いよいよ、韓国経済が崩壊するこれだけの理由 (WAC BOOK)いよいよ、韓国経済が崩壊するこれだけの理由 (WAC BOOK)
三橋 貴明

ワック 2013-01-09

Amazonで詳しく見る by G-Tools

 おそらく、日本で最も有名な中小企業診断士は、本書の著者である三橋貴明氏であろう。ただし、彼が有名なのは中小企業診断士としてではなく、経済評論家、もしくは作家としてであるが・・・。
 (韓国の)寡占状態は、1997年のアジア通貨危機とその後のIMFの介入が契機となっています。当時の構造が韓国の運命を決定づけたとも言えます。それまでの韓国には多くの財閥企業が存在し、傘下にある企業が過当競争を繰り広げていました。(中略)しかしIMFは、過当競争によって各企業の利益が圧迫されていることこそが問題だとして「ビッグディール(企業の大規模事業交換)」を強制的に行なったのです。
 韓国を支える輸出企業はことごとく外国人株主が半数を占めているのです。サムスン電子は49パーセント、現代自動車、ポスコなど、韓国経済の中核を担う企業のほとんどは50パーセント近くに達しています。(中略)このような状態に陥ってしまったのは、やはり通貨危機後のIMF管理によって行われた構造改革が原因です。グローバリズムに基づく資本移動の自由化が進められた結果でもあります。

 ウォンと株価が暴落し、バーゲンセールになった状態で、外国人投資家がサムスン電子などの株を買い漁ったために、外国人の資本的支配を受けることになってしまいました。そして、韓国国民の利益に何の関心も持たない外国人が株主として君臨し、配当金の最大化を目指す「株主資本主義」のための最適な経済モデルを作り上げていきました。
 旧ブログの記事「アメリカ金融帝国主義が本当なら経営学は何のためにあるのか?―『「競争力再生」アメリカ経済の正念場(DHBR2012年6月号)』」で述べたような、アメリカの金融帝国主義の仕組みに韓国もまんまと組み込まれてしまったというわけだ。IMF(≒アメリカ)に韓国を救おうという気持ちはさらさらなくて、アメリカにとって有利になるように改革を進めたというのが実情であろう。アメリカは韓国企業をいいように利用し、配当金やキャピタルゲインを搾り取れるだけ搾り取った後で、韓国企業をポイ捨てするかもしれない。

 一方で、本書にはこんなことも書かれていた。
 (韓国の教育レベルは、)全体的なレベルでは、お世辞にも優秀とは言えません。その元凶となっているのは「平準化教育」です。過熱する受験戦争を和らげる、という目的で高校の入試をなくし、志望者を抽選で各校に割り当てるようにしたものです。学校間の学力差をなくす目的ですが、その本質は、北朝鮮を礼賛する左翼政権による「愚民化政策」です。(中略)漢字を廃止してハングルのみにしたのも「愚民化」であり、一方で捏造した愛国の歴史を頭に詰め込むだけの教育です。
 共産主義は、労働者が資本家を打倒して平等な社会を実現する革命運動である。その革命思想に沿って、共産主義の下での歴史教育は、(1)自国民にとっての敵を想定し、(2)自国民はその敵によって虐げられていること、そして(3)実際には、自国民はその敵よりも優れていることを教える。韓国は(1)の結果として日本を敵視しているわけだが、(2)が行き過ぎると被害者意識が暴走して、実際にはなかった被害を「あった」と言って歴史を捏造するようになるし、(3)が行き過ぎると「劣等な日本人が優秀な韓国文化をパクった」などと主張するようになる。

 そういう教育をしていれば、やがては行き詰まることは目に見えている。共産主義は、常に何らかの敵を想定しなければならない。その敵がいなくなってしまったら、自らの存在意義がなくなってしまうからだ。よって、共産主義者は永遠に誰かに虐げられているのであり、それゆえに永遠に成熟することがない。加えて、韓国から漢字が奪われていることが韓国の衰退に拍車をかけるであろう。歴史を振り返ってみると、文字を奪われた民族は例外なく滅んでいるのである。

 韓国は、一方ではアメリカの資本主義の草刈り場になっており、もう一方では北朝鮮の共産主義の草刈り場になっている哀れな国である。1976年に南北ベトナムが、そして1989年に東西ドイツが統一され、冷戦が終結した現在では、もともと同じ国であった場所が資本主義と共産主義によって分断されているのは朝鮮半島だけである。北朝鮮は北朝鮮で、別の理由から崩壊が近づいていると言われる。南北朝鮮の統一はもはや遠い夢かもしれない。となると、このままの緊張状態で、韓国の政治や経済はどのように舵取りをしていくのだろうか?