダウンさせたサンプルを送る、相手が自社と取引を開始してくれることを条件にサンプルを送付するなどした方がよいのだろう。